小野不由美さんが贈る、怖ろしくも美しい怪談文芸「営繕かるかや怪異譚」シリーズ。
文庫『営繕かるかや怪異譚 その参』と単行本『営繕かるかや怪異譚 その
※本記事は、単行本『営繕かるかや怪異譚 その参』の刊行とシリーズのコミカライズを記念して、『怪と幽 vol.011 2022年9月』に掲載された内容を転載したものです。
小野不由美×加藤和恵 対談
悪魔の血を継ぐ主人公が祓魔師を目指す人気漫画『青の祓魔師』の加藤和恵氏が、小野不由美氏の小説『営繕かるかや怪異譚』のコミカライズを手掛けた。そこでシリーズの新刊『営繕かるかや怪異譚 その参』を刊行したばかりの小野不由美氏と加藤和恵氏との往復書簡対談が実現! 互いに質問を出し合い、それに答える形でのやりとりを交わしていただいた。御二方の初々しい交歓をお楽しみあれ。まず質問は「怪と幽」編集部から加藤氏へ――。
構成=「怪と幽」編集部
「怪と幽」から加藤和恵さんへ
――『営繕かるかや怪異譚』を漫画化しようとしたきっかけを教えてください。
加藤:私はもともと小説をあまり読みませんし、ホラー作品にも詳しくなくて、現在連載中の作品(『青の祓魔師』)の連載が決まってから、ホラーのノウハウを勉強しました。作業中にも頭をそちらの世界に持っていくために、BGM代わりにホラー作品を流すようにしていました。作業中に音声だけで楽しめるホラー作品を探すうちに、怪談にたどり着き、新旧や真偽ごた混ぜの面白さ、趣き深さにガッツリとハマってしまって……。そんな時期に、映画化された『残穢』を観たのが、一番初めの小野先生作品との接点です。怪異の根源を、淡々と探索するミステリ的な描かれ方は、それまで観てきたホラー作品にはなかった新しい怖さがありました。最高にワクワクして、その勢いのまま原作小説と関連作の『鬼談百景』を読み切ってしまいました。読んでいる間、面白すぎて歯の根が合わなかったのもいい思い出です。寒いときや怖いときに、歯の根が合わなくなりますが、面白すぎて興奮してもなるんですね。
そこから、小野先生の作品自体に大ハマりし、もともとアシスタントさんにも薦められていた、「ゴーストハント」や「十二国記」シリーズを夢中で読み漁り、「営繕かるかや怪異譚」を読み出した頃、ちょうど、自分自身が自宅兼職場を建てたばかりということもあり、家をつくることや、家の中での怪談の面白さを身近に感じていたのもあってめちゃくちゃ面白くて。さらに怪談・オカルト界隈では大島てるさんの事故物件公示サイトや、松原タニシさんの『恐い間取り』などで“事故物件”に注目が集まっていた頃で、忌むべき“事故物件”に「営繕かるかや怪異譚」は、また違う視点を与えてくれるのも、面白いと感じていました。どうしようもない“残穢”や“事故物件”を、どうすればいいのか? という思いに対しての小野先生の解のように感じられて、しっくり読めたのを覚えています。
それはそれとして、個人的に、漫画家としての転換点があって、詳しくはさらに長くなってしまうので省きますが……。そこで、元々やってみたかった、原作を付けてのコミカライズに挑戦してみよう、ということになったときに、真っ先に「営繕かるかや怪異譚」が浮かびました。作品の主役のひとつである「建物」も、今在籍してくれているアシスタントさんたちがいれば表現可能じゃないかと、当時は安直に考えたのもありますが、今の自分にとってあらゆる意味で身近に感じる作品だったから、というのもあったかと思います。
担当編集さんは「打診してきます!」と持ち帰ってくださったのですが、正直、絶対断られる……というか、当然水面下で別のメディアミックス企画が進んでいるだろうと思っていたので、打診中も他のアイデアを考えたりして、期待しないようにしていたんですが、まさかの快諾!? 本当にまさかまさかのコミカライズ企画が始動することになりました。
――「営繕かるかや怪異譚」を初めて読んだときの感想を教えてください。
加藤:最初に読んだときの感想は、懐かしさと、雨が晴れるような爽快感や、どこか切ない感覚かもしれません。日本人なら誰でも一度は身に覚えのある「家の中の怖いもの」。そこに住む人々。その解決策。解決してくれる人。それらが絶妙な曖昧さで描かれますが、曖昧さが温かくも冷静な落としどころで―。読み終えたときに、言葉にできないさまざまな切ない気持ちになりました。うまく説明できず、すみません。つまり面白い!! って思いました! あとは単行本のデザインや装画の素晴らしさ……漆原友紀先生が担当されているの……最高に解釈一致!! とか、でしょうか。
物語の九割は怪談で、残りの一割で、尾端が現れサッと救われる基本構成も、癖になってもっと読みたくなってしまいます。
――「かるかや」シリーズの収録作で、特に印象に残った作品は?
