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特集

『神祇庁の陰陽師・凪の事件帖 魔が差したら鬼になります』刊行記念 桜川ヒロさんインタビュー

角川文庫初登場の桜川ヒロさん。陰陽師×バトル×謎解き×キャラクターもの×ファンタジーと盛りだくさんの魅力あふれる本作品。その創作の裏側を教えていただきました。 

聞き手:角川文庫編集部



『神祇庁の陰陽師・凪の事件帖 魔が差したら鬼になります』刊行記念 桜川ヒロさんインタビュー


――新刊『神祇庁の陰陽師・凪の事件帖 魔が差したら鬼になります』についてお伺いいたします。今回、角川文庫で初めてのご登場となりますが、どのような依頼があって企画が始まったのでしょうか。

桜川ヒロさん(以下、桜川):最初のコンタクトはメールで、今、担当編集をしてくださっているKさんから連絡をいただきました。角川文庫はいつか書きたいと思っていたレーベルだったこともあり、とても嬉しかったのを覚えています。
「小学館文庫キャラブン!」から出ている『暗号解読士 九條キリヤの事件簿』を読んでくださったようで、ミステリもいいよね! ファンタジーもいいよね! という感じで、話が進んでいったと思います。


――もともと陰陽師や酒吞童子といった妖怪や民俗学的なモチーフに関心があったのでしょうか? そのジャンルとの出会いやお好きな理由を教えてください。

桜川:実は私、昔から読書家というわけではなかったんです。今も、月に10~15冊程度しか読んでいませんし、一番読んでいた大学生の頃も月に20冊いくかいかないかぐらいでした。子供が生まれたばかりの頃は忙しくて、月に1冊も読まない時もありましたしね。それこそ、幼い頃の私はずっと漫画ばかり読んでいて、小説なんて「文字ばっかりで読みにくい、大人が読む難しいもの」と認識していました。
そんな私の常識を変えてくれたのが「少年陰陽師」シリーズでした。
手に取ったきっかけは、友人にすすめられたから、とか、そんな感じだったと思います。その頃には、ほどほどに小説も読むようになっていたのですが、やっぱり私の中のメインコンテンツは漫画で固定されていて、小説はサブコンテンツという感じでした。それを「少年陰陽師」シリーズはひっくり返してくれました。1巻を読み終える時には号泣していて、お財布を持って急いで近くの本屋さんに続巻を買いに行ったのを今でも覚えています。
なんだか、小説と私の出会いみたいになってしまいましたが、陰陽師と私の出会いといえば、それですね。
そんなこんなで、陰陽師に手を引かれるようにして小説の世界にやってきた私でしたが、実は、妖怪や民俗学的なモチーフにあまり造詣は深くないんです。もちろん作品としては好きでしたし、そういうモチーフのものも書いたことはあるんですが、今回の作品のためにいろいろな資料本をかき集めて勉強したというのが本当のところです。


――今回の作品のテーマである、「魔が差したら鬼になります」という部分は、どのように思いつかれたのでしょうか。魔とは何か、鬼とは何かも教えてください。

桜川:思いついたきっかけは、正直あまり覚えてないんですよね。
私は書きたいネタを思いついた時、スマホのメモ帳に書いておくんですが、今回もその中から選んだような気がします。メモ帳に書いてあったネタというのも「魔が差したら鬼になります」という一文だけだったような気もしますが。あとは、アニメの「呪術廻戦」を観ていた時期でもあって、「主人公が敵の一部を取り込んで、その力を自分のものとする話」を書きたかったんだと思います。それと、ここのところミステリが書きたくて! そういったものが合わさって今回の話が生まれた感じですね。……それと、魔や鬼ですよね? 
この作品での「魔」は超自然的な存在すべてを指す言葉で、そこから人にとって好ましいものを「カミ」、そうでないものを「オニ」と呼びます。ここらへんは宮田登先生が書かれた『民俗学』と、小松和彦先生の書かれた『鬼と日本人』を、参考にして書かせていただきました。
私はまあまあな確率で本の解釈が人と違ったりするんですが、これも解釈が間違っていたらすみません。


――作中に登場する酒吞童子についてお伺いします。酒吞童子を選ばれた理由と酒吞童子について、どのような印象を持たれているのかを教えてください。

桜川:私が物語で大切にしているのは、わかりやすさです。基準としては、「なにも知らない私が理解できて楽しめる物語」ですね。私はあまり賢くないので、私が理解して楽しめる物語なら、きっと読者も楽しむことができるだろうと思っているんです。そういった意味で「酒吞童子」はとてもわかりやすく「強い鬼」でした。ただ、酒吞童子の逸話の中には世間体を恥じて捨てられた子供だった、というものもあり、そういったことを考えると、ただの強いだけの鬼ではないのかもしれないな……とも思っていて。
酒吞童子は強さの中に哀しみが内包されている、とても魅力的なキャラクターだと思っています。


――登場人物のキャラクターがとても魅力的です。特にメインキャラの凪とその仲間たちですが、モデルはありますか。どのように思いつかれましたか。

桜川:モデル……になるのかはわかりませんが、私は「文豪ストレイドッグス」の太宰治と中島敦の関係性がとても好きで、男バディを書くならこの二人みたいなのを書きたいとずっと思っていたんです。なので、凪と嵐士はこの二人を意識して書きましたね。他のキャラクターたちは、書いていくうちに生み出されたというか、私の完全なる手癖ですね。
お気に入りのキャラクターはうつつですね。もし続きが書けることになったら、現まわりの話を書きたいなぁと思っています。


