先日の、第173回直木賞は残念ながら受賞作なし、となりましたね。もう各自勝手に好きな本を選ぼうぜ! という人あり、この機会に過去の受賞作を読み返そうというムーブあり、別の形でお祭りを楽しもうという機運が生まれていたり……前回『藍を継ぐ海』で受賞された伊与原新さんは、横溝正史ミステリ大賞(当時)からのデビュー。記者会見では、選考委員の綾辻行人さんに頂いた言葉に長年励まされてきたと仰っていました。
そう、世の中には直木賞だけではなく、さまざまな文学賞があり、日々新しい才能を世に送り出しているのです。負けないぞー(なぞの対抗心)! そんなわけで公募の新人賞から、エンタテイメント小説に贈られるトロフィー山田風太郎賞まで、KADOKAWA文芸ジャンルの誇る文学賞をご紹介します。
※本記事は2025年2月9日に「カドブン」note出張所に掲載した記事を再編集・再掲載したものです。
【新人賞】横溝正史ミステリ&ホラー大賞
概要
50余年にわたり推理・探偵小説を精力的に執筆し続け、また怪奇・ホラー小説にも親和性が高い横溝正史氏の名を冠し、エンタテインメント性にあふれた、新たなミステリ小説またはホラー小説を募集します。
正賞 金田一耕助像
副賞 賞金300万円
担当者コメント
ジャンルを代表する作品がすでに数多く存在し、にもかかわらず、毎年のように新たな傑作が誕生するミステリとホラー。2大ジャンルにまたがるこの新人賞の選考でいつも心が浮き立つのは、そんな一見満たされた世界においてもなお、「こんなホラーがまだあったのか」「こんなミステリがまだあったのか」「こんなホラーとミステリの掛け合わせがあり得たのか」という嬉しい驚きをくれる作品に、幾度となく出会っているからです。これからもそんな驚きを期待しながら、その期待を塗り替えるような勝負作をお待ちしています。
選考委員
綾辻行人、有栖川有栖、黒川博行、湊かなえ(敬称略・50音順)
近年の受賞作品と受賞者
2025年度
【大賞】【カクヨム賞】綿原 芹「うたかたの娘」
【優秀賞】該当作なし
【読者賞】雨宮 酔「夢に棲みつくもの」
(※大賞受賞作は2025年秋にKADOKAWAより単行本として刊行予定。読者賞受賞作は文庫本として刊行予定)
2024年度
【大賞】該当作なし
【優秀賞】浅野皓生『責任』
・インタビュー:https://note.com/kadobun_note/n/nbd1d310add74
・試し読み:https://note.com/kadobun_note/n/n0d1200b54fba
・作品情報まとめ:https://note.com/kadobun_note/n/n70bcaf6c4cf0
【読者賞】織部泰助『死に髪の棲む家』
・インタビュー:https://note.com/kadobun_note/n/n727129dc7170
・試し読み:https://note.com/kadobun_note/n/n730fe7bbf695
・作品情報まとめ:https://note.com/kadobun_note/n/nd9f7c3c6487d
【カクヨム賞】岩口 遼『神鳴り』
2023年度
【大賞】【読者賞】【カクヨム賞】北沢 陶『をんごく』
2022年度
【大賞】該当作なし
【優秀賞】鵺野莉紗『君の教室が永遠の眠りにつくまで』
【読者賞】荒川悠衛門『異形探偵メイとリズ 燃える影』
2021年度
【大賞】新名 智『虚魚』
【読者賞】秋津 朗『デジタルリセット』
2020年度
【大賞】原 浩『火喰鳥を、喰う』
【読者賞】阿泉来堂『ナキメサマ』
(作品名・ペンネームは書籍刊行時のものです)
第46回〈横溝正史ミステリ&ホラー大賞〉作品募集中!
締め切り:2025年9月30日(火)
応募要項:https://kadobun.jp/awards/yokomizo/
【新人賞】小説 野性時代 新人賞
概要
これまでにない新ジャンルのエンターテインメント作品を広く募集する〈小説 野性時代 新人賞〉。第11回募集時に〈野性時代フロンティア文学賞〉から改称し、新たなスタートを切りました。
本誌は1974年に創刊された伝統を踏まえ、文芸誌としての役割を果たすべく、才能の発掘に努めて参ります。読む者の心を揺さぶる、将来性豊かな、稀代のストーリーテラーの登場を期待しています!
