取材・文:葛山あかね
写真:佐山順丸
9月、江戸川区役所において「江戸川区角野栄子児童文学館」の愛称およびロゴマークの審査会が行われました。
審査員を務めたのは、
700件近い候補から選ばれた愛称は……!?
審査会はまず、愛称から始まりました。
区のホームページで愛称を公募したところ1ヶ月(6月1日〜30日)で、689件もの応募がありました。総数の多さからみても、児童文学館への注目が集まっていることが分かります。
頻出するワードには「館」や「文学館」といった場所を示すものから、角野栄子さんの代表作の一つ『魔女の宅急便』を連想させる「魔女」や「魔法」、主人公の名前「キキ」、そして児童文学館のイメージカラーである「いちご」などがありました。
「角野さんのご著書には、『魔女の宅急便』の他にも、『小さなおばけ』シリーズなどもありますから、そうした世界観を盛り込んだ名前がいいのでは」、「児童文学館のイメージカラーである“いちご”を名前にすると親しみやすい」、「やはり角野さんというと“魔女”や“キキ”といった言葉がキーワードになるのでは」など、審査員の間で活発な議論が交わされました。
角野さんからは「“いちご”は、文学館に入ったときにパッと広がるいちご色の世界に驚いてほしいので、愛称にはつけないほうがいいかもしれません。面白そうな感じがあるのは“魔法”かしら。でも『魔法の家』や『魔法の館』だとちょっと怖さも感じさせるので、(下に付くのは)家や館ではなく“文学館”が良いですね。どこかアカデミックな雰囲気もありますし」
「確かに、本には魔法のような魅力がある。それに、この児童文学館には何があるんだろう、とワクワクした気持ちで子どもたちに訪れてほしいです。そうした意味からも“魔法”と“文学館”を合わせて『魔法の文学館』がいいのではないでしょうか」と斉藤区長。
こうして最終的には『魔法の文学館』に愛称が決定しました!
さらに角野さんから「外国から来る方も多いと思うので、英語名もあったほうが分かりやすい」と、ご提案がありました。『魔女の宅急便』は14の言語に翻訳されており、角野さんの言葉通り、文学館は世界中から人が集まるグローバルな場になることが予想されます。そこで英語名は、海外にも通じやすいように『魔女の宅急便』の主人公名を冠することになり、『Kiki's Museum of Literature』に決まりました。
【愛称】魔法の文学館 Kiki's Museum of Literature
フラワールーフを連想させるロゴマーク!
ロゴマークは、文学館を設計した
児童文学館の建物を上から見たときのフラワールーフと、建物の周辺にツツジが鮮やかに咲き誇るイメージでデザインされています。
“読み聞かせ”から“読む”子どもへ
審査会の最後に、角野さんは児童文学館への思いを語りました。
「昨今は、電子書籍化も進んでいますけれど、文学館は紙の本にこだわった場所にしたいと思っています。本にはリズムがあります。子どもの体の動きと一体化して楽しめるような、本をめくるリズムが紙の本にはある。子どもたちには、自分なりのリズムをもって本を読んでほしいと思います。お父さんやお母さんが子どものために本を選んで、読み聞かせをしてあげるのもいいけれど、子どもたち自身が自分で読んでほしいですね。“読み聞かせ”を受ける子どもから、自分で“読む”子どもになってほしい。自分1人で1冊の本を読み切ることができるようになってもらいたいのです。
子どもたちが自分で本を選んで、自由にページをめくって読み、面白かったという気持ちをもって、家に帰ってほしい。本を読むことは『冒険』であり、それこそがこの“文学館”の“魔法”だと思っています。その橋渡しとなるおもしろい本を、この児童文学館にはたくさん集める予定ですよ」