初めて歴史小説に挑戦した『光秀の定理』が十万部突破のベストセラーとなり、注目を集める垣根涼介さん。
新作『信長の原理』は、卓抜な着想で織田信長の人生を描ききった本格歴史巨編です。優れた人材を積極的に登用し、天下統一に手を伸ばしかけた信長。しかしその理想とは裏腹に、なぜか必ず脱落者や裏切り者が出てしまう。信長を悩ませる、見えない世界の原理とは何なのか? 渾身の新作についてインタビューしました。
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信長の内面を深く掘り下げて

──織田信長の人生を描いた大作『信長の原理』が刊行されます。ベストセラーとなった『光秀の定理』とほぼ同時代を描いていますが、続編という扱いでしょうか?

垣根:確かに『光秀の定理』にも信長は出てきますし、内容的にリンクする部分もありますが、この二作は物語の組み方がまったく違います。だから「姉妹編」くらいの関係かな。『光秀の定理』では、新九郎しんくろう愚息ぐそくという架空のキャラクターに比重を置いて、二人の視点から明智光秀という人物を浮き彫りにしました。エンタメ的な見せ場も随所に作っていますし、ややフィクション寄りの歴史小説になっていました。でも今回は信長の人生を史実に基づいて、時系列に沿って描いたもの。幼少期から晩年までを、僕なりに最短距離でたどったつもりです。それでも人一人の人生を描くためには、約六〇〇ページになりました(笑)。

──信長といえば、これまで多くの小説・映画の題材になってきた人物です。新たな信長像を生み出すにあたって、苦労やプレッシャーはありませんでしたか?

垣根:今回の信長に限らず、プレッシャーはいつでも感じています。今回の作品は、小説でよくある〝周囲の誰かから見た信長像〟というからめ手ではなく、信長個人の視点から、その内面を深く掘り下げていくという手法で書きたいと思っていました。こういう正攻法で攻めた作品は、その心理描写を彫り込めば彫り込むほど、従来の信長ものとはかなり違ったものになるのではと考えました。もっとも、この異端児の内面を詳細に描くことは、かなりの難題でした。

──尾張織田家の嫡男として生まれた信長は、荒っぽい気性のせいで周囲に恐れられ、実母にも疎んじられています。あまり幸福な少年時代ではなかったようですね。

垣根:「うつけ」だったと言われる信長ですが、さまざまな資料に当たってみると、決して知能が劣っているわけではないようです。ただ感情を抑えるのが苦手で、今日でいうLD(学習障害)でもあった気がします。そして何よりも、物事の根本原理が気になってしょうがない性格だった。人や社会を動かしているものは何か、神仏はいるのか、といった究極的な疑問につい目がいってしまうタイプですね。

書籍

『信長の原理』

垣根 涼介

定価 1944円(本体1800円+税)

発売日:2018年08月31日

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    書籍

    「本の旅人2018年9月号」

    角川書店編集部

    定価 100円(本体93円+税)

    発売日:2018年08月27日

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      書籍

      『光秀の定理』

      垣根 涼介

      定価 821円(本体760円+税)

      発売日:2016年12月22日

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