正賞 記念品
副賞 賞金100万円
担当者コメント
小説 野性時代 新人賞は非常に間口の広い文学賞です。「面白ければ何でもあり」。ジャンルにとらわれない個性的な作品を求めています。近年の受賞者は蝉谷めぐ実さん、君嶋彼方さん、そして昨年の関かおるさんと、20~30代が続いている傾向にあり、それもひとつの特徴です。新鮮かつ挑戦的な書き手の登場を期待しています。
選考委員
冲方 丁、辻村深月、道尾秀介、森見登美彦(敬称略・50音順)
近年の大賞受賞作品と受賞者
2025年度
【受賞】木野寿彦「降りる人」
(※受賞作は2025年中にKADOKAWAより単行本として刊行予定)
2024年度
【受賞】諏訪宗篤『海賊忍者』
・試し読み:https://note.com/kadobun_note/n/n1720270f9131
・書評(評者:活字中毒さん):https://note.com/kadobun_note/n/n111665819886
【受賞】関かおる『みずもかえでも』
・試し読み:https://note.com/kadobun_note/n/na7a2c378c1e7
・書評(評者:吉田伸子さん):https://note.com/kadobun_note/n/n9d3dc3aff5fe
・書評(評者:藤田香織さん):https://note.com/kadobun_note/n/nb4bbe9946225
・書評(評者:吉田大助さん):https://note.com/kadobun_note/n/n0e61d1dfd920
2023年度
【受賞】該当作なし
2022年度
【受賞】該当作なし
2021年度
【受賞】君嶋彼方『君の顔では泣けない』
2020年度
【受賞】蝉谷めぐ実『化け者心中』
(作品名・ペンネームは書籍刊行時のものです)
第17回〈小説 野性時代 新人賞〉作品募集中!
締め切り:2025年8月29日(金)
応募要項:https://kadobun.jp/awards/yaseijidai/
【新人賞】角川文庫キャラクター小説大賞
概要
角川文庫キャラクター文芸編集部による新人賞です。
角川文庫キャラクター文芸は、一般文芸レーベル「角川文庫」の中で、魅力的なキャラクターが活躍するエンタメ小説を世に送り出してきました。
ミステリ、ファンタジー、ホラー、SF、あやかし、青春、恋愛、お仕事小説、感動の人間ドラマなど、あらゆるジャンルを横断する、優れたエンタテインメント作品の数々。
そこに共通するのは、魅力的なキャラクターと舞台設定です。
この物語の先で、このキャラクターに再会したい。
そんな風に思えるような作品に出会いたいと思っています。
そして、次代のエンタメを担うあなたに出会えることを期待しています!
大賞:100万円
優秀賞:30万円
奨励賞:20万円
読者賞:10万円
『カクヨム』テーマ賞:10万円(※『カクヨム』からの応募作品のみ)
担当者コメント
キャラクター小説とは?と聞かれたとき、いつも答えるのはただ一つ。「キャラクターが魅力的な小説です」ということです。友達になりたい、恋人や家族になってほしい。そんな身近に感じられるキャラから、この人(たち)を推してみたい、と思えるような「尊い」キャラまで。登場人物が生き生きと輝いている物語を読ませてください。あなたのご応募をお待ちしております!
