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特集

【化け通 出張版】『Ghostwire: Tokyo』の“印を結ぶアクション”の元ネタを考えてみる

文=藤川Q(ファミ通)

ゲーム雑誌『ファミ通』と『怪と幽』のコラボコーナー「化け通」。今回は近年稀にみるお化けゲーム『Ghostwire: Tokyo(ゴーストワイヤー:トウキョウ)』に注目。ゲーム史上最も丁寧に作られたかもしれない“密教的”な表現に迫ります。

『Ghostwire: Tokyo』の“印を結ぶアクション”の元ネタを考えてみる

 2022年3月に発売された『Ghostwire: Tokyo』は、奇妙な霧に閉ざされて“マレビト”と呼ばれる異形の存在が跋扈するようになってしまった渋谷を舞台に展開する冒険活劇作品。また、かの名作『バイオハザード』の生みの親として知られるゲームクリエイター三上真司氏率いるTango Gameworksの最新作でもあるなど、お化け好きのみならず、ゲームファン的にも外せない珠玉の逸品です。
 そんな本作の魅力のひとつが、妖怪や都市伝説の怪物、幽霊や怨霊との霊力バトルとでもいうべきアクション。FPS(ファーストパーソン・シューティング)の一人称視点で描かれるバトルでは、手印を結印して怪しき異形を祓います。



 手印とは密教で仏神を手の動きや形で示す、“三密”のひとつである“身密”にあたるもの。古くはバラモン教の舞踏の所作をルーツとし、仏教を通じて密教に取り入れられたことで仏神との合一を図るための儀礼としての独自発展を遂げました。
 手印をモチーフとした本作のアクションを実際に遊んでみると……これが密教における印の結び方や種類と符合する部分が散見されて、じつに興味深いものでした。本稿では、主要な手印アクションを掻い摘みながら、密教などで伝わる実際の印相と照応してみたいと思います。あくまでも個人的な「見立て」ですので、どうぞその点は悪しからず。



風と九字

 風の攻撃をする際には、右手のひと差し指と中指を立てた印を結ぶアクションが行われます。これは、有名な“剣印(刀印)”と呼ばれる手印。忍者の忍術のポーズなどでもおなじみですが、密教では不動明王の手にした剣を示す印であり、煩悩や数多の魔を討つ護身・調伏の修法です。



 手数も多く、おそらくゲーム中でもプレイヤーが多用する攻撃になるであろう風の攻撃は、タメ攻撃で4発の風のショットを連続で放てます。その際のアクションはどことなく上下に剣印(刀印)を切り払うような所作を見せるのですが、これもまた魔障一切を降伏退散させる “九字”の印によく似たもの。
 九字は“臨兵闘者皆陣列在前”の真言とともに剣印(刀印)で中空に縦横9回の線を描くことで禍を退けるものですが、不動明王を多く本尊とする修験道には、バリエーションとして“早九字”という短縮版が存在しています。その際は九字を矢継ぎ早に繰り出すことで、悪霊の動きを封じるというのですが、ゲーム中でもタメ攻撃を連続で繰り出してマレビトをけん制する戦術と、どこか通じるものがあるように思えてきます。

水と弁天

 一方、水の攻撃の際には右掌を上に向けた状態で、水球のようなものを顕現せしめ、広範囲への攻撃が行えます。



 右掌を上にした印は、菩提樹の下で釈迦が結んでいたとされる5つの“定印”のひとつ“与願印”が近いものかもしれません。この印を結ぶ際には、掌から一切の願いが叶うとされる“如意宝珠”が雨の如く降り注ぐ様子を懸想する必要があるとされており、作中の水の広範囲攻撃ともイメージが重なるかのようです。



 水のタメ攻撃は、上下に合わせた掌の中央より、さらなる広範囲へ水の攻撃が行えます。このときの下の手は風天印のようにも見えるなど、印相はやや見立てが難しいものではあります。両手を重ねる印相には “菩提場経根本印”や“声聞梵篋印”があるのですが、その中でも水というキーワードからは、近しい印相として“弁財天費拏印(べんざいてんひないん)”があげられるかもしれません。この印は、上になる右手がひと差し指と親指を付けた形になっており、水平に琵琶を弾く様子を示すのですが、弁財天は河の女神でもあるサラスバティーとも同一視される女神です。

火と日輪

 3つ目の火の攻撃は、とても強い威力を誇る代わりに使用回数は少ない切り札。両手で輪を作ってかざした後、貫通力のある炎を放ちます。



 両手で輪を作るかのような印相は、“日曜星印”のようです。月~日までの七曜に日食・月食を起こす隠星や彗星を加えた九曜思想を由来とする神々を示す印のうち、日輪を表すのが日曜星印。タメ攻撃で生じる巨大な炎弾による爆発は、まさに太陽の如し。



 メインとなる上記三種のほかに、穢れの浄化でも手印アクションが描かれるなど、作中で気になる手印表現は数知れず。今回はここで擱筆します。
 本作はこうした手印によるマレビト祓いのみならず、妖怪や百鬼夜行が登場したり、幽霊をヒトカタに吸い取ることまでできてしまう稀有な作品です。きっとヒトカタが表紙を飾っている『怪と幽』10号の呪術特集を読んだ方なら、Ghostとwired(接続)されるお化け尽くしの渋谷散策をお愉しみいただけるはずです。



『Ghostwire: Tokyo』公式サイト
https://bethesda.net/ja/game/ghostwire-tokyo

© 2022 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. Ghostwire, Tango, Tango Gameworks, Bethesda, Bethesda Softworks, ZeniMax and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved.



「怪と幽」vol.010
https://www.kadokawa.co.jp/product/322102000143/


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