このたびは伊坂幸太郎さん最新作『AX アックス』&<殺し屋>シリーズへのご質問を多数お寄せいただき、ありがとうございました。皆さんからの質問&伊坂幸太郎さんのご回答を発表いたします! 続いて後半をお楽しみください!
>>『AX アックス』大ヒット記念!「伊坂幸太郎への一問一答」前編
小説は書いてあることがすべてで、書かれていない部分は、「書かれていないことに意味がある(埋めてしまっては意味がない)」と思っています。絵の中の白い部分のような感じです。ですので、みなさんの質問に対しては、物語の裏設定を説明するというわけではなく、僕自身がその場で思いついたものを(大喜利に答えるような感覚で)回答していると思っていただければありがたいです。
――伊坂幸太郎
Q26 恐妻家の本質には、2つあるような気がしました。本当に恐れている人と、兜のように深い愛の裏返しの人。世の中には、兜のようなタイプの恐妻家は多いと思いますか?(seitarouさん 男性 50歳 会社員)
伊坂: 深い愛の裏返しかどうかは分からないのですが(汗)、ただ、奥さんの機嫌が悪いとつらい気持ちになっちゃう男性は多いのではないかな、と想像します。
Q27 先生こんにちは。『AX』最高に面白かったです! 兜は一流の殺し屋でありいい父親そしていい夫でしたが、それを見極めた奥さんの見る目が凄いなって思いました。二人の出会いのシーンで兜を「暗い顔、怖い顔」と表していたのに何故「悪い人には見えないけれど」と逆の事を思えたのでしょうか? イメージでしか想像出来ないので…。二人のお付き合いの経緯も気になります。(双子moonさん 女性 34歳 自営業)
伊坂: もしかすると、暗い顔、怖い顔をしていても悪人には見えなかったのかもしれません。幼く見えたのでしょうか? どうやって付き合ったんでしょうね。次の日にまた、そこを通ったんですかね。
Q28 『AX』を読んで、これは完全なラブストーリーと思いました。伊坂さんは、感涙の最後のエピソード含め、愛を描くことを最初からの目論見でいましたか?(takashiさん 男性 35歳 その他)
伊坂: ああいう話になるとはまったく思っていませんでした。ただ、兜の奥さんが嫌な人と思われるのは寂しかったので、どうにかしたかったところはあります。
Q29 兜は数々の手術をこなし、妻にも万全の心持ちで挑み、最終的に医師と対峙することになりますが、ただ、息子『克巳』の名前の由来は(克己=打ち勝つこと)が元でしょうか?(kyokoさん 女性 36歳 主婦)
伊坂: そこまで考えていなかったのですが(これからはそれが元ということにします)、克巳の名前ははじめ克己にしようか悩んでいました。
Q30 殺し屋シリーズに登場する地名、藤沢金剛町の由来があったら教えてください。また、伊坂さんはこの町にどんなイメージをお持ちですか?(A子さん 女性 38歳 会社員)
伊坂: 新宿歌舞伎町みたいな、怖そうな雰囲気の名前を無理やり考えたんですが(笑)、改めて見ると、そんなに怖くないですね。
Q31 『AX』の物語には、父から息子へ、そのまた孫へと繋いでいく、とても切なくて、かけがえのない何かが描かれていると思います。伊坂さんにとってそれは何ですか?(kazumaさん 男性 38歳 会社員)
伊坂: 確実に「何か」はあるんですけど、うまく言えません。
Q32 伊坂さんは奥さんのどういうところが恐いのか教えてください。(mikiさん 女性 40歳 主婦)
伊坂: 妻は別に怖い人ではないのですが、妻が疲れていたり、機嫌が悪かったりする(それはたいがい、僕のせい)と家庭内の空気は、絶対零度的な感じになるので、そうならないようにといつも思います。
Q33 『グラスホッパー』で没となった轢死屋や蛍、未だ書籍化されない『マリアビートルイントロダクション』の復讐屋、最新刊『AX』に掲載されるかもしれなかった幻のDエピソード。これらが日の目を見るチャンスは在り得るのでしょうか。
