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特集

絵本作家デビュー50周年・待望の描きおろし絵本『おばけのばあ』せなけいこインタビュー

取材・文:黒坂 真由子 

●0歳から! 「おばけ絵本」で親子の楽しいひと時を

「だあれ だあれ いない いない ばあ」
「うらめしやー おばけだぞー」

 あかちゃんが大好きな「いないいないばあ」。この絵本では、うさぎ、ねこなど身近な動物だけでなく、ちょっぴり怖いおばけが、ママとあかちゃんにむかって「いないいないばあ」をしてくれます。ただかわいいだけではなくて、ドキドキするのが、「おばけ絵本」のいいところ。今回、おばけ絵本を描きおろしたせなけいこさんは「ちょっとだけ怖いのが、小さい子にはちょうどいい」と言います。

●50周年を機に描き下ろした最新作は、親子で楽しめる「あかちゃん絵本」

 『ねないこだれだ』(福音館書店)、『めがねうさぎ』『おばけのてんぷら』(ポプラ社)など、数々の名作絵本を生み出してきたせなさん。1969年に絵本作家としてデビューしてから、2019年で50年を迎えます。横須賀美術館では「せなけいこ展」と題し、絵本の原画約300点を集めた原画展を開催。貴重な原画を間近で見られる機会がやってきました。

 また、50周年を記念して、貼り絵による新作絵本『おばけのばあ』も完成しました。小さな子ども達に向けた、自身初の「いないいないばあ」絵本です。「あかちゃんも喜んでくれるかしら?」と言うせなさんに、お話を伺いました。

○デビューまで18年。デビューから50年。ずっと絵を描いてきた

――最初のおばけの本を出してから、もう50年も経つのね。絵の修業のために、子どもの頃からずっと読んでいた武井武雄先生のところに弟子入りしたのは19歳の頃。それからデビューまでに18年かかったから、長かったようにも思うけど、ちょうどよかったのよ。その頃は子どもがまだ小さかったから、子ども達を見ていると、自然とお話が浮かんできたの。息子が最初の読者だったのね。
 おばけも、最初は息子のために描いていたんです。描かないと「ママ、早く描いてよ」とせがまれていましたから。私もおばけが大好きだったから、図書館に行っていろいろ調べて、新しいおばけを発見すると、子どもに話したり、絵に描いたりして楽しんでいたんです。
 書庫にもたくさんおばけの本があります。本は捨てないし、大切な本は2冊買ってあるから、書庫は本であふれています。デビューした頃の本も、もちろん全部取ってありますよ。

○おばけは、人間の子どもと似ている

――人間が死んでおばけになるんじゃないんですよ。おばけっていうのはね、幽霊とは違った独立した生き物なんです。だから家族が死んでおばけになる、というお話は書きません。子どもが後でうなされるような話じゃだめなんです。
 おばけはね、子ども達と似ているところがある生き物なんですよ。おばけだってママが怖いし、ちゃんと本を読んで勉強もしているんです。おばけ同士で「誰が一番怖いか」なんて議論することもある。ただ、子どものおばけはいつも「自分が一番偉い」と思っていますけど(笑)。そんなところも、子どもみたいでしょ?

○作るときには、バランスを取ろうとしない

――紙を貼るときには、いっきに貼るとつまらない。だから、わざと重ねたり、ずらしたりして貼るんです。そしてね、ずれているほうが面白いの。右と左、おんなじにはしないのよ。
 あかちゃんとねことうさぎが寝ている絵があるでしょ。ここで、あかちゃんの手もお布団から出したくなっちゃうかもしれないけど、そうはしないの。うさぎだけ出ていればいいんです。バランスを取ろうとしすぎないほうがいい。

失敗してもいいんですよ。間違って切っちゃったら、また貼ればいいんだから。線がはずれたって、そのほうがかえっておばけが生き生きする。おばけの歌でもうたいながら作ると、勢いのいいのができるんです。一匹ずつ個性を考えながらね。

 私もだんだん手がうまく動かなくなったり、目が悪くなったりして、思うようにいかないこともあるけど、おばけを作るのは楽しいの。子ども達には、たくさん絵本を読んでほしい。そうすればきっと自分の描きたいものが見つかるから。

○「ばあ」はゆっくり、大きな声で

――「おばけ絵本」は、怖いけど、かわいくて、気になるから、何度も「読んで!」とせがんでくる子が多いんです。だから読むときに、ママもちょっと工夫をするといいですね。ママがちょっと声色を変えるだけで、子どもはドキドキしてくれると思いますよ。

 『おばけのばあ』を読むときには、「ばあ」と言うときに、大きな声でゆっくりと読んであげてくださいね。おばけの真似をしたりするのも楽しいわよ。「うらめしやー」「おばけだぞー」とするときのポイントは、右手と左手の高さを変えること(笑)。そうするとおばけらしくなりますよ。

●せなさんに、あなたのおばけを届けよう

 『おばけのばあ』は、赤ちゃんにも安心の角が丸いボードブック。ほどよい厚さがあるのでめくりやすく、赤ちゃんの指先の発達にも役立ちます。子どもはいつの時代も、おばけに興味津々。はじめて出会うおばけは、赤ちゃんに「いないいないばあ」をしてくれる、ちょっぴりかわいいおばけもオススメです。『おばけのばあ』を声に出して読んで、親子で楽しいひとときを過ごしてください。

 せなさんはいつも「自分のおばけをつくって」と子ども達に話しています。今回、絵本についているアンケートハガキや官製ハガキなどでみんなの描いたおばけを大募集。せなさんにあなたのおばけを届けてください!

◇宛先
〒102-8177 東京都千代田区富士見2-13-3
株式会社KADOKAWA 文芸局 児童図書編集部
おばけのばあ 愛読者係

●絵本作家デビュー前夜、幻の原画が復活!

 また60年ぶりに発見された原画を復刻した絵本『もみの木』(文・石井睦美)も同時発売されます。絵本化するにあたって、せなさん自らの手で修復作業も行いました。

 「せなけいこ展」では、『もみの木』『星のひとみ』の原画をはじめ、『おばけのばあ』などたくさんのおばけの原画も展示されています。この夏親子で「本物のおばけ」に会いに行ってください。

◆全国巡回の大規模原画展もスタート!

『ねないこだれだ』誕生 50 周年記念 せなけいこ展
横須賀美術館 2019 年 7 月 6 日(土)~9 月 1 日(日)
刈谷市美術館 2019 年 9 月 21 日(土)~11 月 10 日(日)
阪急うめだ本店 9 階 阪急うめだギャラリー 2019 年 12 月 18 日(水)~2020 年 1 月 6 日(月) 以降全国巡回予定
公式サイト  https://www.asahi.com/event/senakeiko50th/


せな けいこ

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