加藤:どの作品も好きなので、印象に残っている作品を絞るのは難しいですが、一巻からは「異形のひと」。ジェネレーションギャップやカルチャーギャップが埋まってゆき、異なる者が互いに理解しようと努力するタイプのドラマが、個人的に一番涙腺にきてしまうからです。異物を排除せず、寄り添っていくことは、シリーズ全体に通ずるテーマのように感じて特別印象深いです。この話での尾端の関わり方も、かなりお洒落で堪りません。
二巻からは「芙蓉忌」。読み終わりの切実さといい、エロさといい、シリーズの中でも特殊な話だと思います。貴樹がこの先どうなるのか、バッドエンドの雰囲気が濃いのも印象的。怪異のシーンを漫画で描くとなると、かなり難しくなりそうだ……、という意味でも。これも、尾端は貴樹の記憶の一部にしか出てこなくて、お洒落すぎます。
――普段はどのようなジャンルの小説やエンタメを楽しまれるのでしょうか。
加藤:大変恥ずかしいのですが、小説や文字の読み物は年に一~五冊読むくらいです。ここ二、三年で読んだ小説は、やはり怪談やオカルト系が多いです。それこそ「営繕かるかや怪異譚」以外だと、『恐い間取り』1、2巻や『オカルト・クロニクル』、そして怪談師さんの著作物。あとは『遠野物語』や『新耳袋』を少しずつ読んでいます。オカルトじゃない作品だと『モモ』と「十二国記」の『白銀の墟 玄の月』ですかね。
こうあげてみると、ジャンルの偏りが怖いので、もっと別のジャンルの小説を読みたいです。基本的には映画と映画館が大好きなので、映像作品を観ることが多いです。もちろんホラーも観ますが、ジャンル問わずなんでも観ています。特にMCU(マーベル)、「スター・ウォーズ」シリーズ、「ハリー・ポッター」シリーズなどを中心に追っかけています。直近だと、『アバター』の続編の特報があったので、公開が楽しみです。
――家屋などの建築物を描くにあたって、入念な下調べをして図面を作成したと伺いました。
加藤:入念な下調べかというとわからないのですが、まず、コミカライズが決まった時点で、私自身の家を建てた時に図面を描いてくださった建築士さんに、仕事の内容を説明して、間取りを描いてもらえないかお願いしました。メールを送った翌日には小説を読んでいただき、楽しんで間取りを描いてきてくださったので本当にありがたかったです。
小野先生にも間取りを確認していただけたので、自信を持って背景の作画に挑むことができました。私は特になにもしていません。
あとは、大分の中津と杵築、京都市中や七宝教室に取材に行ったり、軽自動車をレンタルして昼と夜あらゆる角度から写真を撮りまくったり……事前準備といえばそれくらいで、基本的には、すべて小野先生の小説の中に、必要となる情報や名称が書いてありましたので、その都度、ネットや書籍で調べものをして描いていきました。
――主人公・尾端のキャラクター造形は、どのようにして出来上がったのでしょうか。
加藤:漆原友紀先生が小説の装画で尾端を描かれているので、最初はそれに寄せてデザインしていくか、コミカライズ版としての違いを出すかで悩みました。漆原先生に似せたパターンも描いて、周りの人にも見てもらったのですが、似せたところで私が描けばただの劣化版になってしまいますし、そもそも漆原先生も、敢えてどうとでも取れるように描かれているな、と感じたので、最終的に尾端のデザインは小説のイメージとは大きく外していこうと決めました。尾端の情報はとにかく少ないですが、小説から読み取れる情報から想像できる、派手さの許容範囲ギリギリあたりを攻めたデザインにしたつもりです。
――漫画ならではの恐怖描写も非常にぞくぞくしました。恐怖を演出する際に心がけていることがございましたら教えてください。
加藤:そう言っていただけるとありがたいのですが、正直、ホラー作家ではないので心がけていることはなくて、今回初めて挑戦してみた一年生、という感じでした。
ただ、観て(読んで)楽しんでいるのと、描くのとでは全くの別物でしたね。毎話毎話が挑戦で、とても難しかったです。正直、手ごたえも分からずじまいでしたので、「ぞくぞくしました」と仰っていただけると心底安心します。
――コミカライズするうえで難しかったことや、もしくは楽しかったことは?