――作品の舞台が広島です。素敵なカフェですね。あのカフェは怪しい……んですが、一体、何を行ってている場所なんでしょう。神祇庁という組織についても教えてください。また広島が舞台である理由を教えてください(ご出身というだけでなく)。

桜川:カフェについては完全に凪の趣味ですね。道楽なので、金儲けとかも考えていませんし。ただ、凪は「爪はじきにされた人間を集めて、居場所を与えている」キャラクターとして作っていて、カフェもその一環なんだろうなぁと他人事のように思っています。
舞台を広島にしたのは、やっぱり自分がその県に住んでいるというのが大きいのですが、「仲良くなったキャラクターたちが、最後にみんなで一緒に花見をする」というシーンをどうしても入れたくて、それなら尾道の千光寺(桜の名所です)でそれをしたら良いんじゃないかという考えになりました。作中では花見に向かうところで終わっているのですが、いつかこの時のことを書きたいなとも思っています。


――小説には愛しい「じんがい」が描かれています。人外についてどのように思われていますか。お好きな作中の人外はいますか。

桜川:人外といえば、主要キャラでまともな人間はほとんどいないわけなんですが、この中で一番好きなキャラクターは羅夢らむですかね。彼女の過去については、本当はもう少し深掘りしたほうが良かったんですが、このへんは反省ですね。
人外についてどう思っているか。改めて問われるとちょっと答えにくいですね。
面白い、とも思いますし、怖い、とも思いますし。
ただ小学生の娘が、最近妖怪に関する本などをよく学校の図書館から借りてくるんです。振り返れば私も娘と同じぐらいの頃、よくそういう本を図書館などで借りて読んでいました。そういったことを考えると、人は10歳前後で必ず妖怪や人外に憧れや畏敬の念を抱くんじゃないかと思うんです。
一番想像力が豊かな年齢の頃に一緒に遊んでくれる友達。
私達にとって、人外というか、妖怪のたぐいはそういう存在なんじゃないかと考えています。


――カバー絵がとても素敵です。カバー絵についてどのように感じているか、教えてください。

桜川:正直な話をすると、表紙絵を見た時、ちょっと叫んでしまいました。
カズアキさんのことは以前から存じていて、いつか表紙を描いていただきたいと思っていたのですが、ここまで素敵な絵を描いてきてくれるとは思わず、本当に感動してしまいました。また、凪と嵐士の二人も私の想像したとおり、いやそれ以上に魅力的に描いてくださいましたし、作品の内容も理解してくれているのが伝わってきて、とてもとても嬉しかったです。
カズアキさんに表紙絵をお任せして本当に良かったです。


――これから読もうと思っている読者に向けて、メッセージをお願いいたします。

桜川:いつも応援してくださり、 ありがとうございます。
怪異が好きな方、ミステリが好きな方、どちらにも届くと良いなと思って書いたものなので、みなさまのお心に合えば幸いです。


――桜川ヒロ名義以外でも執筆活動をされています。最後に両名での今後の出版予定をお教えてください。

桜川:両名義とも、今年はもう数冊ずつ本を出すかなぁとは思うのですが、具体的に出版月が決まっているものは少なく、もうざっくりと「お楽しみに!」って感じですね。
これからも本を書いていけるように、精一杯頑張りたいと思います。


――今後も新作を楽しみにしています。本日はご協力いただき、ありがとうございました!

プロフィール

桜川 ヒロ(さくらかわ・ひろ)
2016年、『妻を殺してもバレない確率』で文学フリマ短編小説賞・大賞を受賞し、『竜騎士殿下の聖女さま』でデビュー(秋桜ヒロロ名義)。17年『公爵さまは女がお嫌い!』で第1回フェアリーキス大賞銀賞受賞、『妻を殺してもバレない確率』でネット小説大賞グランプリ受賞。桜川ヒロ名義に『完璧主義男に迫られています』『怪異収集録 謎解きはあやかしとともに』『妻を殺してもバレない確率』。秋桜ヒロロ名義に「悪役令嬢、セシリア・シルビィは死にたくないので男装することにした。」シリーズなど多数。

作品紹介



神祇庁の陰陽師・凪の事件帖 魔が差したら鬼になります
著者:桜川 ヒロ
発売日:2024年3月22日

陰陽師・凪と鬼になってしまった青年のバディミステリー&ファンタジー!
数ヶ月前から「罪を犯す夢」を見るようになってしまった青年、嵐士あらし。彼はある時、近所の公園で女性を殺す生々しい夢を見た。慌ててその公園に行くと、はたしてそこには既視感のある女性が死んでいた――。事情聴取が始まり、きつい尋問を受ける嵐士。ところがその時、世にも美しい男が取調室に現われ、さっそうと嵐士の身柄を引き取っていったのだが、その男に連れて行かれた場所は――処刑場だった。その男・なぎは「魔」を回収する陰陽師だという。「人はよく『魔が差した』と言うだろう? 僕の仕事はその魔を回収する仕事だ。魔が差した人が『鬼』になってしまう前に」。「罪を犯す夢」と「魔、鬼」の関係は? 不思議な陰陽師・凪が事件の謎を追う。ミステリ&ファンタジー!

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322308001307/
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