先月17日(金)に公開され、現在大ヒット中のアニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』――その前日譚である角川文庫の『GODZILLA 怪獣黙示録』もたちまち4刷と絶好調です!
11月下旬のある夜、忙しいスケジュールの合間を縫って、かねてから「じっくり語りたい」と言い交わしていた監督・瀬下寛之氏と小説担当・大樹連司(ニトロプラス)氏の対談が行われました。ここでしか読めない企画の裏話をご堪能ください。
>>【試し読み】『GODZILLA 怪獣黙示録』
ノベライズを担当すれば、
子供の頃からの夢を実現できると思った。(大樹)
――どういう経緯で大樹先生が『GODZILLA 怪獣黙示録』を担当することになったのでしょうか。
大樹: 僕はニトロプラス所属でして、虚淵(玄)が新作の『GODZILLA』案件に関わっていると知った時から「ノベライズの仕事があるならやりたい」とアピールしていました。とはいっても具体的にどんなものを書くかというビジョンはなく、そんな時にAnimeJapan2017で配布された作品世界の年表である「Investigation Report」を拝見して、すごく衝撃を受けました。それで、「是非この前日譚を僕にノベライズさせてくれ」と改めて社長に頼み込みにいったんです。
瀬下: そこが最初だったんですか。あのレポートは映画本編用に作成した設定をほぼそのまま使用してくれていて、すごくマニアックな宣伝展開にワクワクしました。
大樹: 『GODZILLA 怪獣惑星』の具体的な内容を知ったのは、あれがほとんど最初だったんですが、怪獣ファンとして非常に興奮しました。「アンギラスやラドンどころかダガーラまで出てる! しかも、そもそも最初に現れるのがカマキラスなんて!」と。僕のファースト・ゴジラは『怪獣総進撃』(1968)なんです。ゴジラが正義の味方をやっていて、怪獣もいっぱい出てくる作品でした。小学生ながらに「楽しいなぁ。ゴジラ頑張れ」と思って見ていました。その流れで『ゴジラVSモスラ』(1992)の頃から平成ゴジラシリーズも追いかけるようになり、「やっぱりゴジラはシリアスじゃないと」と順調にこじらせていくことになるんですが……(笑)。
瀬下: (笑)
大樹: でも、子供のころに好きだった怪獣がいっぱい出てくる作品を、もう少しシリアスな作風で観たいという願望は、ゴジラファンなら誰もが持っていると思うんです。
瀬下: うん。ファン共通の夢ですよ。
大樹: ですからあのレポートと年表は「これは僕らの夢そのものだ」という感じで。それで、この前日譚のノベライズを担当すれば、子供の頃からの夢を実現できると思ったんです。
瀬下: なるほど。ときめく流れですね。僕は映画館で初めて観た『ゴジラ』は父親に連れて行ってもらった『ゴジラ対ヘドラ』(1971)だったんです。
大樹: いきなりですか(笑)。
瀬下: 父の証言によると泣き叫んだらしいです。
大樹: 『ヘドラ』は泣きますよ(笑)。トラウマにならなかったんですか?