今のところ考えてはいらっしゃらないかもしれませんが、非常に魅力的なキャラクターであり、ストーリーでもあるのでこのまま埋もれさせておくのは勿体ないなぁと思いました。
一ファンの戯言ではありますが、何らかの形で活かされることがあればこんなに喜ばしいことはありません。(takeさん 女性 40歳 主婦)
伊坂: そんなに詳しいことまで知っていてくれてありがたいです。今のところ、改めて発表する予定はないんですよね。ただ、『AX』の短編も本にまとめるつもりがなかったくらいなので、どうなるのかは分かりません。
Q34 「死ぬことと戦争が恐い」とおっしゃっていた記事がありましたが、死を恐れながら殺し屋を描くのはどういう心理からなのでしょうか?(けいこさん 女性 40歳 主婦)
伊坂: こんなことを言ってしまうと申し訳ないのですが、フィクションの中の殺し屋はあくまでも作り話というか、ファンタジーの世界を描くような感覚で、現実の自分とはあまり結び付けていないのかもしれません。ただ最近は、作中ではなるべく人が死なないほうがいいな、死ぬとしても(記号的な)悪人のほうがいいな、という気持ちが強くなってきました。
Q35 どのようないきさつで医師と『手術』のやりとりをするようになったのか、きっかけを教えて下さい。(幸次郎さん 女性 40歳 無職)
伊坂: どうなんでしょうか。最初は普通に、何かの診察で訪れたのかもしれません。分からないですけど。
Q36 『AX』の主人公・兜が文房具メーカーの営業時代に『(本人が気付いたり周囲から言われた)顧客の裏メッセージ』があれば教えて下さい。(夢子さん 女性 40歳 主婦)
伊坂: そういうのありそうですね(笑)。すぐには思いつかないのですが、「いつもわざわざご苦労様です」という言葉ですら、実は裏に何かメッセージが込められてそうで怖いですね。
Q37 「俺が好きな小説の中にこういう文がある。『私は、その男を軽蔑する。足元の大地が割れ、頭上からは巨岩が転落してくるというのに、歯を見せているからだ。化粧の具合を確かめているからだ。私の軽蔑が嵐となり、ここを荒らしたとして彼は』」
『マリアビートル』(文庫本P.243)で蜜柑が引用したこの小説は何でしょうか? 彼の読んだ本は全て読破したいのですが、<引用・参考文献>を見ても分かりませんでした。
可能であれば作者名、タイトル、できれば出版社を教えていただければ嬉しいです。(リサさん 女性 40歳 主婦)
伊坂: 確かこれは(それすらうろ覚えなのですが)、僕がでっちあげた文章のような気がします。申し訳ないです(汗)。
Q38 伊坂先生こんにちは。『AX』とても素晴らしかったです! 質問ですが、『グラスホッパー』では普通に生活していた鈴木が復讐の為に殺し屋の世界へ、『AX』では逆に兜が殺し屋を辞めて普通の生活へと望んでいましたが、この対照的な2人は意識されたのでしょうか?(カルピスさん 女性 34歳 自営業)
伊坂: 全然意識していませんでした! どちらも物語の都合でそうなったのですが、そういう考え方も確かにできますね。
Q39 書名の『AX』は斉藤和義さんが高校生の時に組んでいたバンド名だと思うのですが、何故そうしたのですか?(山本定吉さん 女性 17歳 学生)
伊坂: ぜんぜん知りませんでした(笑)。だとしたら、うれしいです。
Q40 兜と奥さんは夫婦喧嘩することはほとんど無さそうですが、夫婦喧嘩をしてしまったとき、夫としてはどうすればいいと思いますか?(恐妻家さん 男性 41歳 会社員)
伊坂: 謝るしかないのではないでしょうか。
Q41 兜の実際の父親との関係は、どのようなものだったのでしょうか?(yamadaさん 男性 43歳 会社員)
伊坂: たぶん、つらいものだったような気がしますね。
Q42 かつて池波正太郎先生が、他のシリーズに比べて、殺し屋シリーズ(『仕掛人・藤枝梅安』)を書くのは、人の生命を奪う物語であるがゆえに、とてもエネルギーがいるし大変である、みたいなことをおっしゃっていたと思いますが、伊坂さんにとっても、やはり負担が大きかったりしますでしょうか?(YUSUKEさん 男性 43歳 会社員)