加藤:難しかったことは漫画化していく過程で、小説に向き合うほど、小説を「くっきりはっきり」させてしまうことが、「野暮なのでは?」と感じて若干葛藤が生まれてしまったことです。先も答えたとおり「かるかや」は、登場人物の感情や尾端が処方する場面のほかは、漆原先生の装画のように水彩が美しく曖昧に滲み、白黒明確に描かれないことが大きな魅力のひとつです。ですから明確化する=コミカライズする意味を見失いかけたんですが、コミカライズがどうあれ、小説が至高である事実は変わりませんし、逆に明確化することがコミカライズの意味なのかも……と、徐々に腑に落ちていきました。腑に落ちてみれば、なんてことない事実でしたが、個人的には必要な葛藤だったかと思います。
あとはシンプルに、一話読み切りにこだわったせいで、実際に割きたいページ数と毎月自分が描けるページ数が折り合わずに妥協点を模索したことや、もの凄い背景量でアシスタントさんを通常作業の三、四倍くらい働かせてしまうので、そのスケジュール管理などが物理的に難しかったです。
楽しかったことは、小野先生の小説をコミカライズできる! ということそれ自体です。人生に何度もできることではないと思いますし、大変だったことも、終わってみるとすべてがエキサイティングで楽しかったと思えています。
――最後に、実際に加藤さんの家で作品のような出来事が起きたら……、どうなさいますか?
加藤:私は霊感などなく、多分一度も(霊的なものを)見たことはないので、超常現象に対しては懐疑的で、もし事実なら検証したい派です。なので、もし作品のようなことに巻き込まれたら、チャンスともいえます。一人で見るなら、やはり一旦自分の精神面を心配して病院に行くと思いますが、その心配はないのに見るなら、状況を整理し、証拠を集めてみんなで共有したいです。
もしも他の人も一緒に見ていたなら、全員が精神不安定とは考えにくいので、より存在の確実性が増しますし、定期的に現れるものだったら、「ゴーストハント」のナルのように検証して何故、どうやって現れるのかルールを解明したい!
どうして出てくるのか、しくみが知りたくなってしまうところが、つくづく野暮でつまらない性格をしているなぁと思ってしまいます。何にしても、現実問題、生死の危険があるなら、お祓いを頼るか、引っ越すしかないかも。
でも、尾端ならこんな時どうするか考えてみるのもいいかもしれません。
加藤和恵さんから小野不由美さんへ
加藤:「営繕かるかや怪異譚」を書かれる過程や、きっかけ、裏話などなんでも、執筆にまつわるお話が伺えたら嬉しいです!
小野:連載で新しくシリーズものを、という話になったとき、怪異があってそれを退治する話は「ゴーストハント」でやっているので避けよう、と。べつに退治する必要もないか、と思ったのは、欧米で「ウチには何世紀の幽霊が出るのよ」と自慢する例を目にすることがあるからです。かつて死んだ人がいてその霊が今もいて―それを歴史の一部だと捉えて誇りにするってなんかいいよな、と常々感じていたんです。そこを軸にあれこれ考えていたら、現在のような形になりました。
加藤:漫画家としての私は「愚問だからやめろ」と言っているのですが、「営繕かるかや怪異譚」のオタクとしての私が抑えきれず、質問させていただきます……! 今後、尾端、隈田、堂原、秦といった主要キャラクターを掘り下げたエピソードを書かれる予定がありますでしょうか?