瀬下: 思春期から洋画ばかりを観るようになって、そのことはすっかり忘れていたんですよ。そして視覚効果が多用された映画を観まくっているうちに、ふと「日本にも『ゴジラ』があるじゃないか」と思い、改めて『ゴジラ』を見直したら『ゴジラ対ヘドラ』だけは言い様のしれない恐怖を感じて(笑)。父親に確認したら、子供の頃に見に行った、と。だから僕の「怖い怪獣映画」の原点は『ゴジラ対ヘドラ』なんです。
大樹: 僕は82年生まれなんですが、怖いゴジラと言えば、初代をのぞくとやっぱり『GMK』(『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』2001)なんです。あのゴジラは白目でとにかく怖い。人類がキングギドラとモスラまで味方につけても敵わない上に、人類を明確に殺しにきている。そういう意味では『GODZILLA 怪獣惑星』のゴジラとも、人類とは絶対共存できない天敵という描かれ方で共通していると思いました。
瀬下: そうですね。
もうスピンオフとして映画化したい!(瀬下)
――小説『GODZILLA 怪獣黙示録』は、語り手が怪獣たちと接点のあった人びとに取材していくというフェイクドキュメンタリーの形式になっています。
大樹: 僕はヒーローがヒロインを助けて世界を救って……という物語らしい物語を書くのがどうも苦手なんです。むしろヒーローの活躍を横で見ていた人間とか、大事件に居合わせたけど主役にはなれなかった人間を書くと、意外と上手くいく傾向がありまして。それがわかってきた頃にマックス・ブルックス『WORLD WAR Z』という本に出会いました。これは世界規模のゾンビ大戦争を、先頭に立って指揮した政府の偉い人からただ逃げていただけの人まで、いろんな人へのインタビューをまとめたフェイクドキュメンタリーというスタイルの小説なんです。このスタイルであれば、自分の得意な部分で勝負できるなと考えていました。でも、それをやるには、まず話のもとになる歴史を一から考える必要がある(笑)。出版企画も通らないうちに、そんなことをやって、ボツになってしまったら、僕は破産してしまう(笑)。だから例のレポートの年表を見た時に「これだ!」と思ったんです。そういう意味では、昔からずっとやりたかったことを、いくつも同時に実現させて頂いた仕事でした。
瀬下: あの前日譚などの設定を作ったのは、虚淵さんが書かれたストーリーをもとにしつつ、作品の世界観をとにかく豊かにするため――という名目です。ですが、実際はかなり個人的な趣味が入ってしまいました(笑)。やりたい放題の内容だったので、大樹さんは整理するのが大変だったと思います。でも完成した小説を読んだら、映画本編には出てこない諸々の設定を、ほぼ99パーセント拾い上げてくれていて!あれだけの短時間であの情報量を捌いて、これだけ面白い小説にまとめあげるのはすごいなと。感服しております。

大樹: いえいえ。僕としては「ぼくのかんがえたさいきょうのカマキラス」とか「21世紀に海外でリメイクされたドゴラ」を考えてみろというお題というかご褒美を与えられた気持ちでした(笑)。小学生の時に落書き帳でやっていたようなことを、36歳にもなって仕事としてやらせてもらえるなんて最高でした。
瀬下: それは僕も同じ気持ちです。僕はもう50歳ですけど(笑)。今回、アンギラスはゴジラ映画の名脇役として知られているけど、逆に有名すぎるよなぁという気持ちがあり(笑)。アンギラスより、もう少し有名でない脇役系の怪獣をいくつも出しました。『ゴジラ』シリーズではないけれどあえてドゴラ(『宇宙大怪獣ドゴラ』1964)をチョイスして、ロンドンで暴れさせたり(笑)。
大樹: はい、ドゴラでロンドン、つまり、ロンドン橋を持ち上げるんですね、というのは年表を読んだ瞬間に伝わってきました。
瀬下: そうです(笑)。あと嬉しかったのは、オペレーション・エターナルライト(ヨーロッパで行われた対ゴジラ作戦)の前哨戦として、大西洋にいるマンダとの戦いを描いてくれたのがうれしかったです。
大樹: あそこは、今度は僕が単に「轟天号」と書きたかっただけです(笑)。
瀬下: しかも、轟天と同型艦で震天と驚天が出て来たり!もうスピンオフ映画化させてもらっていいですか(笑)。あれを読んで、その三隻をどういうデザインバリエーションにしようか考えてます。
大樹: 是非ともよろしくおねがいします(笑)。僕としては瀬下監督から頂いた設定、年表については、名前が出ている怪獣と出来事はきっちり押さえねば、と思う一方で、「これさえを守ればあとは自由だな!」という気持ちで取り組ませて頂きました(笑)。なのでマンダもそうなんですが、ゴロザウルスも出せてよかったな、と。
瀬下: ゴロザウルスはいいですよね。
大樹: 『怪獣総進撃』でのゴジラとゴロザウルスのコンビっぷりが大変素晴らしいんですよ。だから大人になって、ゴロザウルスがマイナーな怪獣だと知って悲しかった。そういうゴロザウルス推しの気持ちが入ってます。
――小説を執筆する上で虚淵さんとはどんなやりとりがありましたか。
大樹: ありがたいことに虚淵とは、一週間に一度のペースできちんと打ち合わせができました。それもこの小説の完成度をすごく支えてくれました。南米のエピソードなどは虚淵のアイディアがもとになっていますし、他にも、小説版のキャラクターと映画のキャラクターの距離感のとり方についてアドバイスをもらったりしました。あと、さまざまなマンガ・アニメでリサーチャーをされた白土晴一さんに設定協力をして頂けたたことも大きかったです。
次巻のテーマは、はたして――?
