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特集

【公開!誕生秘話】 友人たちの手によって世に出た「奇跡」の本! 『ファントム・ピークス』【2024年3月】

宮部みゆき氏がイチ推し! 徹夜本必至!

ファントム・ピークス』あなたはもう読みましたか?
長野県安曇野。半年前に失踪した妻の頭蓋骨が見つかり遭難死とされるが、三井周平は用心深かった妻が山で遭難したことをいぶかる。その後、同じような女性の失踪事件が次々と発生。周平は研究者の山口凜子と謎の解明に乗り出すが、やがて「それ」の正体が明らかになって。ミステリー? パニック? ホラー? ジェットコースターのような驚愕の展開!



累計25万部を超え、今も売れ続ける大ヒット作品。
しかし、本書が世に出るには「奇跡」の経緯があったのです。
それがどのような奇跡だったのか、ファントム・ピークスの霧の向こうに消えてしまう前に、ぜひ皆さんにお伝えしたいと思います!

本来ならば、世に出ていなかった「奇跡」の本――『ファントム・ピークス』誕生秘話(担当編集O)

『ファントム・ピークス』は『幻の山』というタイトルで、2005年第12回松本清張賞の最終選考に残った作品でした。しかし落選。本来なら(旧)角川書店で改題して出すのはありえない話でした……。
※松本清張賞は「公益財団法人 日本文学振興会」が主催し、文藝春秋が運営する文学賞

突然の著者の死。残された原稿。友人たちの思い。

選考後、次回作を期待されていた著者の北林一光さんでしたが、進行性のがんが見つかり翌2006年45歳の若さで亡くなってしまいます。
著者は映画宣伝会社のプロデューサーとして、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の立ち上げに参画するなど活躍されていました。映画関係者に知り合いも多く、その中でこの原稿を読んでいた数人の友人が「これがこのまま消えてしまうのは惜しい。何とか世に出したい」と動き出します。
それほど、この作品には人を動かすものがあったということです。

「角川で出せないか?」

ちょうど私の担当作品の映画化が進んでおり、仕事で一緒だった(旧)角川映画のOさんとAさんからある日、相談を持ち掛けられます。彼らはその「数人の友人」の中の二人だったのです。
「うち(角川)で出せないかな」と渡されたワープロの古い原稿の束。副編集長だったNさんと一緒に、期待せずに読み始めたら一気読みする面白さ! そして、私たちも彼らと同じような気持ちになったのです。「何とかして本にしたい」

企画通過には難しい条件ばかり。「どうやって会議に通そう」

書籍として出すためには企画会議を通過させる必要があります。当然ながら書籍は商品なので、ある程度の利益が見込める付加価値が必要です。が、この本は

1「著者が亡くなっている」……原稿の加筆、修正、校正をしてもらえない。続編、次作が出ない
2「プロの作品ではない(無名である)」……作家の名前で内容を説明、保証ができない
3「落選作(しかも他社)である」……賞の知名度を利用できない

「ちょっと読んでみてください、話はそれから」

Nさんと企画を通すために戦略を考えました。決裁者の部長を味方につけよう、それには企画提案や著者情報は内緒にして「ちょっと読んでみてください」と軽く渡そう。ミステリー好きの部長のことだから、読んでもらいさえすればきっと気に入ってもらえるはず。そう信じていました。

「面白かったよ、少し粗削りなところがあるけど。映画か何かの原作?」
そこで、畳みかけるように説明。
著者が亡くなっているため次作は出ない。しかし、ドラマやゲームのノベライズは企画ものとして単発企画もあり、同じように考えれば問題ない。内容は抜群に面白い。本作りを間違えなければきっと売れる。ここまでの完成度なのでやってみる価値がある、等々。

作戦成功! 企画は通過。さて、本作りは……。

まずタイトルを変えたいと思いました。「『幻の山』は地味でジャンルをつかみにくい。英訳してみると雰囲気があるし悪くないかも」
著作権継承者のご親族に伺ってみると「海外小説みたいでカッコイイですね」と賛成してくださいました。

松本清張賞で選考委員の宮部みゆきさんがこの作品を強く推されていたのを知り、宮部さんの選評から抜粋し推薦コメントにさせていただくことを思いつきます。清張賞運営の文藝春秋や宮部さんにご説明し快諾をいただきました。
無名の著者にとって、これは大きかった!(宮部さんには、現在に至るまで本書を推していただき本当に感謝しております)
そして、宮部さんの帯に一番合うのは、やはり藤田新策さんの画。デザインは当時角川書店装丁室にいた高柳雅人さん。出来上がった装丁はスティーブン・キングもかくや、と思わせる素晴らしいものでした。



営業からも大きな応援! そして部数が爆上がりに!

単行本では3刷りまでいき、文庫では作品にほれ込んでくれた営業のTさんやKさんがポップや幅広帯(カバーとほぼ同サイズの帯)の仕掛け販売を組んでくれて、多くの読者の目に留まるように。部数をどんどん売り伸ばしていきました!


最初に書店に配られたPOP


幅広帯

刊行から17年。内容はまったく古びない。

あの時、あきらめなかった友人の皆さんや多くの方のご協力のおかげで、刊行から17年たった今も書店から消えることなく重版を重ねている『ファントム・ピークス』。
内容はまったく古びず、むしろ近年では本書で描かれる自然と人間の戦いがニュースになっている事実も。これを「奇跡」と言わずして何と言いましょう。

この展開に一番驚いているのは、長年担当でありながら一度もお会いしたことのない、亡くなった著者かもしれません。

これから読む人がうらやましい!

この「奇跡」の本をまだ読んでいないなんて、もったいない!
さっ、今からでもぜひ、この恐るべき作品を手に取ってください。
これからこの「驚き」を読めるなんて、うらやましいくらいですよ!

現在、営業Ⅰさん労作の新しい幅広帯で展開中です!



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