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特集

【インタビュー】小説?ハウツー本?『完璧な家族の作り方』とは――カドブン編集部、著者&編集担当に突撃取材!

※本インタビューはフィクションです。



 2025年4月。角川ホラー文庫から、1冊の小説が刊行された。
 その名も、『完璧な家族の作り方』――藍上央理氏によるこの作品は、note主催「創作大賞2024」に応募され〈角川ホラー文庫賞〉を受賞、書籍化に至った。本書は発売直後に複数回の重版がかかるなど、ホラー小説界隈で大きな盛り上がりを見せているという。
 平成初期、北九州市内に建てられたある一軒家。今では廃墟化したごく普通の家屋だが、そこではかつて猟奇的な殺人事件が発生、事件後も肝試しに訪れた侵入者の失踪事件が頻発していたという。著者の藍上氏は、事件関係者や近隣住民、肝試しを行ったYouTuberや生還者への取材を行い、小説へとまとめ上げnoteで公開した。
 その後書籍化された本書は大幅な改稿がほどこされており、どちらかと言えば取材記録の集積に近いもので、普遍的な小説作品と言えるものではなかった。
 (編集長より、表現要修正の指示アリ)
 今回は、オカルト事案に関心を持つカドブン編集部員が、藍上氏と編集担当のT氏に直撃取材を敢行。本作に込めた思い、受賞や書籍化に至った経緯などをお話しいただいた。

『完璧な家族の作り方』
カドブン編集部、著者&編集担当に突撃取材!

一読して「この作品が受賞作」と確信した


――本作は、応募時点では一人称視点の作品ではなかったと伺いました。

藍上央理氏:はい。その通りです。初めは、読者の中にこの家をご存じの方もいらっしゃるかと思い、noteで小説として発表しました。まさか、こんなに多くの方に、私が体験した事実を伝えられることになるとは、思いも寄りませんでした。ですから思い切って、より真実に近い形に改稿させてほしいと編集部にお願いしたのです。


――書籍として発売された本作が、より真実に近い形……なんですね。本作が〈角川ホラー文庫賞〉に選出された経緯を教えてください。

編集担当T:創作大賞の選考に参加するのは、角川ホラー文庫編集部としては今回が初めてでした。選考の際に、最初に読んだ作品が本作だったので、さすがに驚きました。どうしてこんなにも地獄のような、極限の状態を思いつくのか……。凶悪な内容に翻弄されながらも、あっという間に読み終えていました。作品末尾に、1枚の家族写真が掲載されていたのですが、それを見て、改めて推薦を心に決めました。これだ、著者の目的はこれだったんだ、と。編集部でも全会一致でした。

▼『完璧な家族の作り方』試し読みはこちら
https://kadobun.jp/trial/kanpekinakazoku/entry-118827.html

家族写真に込められた、慈愛に満ちた想い


――私も拝読しましたが、ページをめくるたびに様々な人物の視点から見た情報が積み重なっていき、どんどん影が濃くなって禍々しいモノの実像がはっきりしていくような感覚を覚えました。家族写真は、書籍の巻末にも掲載されていますね。

藍上央理氏:はい。あの写真、とても素敵な写真ですよね。もちろん、本書を読まれる前にご覧になられてもいいのです。ただ、その後、もう一度ご覧ください。この写真がとても慈愛に満ちた完璧な家族写真だと気付かれるはずです。


――その家族写真を見た人が、何人も行方不明になっていると聞きました。
(校閲部より、真偽不明との指摘アリ。証拠資料要提出)
これについてはどうお考えですか。

藍上央理氏:そうなんですね。でも、先ほどお伝えした通り、とても素敵な家族写真ですから。ご覧になられた方たちも、きっと元気にされているのではないでしょうか。


――まるで他人事ですね……でも私は、写真を見ても、特に変わった影響はないんです。完璧な家族とか、作り方とかって……ここに書いてあること、本当なんですか。全部嘘なんじゃないですか? 教えてください。私にはもう、何を信じればいいかわからない。

編集担当T:そんなに大声を出さないでください。落ち着いて。もちろん、人によって個人差はあります。すぐおわかりになる方も、しばらくしてから気付かれる方もいます。あまり心配されなくてもいいんですよ。


――Tさん、冗談じゃないんですよ。先日、本作の試し読み記事を担当したカドブンの編集部員も、ここ数日連絡がとれないんです。彼女はどこへ行ったんですか。そもそも完璧な家族になるってどういうことですか。あんたたち2人とも、一体何を企んでるんだ。

藍上央理氏:真実を理解される前は、混乱される方もいらっしゃいますが、大丈夫です。きっと、その方は宍戸邸に向かわれたんですね。


――宍戸邸……作品に登場した、あの廃墟ですね。わかりました。場所はこちらの調べで、もうわかってるんです。この週末、行ってみます。

藍上央理氏:ぜひ。宍戸邸でお待ちしています。

編集担当T:お待ちしています。



『完璧な家族の作り方』試し読み記事を掲載後、失踪したカドブン編集部員。親しい……いや、今は単なる同僚だが、かつては愛し合う関係だった彼女の行方を追い、私は北九州市に位置する宍戸邸へ向かうことに決めた。
 (校閲部より、本インタビューと無関係との指摘アリ)
今回の件のすべてが私の勘違いであり、杞憂であったと信じたい。
しかし……。
 
 宍戸邸に行けば。そこに彼女はいるかも知れない。俺を愛してくれていたころの彼女が。俺の言うことはなんでも聞いた彼女が。どんなにしつけても、なかなか壊れなかった彼女が。今度こそ、今度こそ本当の家族になれるかも知れない。
 (編集長より、表現要調整との指摘アリ)
 
 今一度、巻末の家族写真を見てみると、初めて見た時から少しだけ変化があるように思える。これも気のせいなのだろうか。
 読者の皆様には、引き続き続報をお待ちいただきたい。

作品紹介



書 名:完璧な家族の作り方
著 者:藍上 央理
発売日:2025年04月25日

わたしもあなたも、完璧な家族、作れます。
新人賞に応募された小説作品「完璧な家族の作り方」。
角川ホラー文庫編集部は、著者のある目的のため、本作の書籍化を決定しました。



※本作は、note主催・創作大賞2024〈角川ホラー文庫賞〉受賞作です。


〈目次〉
完璧な家族になるための方法とその過去の事例
北九州に現存する一軒家で起きた凄惨な事件
その家で増え続ける行方不明者
理想的で完璧な家族のあるべき姿に関して
「首縊りの家」とその周辺地域に伝わる怪談についての取材記録
など様々

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322501000746/
amazonページはこちら
電子書籍ストアBOOK☆WALKERページはこちら


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