小野:すっと現れてすっと消えていく有り様が気に入っているので、今のところはない予定です。でも、先のことは分からないですね。何か思いついてしまったら、書かずにおれないかも。
加藤:「かるかや」は調べるとイネ科の植物や、人物の名前が出てくるのですが、尾端が屋号にしたことにどんな意味がありますか?
小野:アイディアを練っていたときには、いろいろ考えていたように思うのですが、練り込んでいく過程でそのへんはすべて削ぎ落とされて、結局名前だけが残ってしまいました。
加藤:小野先生は普段どのようなエンタメを楽しまれていますか?
小野:最近は動画を見ることが圧倒的に多くなった気がします。ゲームの実況動画、怪談心霊系、あとは動物系と、ものを作る系の動画が好きです。そして普通に小説と映画でしょうか。小説は主にミステリで、映画は主にホラーです。
加藤:ネットで、小野先生は『PUI PUI モルカー』がお好きなのでは、との情報を得ました。小野先生の一番の推し「ぷいぷい」はなんですか? ちなみに私は「ゾンビシロモ」が好きです!
小野:妙なことが知れ渡ってしまってお恥ずかしい限りです。でも、「モルカー」は可愛いです。どの子も甲乙付けがたく可愛いのですが、強いてあげるなら「アビー」でしょうか。とにかく健気で愛しいです。
加藤:今回質問されて、私は小説をほとんど読まない上にジャンルの偏りが酷いのが、なんだか嫌になってしまったのですが、小野先生がお薦めになる小説などあればぜひお聞きしたいです。
小野:わたしもいろいろ偏っていますが、そこは拘りってことで。怪談がお好きなら、山田風太郎はいかがでしょう。特に明治小説――『警視庁草紙』や『幻燈辻馬車』は、お薦めです。
加藤:コロナ禍を経て創作に変化、影響を感じたことはありますでしょうか。私も最近よく聞かれる質問で、私自身は、作品自体のストーリーが佳境ということや、漫画家という仕事の性質的に、今のところはまだ大きな変化を感じていないのですが……、コロナ前は喫茶店などに出かけてネームを描いていたのが、なくなったくらいです。
小野:わたしも、まったく変化がありませんでした。もともと引き籠もりというか、家が大好きで外に出たくない病の人間なので。
加藤:私も聞かれた質問ですが、小野先生の家でも「かるかや」シリーズのような怪異が起こったら、どうされますか?
小野:どうするんでしょう。実害がなければ、めっちゃ観察するんだと思います。詳細な観察日記を付けたり検証記録を付けたりするのは楽しそうです。実害があると困りますが、きっと「困ったなあ」と思って見守るだけで終わるかと。ほとほと困ったら大学時代(仏教系大学)のコネを総動員して誰かなんとかして、とお願いするかもしれません。
加藤:妙な質問もあったかと思いますが、丁寧に答えていただきありがとうございました! 「かるかや」をとても日本的なホラー作品だと思っていたのですが、着想が欧米の価値観などからだったのが意外でした! そのほかの回答も、少し小野先生を身近に感じられて、嬉しかったです。お薦めいただいた山田風太郎先生の作品、さっそく買いました。合間を見つけて読んでいこうと思います。楽しみです……!
小野不由美さんから加藤和恵さんへ
小野:『青の祓魔師』で最初に目を引かれたのは悪魔のデザインでした。既存のイメージとはちょっとテイストが違っていて新鮮で恰好良かった。デザインするに際して意識していることや参考にしているものがありますか?
デザインといえば、建物やコスチュームもすごく恰好いい。特にしえみちゃんの着物が、めっちゃお洒落で好きです。拘っているところなどあれば教えてください。
さらに、最初にハマったのがメフィストでした。コスチュームといい性格といい、ぶっとんでいるのに世界観にピタリと収まっている。というより、世界観を支えている感があるのですが、あのキャラクターの発想はどこから出てきたんでしょう?
