監督・石井岳龍×主演・綾野剛×脚本・宮藤官九郎というドリームチームによる映画『パンク侍、斬られて候』が6月30日(土)より全国ロードショー。原作は、芥川賞作家の町田康氏が2004年に発表した同名小説。この小説の着想は「現実とフィクションの問題」を考える中で得たものだったと原作者の町田氏は話す。
町田: 私たちが揺るぎないものと思っている現実。実はその現実の中にもフィクションによって支えられているものもあれば、逆にフィクションの中に現実が入り込んでくることもある。現実とフィクションは別のものではなく、地続きになっていてその境界は割と曖昧だと思うんです。そういうことを実感として小説に書いてみたいというのが始まりでした。
江戸時代を舞台にしながらも登場人物たちが交わす言葉は現代風、さらに現実を超越した合戦場面なども描写され、その特異さから長年“実写化困難”とされてきた原作小説。町田氏自身も映画化の企画を最初に聞いた時には「正直無理じゃないか」と思ったと打ち明ける。だが同時に別の気持ちも芽生えたという。
町田: これをもし映画にするんだったら石井さんしかいないだろうという気持ちもあって。映像に対する執念みたいなものを石井さんの作品を観ていると感じます。そういう感覚を持って撮らないとこの作品は難しいかなと思ったんです。単なるお話として捉え、わかりやすいようにして撮ってしまうとつまらなくなるだろうなと。
『爆裂都市 BURST CITY』(1982)など、一俳優として石井岳龍(当時の名義は石井聰亙)監督作への出演経験もある町田氏だが、映画版『パンク侍、斬られて候』にも主人公の掛十之進に斬られる巡礼役として特別出演を果たしている。
町田: 綾野さんの殺気が凄かったんですよ。本当に殺される、と思ってしまうような怖さがあって。綾野さんだけじゃなく、キャストの皆さんが素晴らしかったですね。皆さん、僕が思い描いた以上にちゃんとその人物だった。台詞一つひとつの解釈、言葉を発する時の動作や表情、目つきも全部ひっくるめて、本当に僕が頭の中で考えていたことがここに現れているなって。
加えて、完成した映画を観て感じた「物語の重み」。それもまた原作者として嬉しい要素となったようだ。
町田: 現実と虚構の狭間に生きる人の儚さ、社会の矛盾や軋轢の中で押し潰される人の悲しみ、群衆の狂気…そういう本質の部分が合わさり、物語が進むにつれ重みを感じるようになっていった。また『これはシリアスな話ですよ』という顔して出す重みではなく、気が付いたらフッと感じる重みだったというのがいいなと。それが僕は嬉しかったです。
映画公開を記念して、綾野剛さんが扮する物語の主人公、超人的剣客にしてプータロー侍の掛十之進がカバーを飾るスペシャルバージョンの原作文庫も絶賛発売中。小説、映画と両面から“ぶっ飛びつつ重みのある”物語を楽しんで頂きたい。
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>>映画『パンク侍、斬られて候』公式サイト 6.30全国ロードショー
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