選考委員
澤村御影、望月麻衣(敬称略・50音順)、角川文庫キャラクター文芸編集部
近年の大賞受賞作品と受賞者
2024年度
【大賞】神雛ジュン「斜陽国の奇皇后」
【優秀賞】【読者賞】真帆路祝「平安後宮の鬼食い姫―光の君と黒弾正」
【カクヨムテーマ賞】柊「妖血の禍祓士は皇帝陛下の毒婦となりて」
(※受賞作は2025年内に刊行予定)
2023年度
【大賞】該当作なし
【優秀賞】【読者賞】佐木真紘『銀の蝶は密命を抱く 翠国文官伝』
【カクヨムテーマ賞】深見アキ『古城ホテルの精霊師』
2022年度
【大賞】【読者賞】翁まひろ『菊乃、黄泉より参る! よみがえり少女と天下の降魔師』
【優秀賞】ヨシビロコウ『警視庁魔獣対策室 狼刑事と目覚めの賢者』
【奨励賞】紙屋ねこ『後宮の宵に月華は輝く 琥珀国墨夜伝』
2021年度
【大賞】該当作なし
【優秀賞】【読者賞】伊勢村朱音『姫君と侍女 明治東京なぞとき主従』
【奨励賞】有田くもい『あやし神解き縁起』
2020年度
【大賞】【読者賞】小野はるか『後宮の検屍女官』
【優秀賞】奥野じゅん『江戸落語奇譚 寄席と死神』
【奨励賞】春間タツキ『聖女ヴィクトリアの考察 アウレスタ神殿物語』
(作品名・ペンネームは書籍刊行時のものです)
第12回 角川文庫キャラクター小説大賞 作品募集中!
締め切り:2026年5月8日(金)23:59
応募要項:https://kadobun.jp/awards/character-novels/
【文学賞】山田風太郎賞
直木賞のように既刊の作品を顕彰する文学賞、実はたくさんあるのです。吉川英治文学賞、山本周五郎賞、大藪春彦賞……最近は地方文学賞や、書店チェーンや書店員さん個人が主催する文学賞も盛り上がっていますね。もちろんKADOKAWAにもあります。日本のエンタテインメントを代表する作家、山田風太郎氏の名前を冠した文学賞です。
山田風太郎ってどんな人?
風太郎の名前を知らなくても『甲賀忍法帖』に代表される忍法帖シリーズをご存じの方は多いのではないでしょうか。戦後日本のエンタテインメント小説の開祖のひとりにして唯一無二の輝きを放つ巨星です。伝奇アクションから歴史文学、本格ミステリまでジャンルの境界を軽々と乗り越え、ホラーやSFなど現代に通ずるエンタテインメントの手法もふんだんに盛り込みながら、ひたすら面白いために面白い、面白さの極地たる多彩な小説群を生み出しました。また、映像的な描写や、シニカルな人間観、根底に流れる独自のヒューマニズムも魅力で、小説家をはじめクリエーターにも多くの熱烈なファンを擁しています。
概要
戦後日本を代表する大衆小説作家、山田風太郎。本賞は氏の独創的な作品群と、その作家的姿勢への敬意を礎に、有望な作家の作品を発掘顕彰するために創設されたものです。ミステリ、時代、SFなどジャンルを問わず、対象期間に発表され、最も面白いと評価された作品に贈られます。
対象作品:毎年9月1日から翌年8月31日(奥付表記)までに刊行された日本の小説作品
※長編、短編集、連作短編集等、ジャンルは問いません
※刊行時の判型による除外作品はありません
※小説誌等の掲載段階では対象としません
正賞 記念品(名入り万年筆)
副賞 賞金100万円
公式サイト:https://kadobun.jp/awards/yamadafutaro/
担当者コメント
山田風太郎賞は、一年を通して刊行された小説作品の中で、最もエンタテインメント性にあふれ、とにかく「面白い」と評価される作品に贈られる賞です。この賞を受賞した作品を読めば、ジャンルを問わず間違いなく楽しい読書体験ができる。そう安心して読者に手に取ってもらえる賞が山田風太郎賞なのです! ぜひ本賞の受賞作にもご注目ください。
選考委員
朝井まかて、貴志祐介、桜木紫乃、馳星周(敬称略・五十音順)
※2025年より選考委員に桜木紫乃氏と馳星周氏が加わりました
近年の大賞受賞作品と受賞者
2024年度
蝉谷めぐ実『万両役者の扇』(新潮社)
2023年度
前川ほまれ『藍色時刻の君たちは』(東京創元社)
2022年度
小川 哲『地図と拳』(集英社)
2021年度
米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA)
2020年度
今村翔吾『じんかん』(講談社)
(本記事に掲載した内容は、2025年7月時点の情報です)