加藤:『青エク』についてたくさんご質問いただいて、ありがとうございます! でも「かるかや」の企画ですし……大変恐縮ですので、なるべく簡潔に答えさせていただこうかと思います。
デザインなど……褒めていただきありがたいです。悪魔、建物、キャラクターのコスチュームは、あまり捻ったことはせず、世界観に沿いつつ王道な(古典的な?)デザインにしたつもりです。しえみの着物も、古典的かつ現代的で、ややゴシックロマンな着こなし、というような感じです。
メフィストもバランスは違えど、そのつもりです。キャラクター自体の発想は、ゲーテの『ファウスト』を読んで、面白いキャラクターなのに、意外と漫画で使われていなくて勿体ないなと思っていたことからです。
小野:『青エク』に対して、コミック『営繕かるかや怪異譚』はずいぶんテイストも違うし、話のテンポ感も違います。描いておられて違和感みたいなものはなかったのでしょうか。
加藤:『青エク』と『かるかや』での違いが、少しは出せていたなら、とても嬉しいです……! 『かるかや』では、青年誌感強めにネームを切ったつもりです。もともと青年誌的なコマ割りや間合いが好きなので、違和感はなかったです。背景量が三倍くらい違うのが、物理的に大変でした。あと、もう少し画面に曖昧さが出せればよかったかな、とは思っています。
小野:いよいよ『青エク』の連載が再開されました。きっとあちこちで訊かれてゲンナリしていると思いますし、凡庸な質問で恐縮なのですが、今後の意気込みというか佳境に入った心境をお聞かせいただけると嬉しいです。
加藤:『青エク』の再開についてお尋ねいただいてありがとうございます……!! 大きな物語が進む展開になるので、キャラクターが好きな読者さんの興味が離れてしまわないか心配ですが、必要な展開なので、耐え忍ぶ覚悟をしなければ……! と思っています。
加藤和恵さんから小野不由美さんへ
加藤:「かるかや」シリーズは、怪異のアイデアと登場人物たちの心の物語の絡み方が最高で、「今回はそう来たか~!」と毎話毎話唸っているのですが、アイデアのネタ切れなど、されないのかなと思いました。ネタのストックなどしていますか? それともその場で考えていらっしゃるのでしょうか?
小野:ネタというほどではありませんが、「かるかや」で使えそうなものはメモするようにしています。メモからネタに持っていくのは毎回毎回、唸りながら考えています。自分で始めたこととはいえ、いろいろと縛りが多くて四苦八苦です。だんだんパターンも尽きてきた気がするのですが、「これはやった」と「これもやった」の間に隙間を探すのがちょっと楽しかったりします。
加藤:もしも家で怪異が起こったら~の質問で、小野先生の「観察日記をつける」は、和みました! 幽霊がいると仮定して、小野先生はどういう存在だと思いますか? 怪しい質問ですみません。私は、幽霊は霊魂ではなくて、人間のイメージやパッションが具現化しているんじゃないかと睨んでいますが、それだと説明できない部分もあるので悩ましいです。
小野:どうなんでしょうねえ。いろんな話を聞く限り、幽霊は「いる」のではなく、「見る」ものなんじゃないかと思ったりもします。その場に残されたシミのような何かを観察者が感じ取って幽霊という形で見てるのかな、と。でも本当は幽霊にいてほしい。死んでしまった人たちにまた会える可能性がある、ということなので。
加藤:最後に、これからの「かるかや」でなにか思いつくことがあれば、なんでもお聞きしたいです!
小野:これまで通りに淡々と重ねていきたいと思ってます。これはそういうシリーズだと、自分では思っているので。
お忙しい中、たくさんの質問、丁寧なお答えをありがとうございました(本当は、もっとがっつり『青エク』についてお聞きしたかった……)。自分の書いたものが素敵な漫画になっているのを見るのは、本当に幸せな体験です。堪能しました。ありがとうございました。今後は「続きを待ってるひと、ごめんなさい」という罪悪感なしに『青エク』の先行きをわくわくしながら見守りたいと思います!
