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特集

「やると決めた以上は自分のものに」 累計2,000万PVの「生理ちゃん」映画化! 伊藤沙莉インタビュー

撮影:小嶋 淑子  構成:アンチェイン  取材・文:奥村 百恵  ヘアメイク:小口 あづさ スタイリング:部坂 尚吾(江東衣裳) 

 累計2000万PVを記録した小山健の人気WEBマンガ「生理ちゃん」がこの度、実写映画化。“生理”を、ポップに擬人化したキャラクター“生理ちゃん”と、様々な理由で生理に悩む女性達や、おおっぴらに語られない“生理”について、ライトに描いた本作。そして劇中で、人生を半ば諦めているフリーター・山本りほを演じるのは、ハスキーボイスで、どんなに小さな役でもキラリと光る個性で観る者に強い印象を残す女優・伊藤沙莉。今作ではどのように役を捉え、演じたのか。撮影現場での様子を楽しそうに振り返ってもらいました。



誠意を持って“生理あるある”を描く


――ちょっとドキっとするタイトルで驚いたのですが、さらに驚いたのが小山健さんという男性のマンガ家が原作者なんですよね。

伊藤:そうなんです。生理の重さを生理ちゃんの大きさで表現しているのもスゴいなと思いましたし、擬人化した生理ちゃんが“来ちゃった”と言いながら突然現れる瞬間なんかは“男性なのになんでこの感覚を知ってるの?”と驚きました(笑)。あそこまで女性の気持ちに寄り添って描いているということは相当リサーチされたのかなと。聞きづらいことばかりで大変だったと思いますが、誠意を持って“生理あるある”を描いてらっしゃって素晴らしいなと思いました。


――伊藤さんは本作の台本を読まれたとき、どんなことを感じましたか。

伊藤:女性にとって生理は当たり前のように定期的にやってきますが、痛みや辛さは人それぞれで、本当は来てほしくないけど必要なことである、ということを、女性にも男性にも訴えかけられる作品になっているなと。“生理って想像以上にキツいんだよ”とか“いくら辛くても生理を理由にできないんだよ”とか、言葉では説明しづらいことをきっちりと描いていると思います。


――擬人化された生理ちゃんは見ているうちにどんどん愛着が湧いてきますし、女性の側に寄り添って悩みを聞いてくれるという優しい一面もあって癒されました。

伊藤:だんだん可愛く見えてきますよね。その代わり生理の重さによって、めっちゃ強めのパンチをしてきますけど(笑)。


――小山さんのブログに撮影現場に見学へ行かれたエピソードが書かれていたのですが、何かお話しされましたか。

伊藤:小山さんとは、編集部のシーンの撮影現場で初めてお会いしました。後日、関係者試写で再び小山さんにお会いしたときは、観終わった後に「大丈夫でしたか?」と思わず聞いてしまったのですが、「大丈夫でした」と言っていただいたのでホッとしました。


――原作者に感想を聞くのはドキドキしますよね。

伊藤:それはもう……ドキドキです(笑)。ただ、原作をなぞって演じたというよりは、“やると決めた以上は自分のものにしていくしかない”という気持ちで挑みました。


――夢を諦めて清掃のアルバイトをしているりほを演じるにあたって、どんなところを大事にされましたか。

伊藤:思ったことをSNSに吐き出したりしているキャラクターなので、“陰キャ感(=陰のあるキャラクター感)”は意識しました。りほは面と向かって人とコミュニケーションを取るのが苦手なので、誰かと話しているときと、Twitterで活き活きと毒を吐いているところのギャップをしっかり出したいなと思って。というのも、原作のりほは自分に自信がないゲーム好きの女の子ですが、映画版のりほは少しデフォルメされているので、中途半端にやっても原作ファンの方に受け入れてもらえないような気がしたんです。「なんかちょっと原作と違うな」ではなく「映画ではこうきますか!」ぐらい振り切って演じるようにしていました。



