七転び八転びしながら、身体ぐるみで子どもを育て、仕事に全力投球してきた西原さんが、ずっと言えなかったこと、今だからこそようやく書けたこと。
胸に刺さりまくる、大切な気づきが詰まった人生のトリセツ――『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』。発売たちまち大反響&共感の嵐を呼んでいる本作の冒頭「はじめに」を特別公開! ぜひご一読ください。

はじめに 私が女の子だった頃

 女の子って、いつの間に大人になるんだろう。
 上京した日のことは、今でもよく覚えている。
 見送りにきたのは、あの頃つきあっていた彼氏で「別れたくない」って泣いてくれた。「あたしも」って言ったけど、頭の中はこれから東京で始まる新しい生活のことでいっぱいで、優しくて、かっこよくて、おまけに地方公務員という、この先、二度とめぐりあえないハイスペックな彼氏とさよならすることに何のためらいもなかった。
 あの時、私は19歳で、なんにもなかった女の子だったのに、どうしてそんなことができたんだろう。
 全部捨てて、東京で生きていく。
 美大に進学して、絵を描いて食べていく人になる。
 高知にはもう戻らない。そう決めて、ただ、前だけを見ていた。
 進学することも、上京することも、当たり前に許される環境じゃなかった。
 私の田舎はとても貧しくて、子どもの頃、私の友達は大人たちから本気で殴られていた。貧しさからくるどうしようもない怒りや悲しみは、暴力になって、一番弱い者にいく。周りを見回しても、地方のとりたてて何のウリもない町で暮らす女の子がたどる道は、だいたい決まっていた。
 あの町でイケてる男って言ったらやんちゃ自慢の不良のこと。言い換えれば無職のバカ。
 カワイイ子ほど、ろくでもない男につかまって、人生決まっちゃうのが早い。離婚率も高くって、シングルマザーになっても、養育費をもらえないどころか、逆に借金だらけ。男に頼るような生き方をしていたら、確実に路頭に迷う。みんなひどくイライラしていた。それはすぐに暴力になって、男は女を殴り、最後は子どもにいく。そういう生き方を山ほど見てきた。
 あぶなっかしいよね、女の子が生きていくのって。なんの心構えもできないうちに、いちかばちかの出たとこ勝負。
 初心者のサーフィンみたい。
 うまく波に乗れたらいいけど、最初の波でつまずいたら、あっという間に沖に流されちゃう。周りを見回しても、お手本にできる大人なんていなかった。地方に生まれて、勉強もできないわ、器量もフツーで、ろくな男がいないとなれば、逃げ場ナシ。
 それが、あの頃の私──。
 自分も、将来はあんなふうに男に殴られて、子どもを殴る親になるのかと思ったら、大人になるのが、すっごく怖かった。働ける場所も今よりずっと限られていて、こんなところにいたくない、そう思っても、抜け出す術がない。
 今思うに、決して順風満帆な船出じゃなかった。
 私が大学を受験するはずの日に、父親が首を吊って死んだ。
 お葬式に呼び戻された私を待っていたのは、借金まみれの父親に、私の進学のためのお金を「出せ」と迫られて、ボッコボコに殴られた母親で、母親が死守したわが家の全財産140万円のうち、100万円が、私が東京に行って、予備校に通うための軍資金になった。
 あんな状況で、高校を中退したバカ娘に、ほとんど全財産をぶっ込んでくれた母には感謝しかない。本当にありがとう。
 何かやろうとしても「みっともないから、やめなさい」って言うばっかりで、どうせ何を言っても、わかってくれないと思っていた。あんなふうにはなりたくないと背中を向けていた母親に、私は、道をつないでもらった。
 夢や希望があって、ここまで歩いてこられたわけじゃなかった。
 働こう。自分でお金を稼げるようになれば、あんなつらい場所には戻らないで済む。もう二度と、あの場所には戻らない。そう心に決めていたからこそ、どんな時だって前を向くことができた。
 あれから32年が経って、私は52歳になった。
 東京で漫画家になり、大学に通う息子と高校2年生の娘の母親になった今、19歳だった私のことを、ふと思い出すことがある。
 私なんて、田舎にいた頃は、ホント、ただのヤンキーだったから。
 へたしたら、今ごろどうなっていたかわからない。
 だから今、逆風の中にいて、どうしたらいいかわからずにいる女の子たちに、言っておきたい。そこから1歩踏み出すことを、どうか諦めないで。
 20歳までは、困れば誰か助けてくれるかもしれない。でもそこから先は、自分で道を切り開いていくしかない。若さや美貌は、あっという間に資産価値がゼロになってしまう。仕事のスキルや人としての優しさ、正しい経済観念。ゼロになる前にやっておかなければならないことはたくさんあります。自立するって、簡単なことじゃないからね。
 結婚したからって、そこがゴールじゃない。相手が病気になることもあれば、リストラされちゃうことだってある。どんなに立派な人だって、壊れてしまうことがある。つぶれない会社、病気にならない夫はこの世に存在しません。そうなってから「やだ。私、なんにも悪くないのに」じゃ、通らない。
 だから、娘に言っています。
「王子様を待たないで。社長の奥さんになるより、社長になろう」
 女磨きって、エステやネイルサロンに通うことじゃないからね。お寿司も指輪も自分で買おう。その方が絶対楽しいよ。
 娘は、今、反抗期真っただ中で、だからお互い口もきいてない。私にも身に覚えがあるから、なんの心配もしていない。
 ああ、そろそろ彼女も、船出の時が近づいてきたんだなって。
 旅立つ前に、伝えておきたい。
 これから世の中に出ていく女の子に、覚えておいてほしいことがある。
 立派な言葉なら世の中に溢れてるけど、私が言いたいことは、そういうことじゃない。本当に覚えておかなきゃいけないのは、たぶん、転んだ時の立ち上がり方。
 長い人生、人は何回も転ぶ。その時腐らず立ち上がる方法。
 どうか、覚えておいて。
(このつづきは、本編でお楽しみ下さい)

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書籍

『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』

西原 理恵子

定価 1188円(本体1100円+税)

発売日:2017年6月2日

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