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レビュー

本能寺の変は予見されていた!? 孤独なリーダーの葛藤を信長本人の視点で描く歴史小説『信長の原理』

【朗読つきカドブンレビュー】

カドブンを訪れて下さっている皆さん、こんにちは。
秋も深くなってきましたが皆様いかがお過ごしでしょうか?
戦国という激動の時代を舞台にした作品は数多くありますが、今回はその中でもひと味違う作品、垣根涼介著『信長の原理』をご紹介します!

さてさて。
尾張の国で生まれた信長が、天下統一を目前に本能寺の変で家臣の明智光秀に殺害される、という歴史を知らない方はいないでしょう。
その織田信長のイメージといえば――
冷酷で神をも恐れぬ独裁者。部下を容赦なく打ちつける無情な暴君。
世間に浸透しているイメージはそういったところかもしれません。
強烈なキャラクター故に、織田信長はフィクションの世界ではトリックスター的な存在として描かれることが多いように思えます。
(主人公はたいてい「殿がまた無茶なことを言い出した」と、信長に翻弄されることが多いですね)
ところが本書『信長の原理』はなんと、信長が主役なのです。

常識に囚われず物事の核心を捉えることの出来た吉法師(信長の幼名)は、周囲の大人にまるで理解されず、そのことで苛立ち、大きな怒りを抱えていた——
なんともワクワクする織田信長の新解釈じゃありませんか。
日本統一に向け勢力を拡大し、本能寺の変が刻一刻と近づいてくる中、時に部下の無能に激怒し、時に葛藤する様が、信長の目線で語られるのはなんとも新鮮。
ここまで信長が自らの心中を吐露したことがあったでしょうか?
そして信長の視点からだけでなく、羽柴秀吉、明智光秀、柴田勝家らが主君を嘆き、時に戦々恐々とする様もなんとも贅沢です。
そうやって描き出される織田信長は、今まで数多くの作品に登場したどの信長よりも人間らしいのではないでしょうか。

俳優的には「なるほど、信長を演じる時にはこういうアプローチもあるのか」なんて思いながらあっという間に読み終わってしまいました。
歴史物の小説は大抵読んでいる――というわけではないので、不勉強なら申し訳ないんですが、信長のイメージが変わること間違いなしの一冊です。
秋の夜長に是非手に取ってみて下さい!
あ、あと、姉妹作として『光秀の定理』もあるので、そちらも気になるところです。

このレビューでは触れていませんが、カドブンの著者へのインタビューにある、本書タイトルに関わる「パレートの法則」の話や、信長と家臣達をグローバル企業に重ねた話は面白かったです。
こちらも気になる方は是非是非!


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