――お二人は怪獣という存在の魅力をどこに感じていますか。
大樹: なんなんでしょうね……。同じデカいものが暴れるジャンルとして、巨大ロボットアニメというものがありますよね。これはあくまで私見ですが、ロボットアニメはやっぱりロボットが画面にちゃんと出て戦ってほしい。でも怪獣はちゃんとうつらなくてもいいとうか、怪獣の巨大な影だけでも成立するんじゃないかなと思うんですね。怪獣が暴れる足下にも無数の小さな物語があって、ワチャワチャやってる人たちを追いかけるだけでも十分面白くなるのではないか。そしてそういう面白さであれば、小説でも怪獣を描けると思って本作は書きました。逆に言えば、画面のなかで怪獣が歩くだけで、その足下にある大量の小さなドラマを想像させてくれる点が怪獣のいいところだと思います。
瀬下: そうですね。つくづくそう思います。怪獣のおもしろさは「巨大な影」であるところにありますね。
――確かにゴジラという巨大な影に翻弄される人びとを描くという点は映画『GODZILLA 怪獣惑星』と『GODZILLA 怪獣黙示録』の大きな共通点ですね。大樹先生は完成した『GODZILLA 怪獣惑星』をごらんになっていかがでしたか?
大樹: 男のコなのでゴジラはデカければデカいほどいいんです(笑)。今回、我らが夢見ていた過去最大級のゴジラが出てきて、ゴジラファンの夢がまたひとつかなったなと思いました。あとは、これまたファンの面倒くさいところなんですが(笑)、今度こそ、人類の科学と勇気がゴジラを打倒するところが見たい! と思う一方、いざゴジラが倒されそうになると、「いやいやゴジラがこんなことでやられるか」とゴジラを応援する気持になってしまう。今回の『GODZILLA 怪獣惑星』はまさにそういう「ゴジラを倒したい」「ゴジラに倒されてほしくない」というファンのアンビバレンツな気持ちに両方答えてくれる作品だと思いました。

瀬下: まさにジレンマ(笑)。今回、試写の後にいろいろお話を聞くと、そういう感想を多くいただきました。
――小説第二弾もあるそうですね。
大樹 : はい。次巻は「プロジェクト ●●●●●」という副題でいこうと会議で決まりました。
瀬下: おお! そうなんですね。●●●●●が小説でどう描かれるのか、すごく楽しみです。 今回、新たに壮大な世界観を構築したわけですが、映画本編では世界観説明を可能な限り削ぎ落としてシンプルに見せることで、一般的なエンターテインメント性を成立させています。そこは静野孔文監督のさすがの手腕です。でも一方で、マニアックなほうに振れがちな僕としては「この物語世界のあれも観たいこれも観たい」という気持ちがあって(笑)。『怪獣黙示録』はその欲求をお腹いっぱいに満たしてくれた小説でした。映画を観た方は「続きはどうなるんだと」とか「一体以前に何が起こったんだ」とかいう状況に陥っている方も少なくないと思いますが、小説を読んでもらえれば、まずはその“渇望”は必ず満たされると思いますね。
大樹: どうもありがとうございます。ますます次巻を頑張らねばと思いました(笑)。
<大樹 連司(おおき・れんじ)>
1982年生まれ。
ライトノベル作家、シナリオライター。2017年よりニトロプラス所属。著書に『ほうかごのロケッティア School escape velocity』『オブザデッド・マニアックス』など。ノベライズに『スマガ』など。虚淵玄(ニトロプラス)脚本による映像作品のスピンオフ・ノベライズを手がけるのは、『楽園追放2.0 楽園残響 ―Godspeed You―』続き、本作で二作目となる。
<瀬下 寛之(せした・ひろゆき)>
1967年生まれ。
1980年代から映画、TVCM、ゲーム映像など、様々な分野のCG/VFX制作でCGディレクター/デザイナーとして従事。『シドニアの騎士』(14年・副監督)、『シドニアの騎士 第九惑星戦役』(15年・監督)、『亜人』(15~16年・総監督)、『BLAME!』(17年・監督)。
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