作品紹介
書 名:営繕かるかや怪異譚(集英社)
原 作:小野不由美
漫 画:加藤和恵
発売日:2022年11月4日
小野不由美原作の大人気小説を『青の祓魔師』の加藤和恵が漫画化! 住居に纏わる怪異を営繕屋・尾端がいとも鮮やかに解決に導く。怖く、そして優しい至極のホラー短編を全六話収録!(集英社オフィシャルサイトより引用)
詳細:https://jumpsq.shueisha.co.jp/rensai/karukaya/
書 名:営繕かるかや怪異譚
著 者:小野 不由美
発売日:2018年06月15日
雨の日に鈴の音が鳴れば、それは怪異の始まり。極上のエンターテインメント
叔母から受け継いだ町屋に一人暮らす祥子。まったく使わない奥座敷の襖が、何度閉めても開いている。
(「奥庭より」)
古色蒼然とした武家屋敷。同居する母親は言った。「屋根裏に誰かいるのよ」(「屋根裏に」)
ある雨の日、鈴の音とともに袋小路に佇んでいたのは、黒い和服の女。 あれも、いない人?(「雨の鈴」)
田舎町の古い家に引っ越した真菜香は、見知らぬ老人が家の中のそこここにいるのを見掛けるようになった。
(「異形のひと」)
ほか、「潮満ちの井戸」「檻の外」。人気絶頂の著者が、最も思い入れあるテーマに存分に腕をふるった、極上のエンターテインメント小説。
宮部みゆき氏、道尾秀介氏、中村義洋氏絶賛の、涙と恐怖と感動の、極上のエンタ-テインメント。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/321705000334/
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書 名:営繕かるかや怪異譚 その弐
著 者:小野 不由美
発売日:2022年06月10日
営繕屋は 死者の声を聴き、修繕する。 人々の繋がる思いに涙する魂の物語
両親と弟が鬼籍に入り、かつて花街だったという古い町並みにある町屋の実家に戻ってきた貴樹。貴樹が書斎として定めた部屋はかつて弟が使っていた部屋だった。何気なく、書棚に立てかけられた鏡をずらしてみると、柱と壁に深い隙間があった。そしてその向こうに芸妓のような三味線を抱えて座るはかなげな着物姿の人影が見えた。その女と弟の死には関係があるかもしれないと探すうちに、貴樹がその女を見ずにはいられなくなり――。(「芙蓉忌」より)
他、「関守」「まつとし聞かば」「魂やどりて」「水の声」「まさくに」の全6篇を収録。
解説は織守きょうや氏。 2019年、第10回 山田風太郎賞最終候補作。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322112000459/
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「参」も好評発売中!
書 名:営繕かるかや怪異譚 その参
著 者:小野 不由美
発売日:2025年06月17日
建物で起こる怪異を解くため、営繕屋は死者に思いを巡らせる。
怖ろしくも美しい。哀しくも愛おしい――。これぞ怪談文芸の最高峰!シリーズ第3弾。建物にまつわる怪現象を解決するため、営繕屋・尾端は死者に想いを巡らせ、家屋に宿る気持ちを鮮やかに掬いあげる。
恐怖と郷愁を精緻に描いた至極のエンターテインメント。全6編収録。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322411000550/
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単行本「営繕かるかや怪異譚 肆」発売予定!
書 名:営繕かるかや怪異譚 その肆
著 者:小野 不由美
発売日:2025年06月26日
家の怪異、修繕します――。戦慄と感動の建築エンターテインメント!
「家に興味がない、ということは、自分を守ってくれる場所に興味がない、必要ない、ということと同義です」
建物にまつわる超自然的な現象を解決するため、営繕屋・尾端は死者に想いを巡らせ、彼らを鎮めるための方法を導き出す。
恐怖と郷愁を精緻に描く、建築怪談シリーズ第4弾!
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322208001005/
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シリーズ特設サイトはこちら
https://kadobun.jp/special/ono-fuyumi/karukaya/