伊坂: 僕の場合は、作中の「死」はあくまでもフィクションの中の出来事(物語の都合の一つ)と割り切れているので、書く際のエネルギーにさほど違いはありません。そのあたり、ドライなのかもしれません。
Q43 殺し屋シリーズの最初の作品『グラスホッパー』から、最新作の『AX』まで、作品の中ではどのくらいの年月が経っているのでしょうか。(ゆずぽんさん 女性 22歳 その他)
伊坂: きっちり決めていないので僕もよく分かりません。たぶん厳密に計算していくと、新幹線の型?やスマートフォンの進化などの点で矛盾は出てきそうな気がします。
Q44 七尾がまだ元気に働いているか心配しています。(あきさん 男性 43歳 会社員)
伊坂: 七尾君、今もまだああいう仕事をしているのかどうかは分かりませんが、元気に暮らしているような気がします。
Q45 『医師』が内科を開業したのは、もともと医者を目指していたのと『手術』の仲介をするためと、どちらの動機が先ですか?(kenzoさん 女性 44歳 会社員)
伊坂: 確かにどちらなんでしょうね。なんとなく、医者になったのが先のような気がしますね。患者としてやってきた何者かがきっかけで仲介をはじめたのかも。と今、思いました。
Q46 うちも恐妻家です。でも、いつも魚肉ソーセージばかりだと飽きますよね。他にも食べるもの無いでしょうか? あと、奥様に別の名を付けられるなら、何にしますか? 僕の妻は、ケンカっ早くてすぐ人に噛みつくので、「食虫植物」にします。これからも応援しています!(奥さんスキスキ魚肉くん(書けと言われた)さん 男性 44歳 会社員)
伊坂: 飽きても魚肉ソーセージ一択で行くのが、真の恐妻家(愛妻家?)なのでしょうか? 僕も良く分かりません。「食虫植物」という呼び名もすごいですね。
Q47 伊坂さんにとって、自分がいつかこの世を去った後に、子供に一番覚えていて欲しい姿はありますか? あればどんな姿ですか?(HIROさん 男性 45歳 会社員)
伊坂: すごく考えてしまう質問ですね。この世を去った後のことは考えたくないのですが、でも、きっと「一番覚えておいてほしい姿」があるとは思います(今、思いつきませんが)。
Q48 伊坂先生の殺し屋シリーズ大好きで、特に鯨さんが好きです。鯨さんは『罪と罰』をよく持ち歩いている描写がありますが、普段彼が持ち歩いているのは上巻でしょうか、下巻でしょうか?(にしのさん 女性 24歳 会社員)
伊坂: 確かにどっちなんでしょうね(笑)。でもやっぱり(ソーニャに救われる部分のある)下巻じゃないでしょうか?
Q49 伊坂さんはコンプレックスはありますか? それを小説に盛り込むことはありますか?(ananさん 女性 34歳 自営業)
伊坂: コンプレックスはたくさんあると思います。音痴でリズム感がないですし、普通の人が普通にできることが全然できなかったりします。外見についてもいろいろあります。とはいえ、もっと大きなことで悩んでいる人から比べると大したことはないので、なかなかうまく小説に書けません。
Q50 『AX』の各章の頭文字は AX BEE Crayon ABCと繋がり EXIT FINE 何故かDだけ抜けてEFで結ばれていますが 幻のDの章は存在するのでしょうか。それとも 今後 D章を 書かれる予定はありますか? とてもとても気になって 魚肉ソーセージの包みを破るのに 思わず大きな音を立ててしまいました。(こがねおろしさん 女性 36歳 主婦)
伊坂: Dは「Drive」というタイトルで途中まで書いて、『小説 野性時代』に掲載してもらいました。全体の三分の一、くらいの分量でしょうか。東京湾の海ほたるを舞台にいろいろな攻防が起きる(兜は、家族にばれないように戦う)という予定だったんですが、いくつかの事情で書く気力がなくなってしまい、そのままになっています。今のところ書く予定はないのですが、誰か、アイディアだけ使って続きを書いてくれないかな、という気持ちです。