カドブンノベルをご愛読いただいた皆様へ
2020年12月号をもって、いったん、カドブンノベルを休刊する運びとなりました。
ガラケーからスマホへ、PCからタブレットへ、時代もデバイスも、日々めまぐるしく変化している中、いつでも思いたったときに、自由に、好きなだけ、最旬の物語が楽しめるように。電子媒体だからこその、のびやかで勢いのある、チャレンジングな試行錯誤を、様々重ねてまいりました。そんな挑戦を面白がり、共鳴してご寄稿くださった作家の方々、そしてその物語を楽しみ、支持してくださった読者の皆様の存在に、あらためて深くお礼申し上げます。
脈々と築きあげてまいりましたこの大きな物語の流れと、培ってまいりましたデジタルの知見を活かして、さらに自由で驚きに満ち、パワーアップした媒体を、2021年春にはお届けできるよう、編集部一同、日々学びを深め、鋭意準備を重ねております。これからお届けすることになる物語にも、これまでと変わらぬ、あたたかなお気持ちを寄せていただけますように――再会を期しつつ、改めてお願い申し上げます。
長きにわたってのご愛読、本当にどうもありがとうございました。
カドブンノベル編集長
松崎夕里
今月のおすすめ
★新連載 太田愛「彼らは世界にはなればなれに立っている」
この静かな町で、半年の間に五人の人間が消えた。
最注目の俊英が描く、「壊れてしまった世界」。
著者より
舞台は〈始まりの町〉と呼ばれる、どこにもない町。一人の男が帰郷し、少年の頃に起きた事件を回想するところから物語は始まります。山の稜線には風力発電のプロペラがまわり、窓からは足踏みミシンの音が聞こえ、揚げ菓子と石の塔と映画館のある町。そこで、いったい何が起こったのか。四人の人物が語る四つの事件の向こうに、やがて〈町の物語〉が見えてくる。私たちの「現在」につながる痛みと希望の物語になればと思っています。
編集部より
太田愛さん、待望の新連載です!
累計26万部突破のシリーズ『犯罪者』『幻夏』『天上の葦』では、一気読みのエンタメでありながら鋭く現実社会の問題に切り込んできた太田愛さん。今回は一風変わった寓話的な設定にも見えますが、根幹のテーマは変わっておりません。今、現実社会でおきている矛盾や危機が、もう少しだけ進行したら……危うい淵に引っかかっているような現実が、そのまま穴に転げ落ちてしまったらどんな世界が立ち現れるのか。2020年の幕開けを飾るにふさわしい意欲作です。
★新連載 綾崎隼「盤上に君はもういない」
史上初の女性プロ棋士になるのはどちらか?
棋士を目指す者たちの静かで熱い青春譜!!
著者より
長い歴史があるのに、将棋の世界には『女性の棋士』が一人も存在しません。プロ棋士は男性に限定された制度ではなく、女性でも同じ条件でなれます。しかし、囲碁の世界には『女性の棋士』がいるのに、将棋の世界には歴史上一人もいないのです。どうしてだろうと思うのと同時に、そんな歴史を知りながら、棋士を目指す女性は本当に格好良いと思いました。将棋の魅力に囚われた〈女性たちの闘いの物語〉である本作が、一人でも多くの方に届くよう願っています。
編集部より
綾崎さんから今作のご提案をいただいた時は驚きました。『君を描けば嘘になる』では美術の世界に生きる若者を描いていただきましたが、今度は将棋界とは。でも説明を聞いて納得しました。どちらの世界も、自分の才能や運命と真摯に向き合う若者で溢れています。綾崎さんの描きだす〈勝負の世界〉をお楽しみください。
今月のラインナップ
小説
赤川次郎/王谷晶/櫛木理宇/河野裕/小林泰三/月村了衛/中山七里/藤井太洋/藤野恵美/増田俊也/三羽省吾/宮木あや子/夢枕 獏/米澤穂信/渡辺 優
エッセイ・コミック
今野敏/酒井順子/井上純一/オカヤイヅミ