駒崎:僕はこのたびの入管法改正に対して、アンビバレントな思いがある。移民に頼らなければ、日本経済の衰退に歯止めがかからないのは事実です。でも「移民」とひとくくりにされる人々にも、それぞれの人生や家庭があるわけで、単純に数に還元されるものではない。それを「技能実習生」と呼び、安価な働き手としか見ないのは都合がよすぎます。日本人はみんな、その欺瞞を自覚しないといけない。
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藤井:そのとおりだと思います。法案の中身も不透明、というより空っぽですしね。そもそも日本人に対して労働基準法を守らない事業者が、外国人に対してルールを守るかどうか、はなはだ疑問です。

駒崎:『東京の子』には、日本での永住権を得たベトナム人が多数働く〈724〉という二四時間営業のベトナム料理店が出てきます。『Gene Mapper』もホーチミンが舞台になっていましたし、藤井さんはベトナムに思い入れがあるんですか。

藤井:会社員時代、出張で二か月ほど滞在したことがあって、よく知っている国なんです。ずっと経済発展を続けていて、日本がこの二〇年に失ってしまった活気がある。生活レベルが日本と並ぶのも、そう遠い日ではないでしょうね。


〝解雇できない〟呪縛から日本社会を解き放って


駒崎:小説では有明のオリンピック跡地に、〈東京デュアル〉という〝働きながら学ぶ大学〟が誕生します。サポーター企業が学内にオフィスや工場を作り、学生はそこで働き、給与を得て、卒業後はそのままサポーター企業に就職する。これは画期的なシステムですね。

藤井:ベトナムやシンガポールにあるポリテク(=高等技術専門学校)に近いものですね。会社員時代、シンガポールなどで現地の若者を採用したことがあります。募集したのはコンピューターグラフィックスのエンジニアで、ポリテクの卒業生を中心に採用しました。管理職コースを歩む大学の卒業生とは違って、彼らは現場で技術を磨く労働者です。管理職になることができない代わりに、労働基準法で守られている。シンガポールでは月給四五〇〇シンガポールドル(三六万円相当)以上の管理職になってしまうと、残業代も出ないし、休日も定められていません。即日解雇されても文句は言えないんです。
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書籍

『東京の子』

藤井 太洋

定価 1728円(本体1600円+税)

発売日:2019年02月08日

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    書籍

    「本の旅人2019年2月号」

    角川書店編集部

    定価 100円(本体93円+税)

    発売日:2019年01月26日

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