――完成した本作をご覧になって印象に残ったシーンはありますか。

伊藤:思春期のひかる(松風理咲)とゆきち(狩野見恭兵)が部屋で2人で受験勉強するシーンはいろんな“あるある”が詰まっていて懐かしい気持ちになりました。誰しもが一度は通ってきた道というか、ピュアな年頃の2人だからこそ感じる悩みや葛藤は見ていて可愛らしかったです。ただ、擬人化されたゆきちの“性欲くん”がすごい勢いで2人のいる部屋に入ってきたときは“怖っ!”と思いましたけどね(笑)。そこも含めて笑えるシーンが多いので、カップルで観ても楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。


――劇中で、陰の存在であるりほが会社の人から「山本さん」と名前で呼んでもらえたシーンは、りほがただの人ではなくて、周りから知ってもらえているという喜びがあって好きでした。

伊藤:いいシーンでしたね。人から名前で呼んでもらえた瞬間って、相手が同性異性に拘わらずシンプルに嬉しいことですよね。私自身、役者というお仕事をさせていただくなかで“伊藤沙莉”という存在を知ってほしいと思いながら続けてきましたし、名前を呼んでもらえるだけで“ここに居ていいんだ”と思えるんです。だからこのシーンは、りほの気持ちに共感できましたし、グッときたシーンでもありますね。


――いろんな視点から“生理”が描かれている映画ですね。

伊藤:“これ観て”って言えば、“生理”について全部教えてくれる映画ですよね。大切なことをライトに伝えてくれる作品なので、まさに女性の味方の映画だなって思います。



伊藤沙莉
Sairi Ito
1994年生まれ、千葉県出身。2003年に子役としてデビュー。その後、映画、ドラマ、舞台などで活躍。18年『榎田貿易堂』『寝ても覚めても』などで、第10回TAMA映画賞最優秀新進女優賞、第40回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。近年の主な映画出演作品は『獣道』(17年/監督:内田英治)、『blank13』(18年/監督:齊藤 工)『パンとバスと2度目のハツコイ』(監督:今泉力哉)、『ペット2(日本語吹替版)』(19年/監督:クリス・ルノー)、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(監督:箱田優子)など。主演を務めた『タイトル、拒絶』(監督:山田佳奈)が第32回東京国際映画祭で上映。
衣装:ワンピース¥35,000(ottod'Ame / STOCKMAN)、シューズ¥61,000(PELLICO / AMAN)、イヤリング¥9,800&イヤーカフ¥9,000(すべてReFaire / UTS PR)、リング¥10,000&ブレスレット¥8,100(すべてGAS BIJOUX / 14 SHOWROOM)


『生理ちゃん』
監督:品田俊介
原作:小山 健『生理ちゃん』(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
出演:二階堂ふみ/伊藤沙莉 松風理咲 須藤蓮/岡田義徳
配給:吉本興業
11月8日ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開
seirichan.official-movie.com
©吉本興業 ©小山健/KADOKAWA


STORY
クリスマス・イブに締切に追われている編集者の米田青子(二階堂)は、急な仕事も舞い込み、久保勇輔(岡田)とのデートをキャンセルすることに。と、そこへ現れるピンクの物体、生理ちゃん。翌日、上司に怒られながらも、生理でぼんやりする青子の横を清掃スタッフの山本りほ(伊藤)が通り過ぎる。フリーターのりほには眩しすぎる編集部の人々を、激しいツッコミとともにSNSに投稿。疲れて実家の自室に戻ったりほのもとにも生理ちゃんがやって来る……。

■関連書籍



『生理用品の社会史』(著・田中 ひかる)
日本女性の生活を大きく変えた画期的な商品「アンネナプキン」。その誕生は、ほんの50年ほど前のことである。女性の社会進出を支えた商品開発の裏には、一人の女性経営者の一筋縄ではいかないドラマがあった――。植物、絹、脱脂綿、ビクトリヤなど、不便で不快だった古い経血処理の方法から、欧米ほどタンポンの使用が普及しなかった理由まで。一大ビジネスへと発展した、女性史にとどまらない日本社会の変遷を明らかにする。
https://www.kadokawa.co.jp/product/321811001051/


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