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特集

池澤春菜『最愛台湾ごはん』寄稿エッセイ【前編】

 好きだ好きだといっていたら、念願叶って台湾の本を出せることになった! ヤッホーと山に向かって叫んだら、山が振り返って投げキッスしてくれたような気持ち。
 でも、振り向いたついでに立ち上がった山は思いの外大きかった。

 今回のガイドブックは、たぶんいろいろと規格外。ガイドブックの規格がなんなのかわからないけど、だいたい雑誌の記事を纏めた感あるし、なんなら航空会社とかホテルとかの紹介ページがどどんとあって「はっは~ん、これがいわゆるタイアップ」としたり顔しちゃうし、あ~あの絶対入っている紙の地図をGoogleマップに移す作業めんどくさいんだよねぇ。
 なので。
 タイアップないです。
 全部、私が、40回を超える台湾旅行の中で、自分で調べて、自分でお金を払って、自分で行って、自分で食べたことだけ書きます。まぁ、それって平たく言うとただの旅行者なんですが。ライターでもブロガーでもボヘミアンでもノマドでもなく、単なるツーリストなんですが。でも、このツーリスト、かなり食べることには情熱を燃やしてますからね。美味しい食べ物のためならどこでも行きます。はき慣れた靴で行ったはずが足が辛い、何でだ、と思ったら1日4万歩歩いていた、とかザラですから。観光なんてしょせんお腹を空かせるために挟むアクティビティ!! 旅行、すなわち食!!

 紙の地図もやめました。
 代わりに、Googleマップに飛べるようにします。私のピンクッションみたいになった台湾マップがいまこそ日の目を見るとき(実際には、びっしりピンで埋め尽くされた目眩がするマップではなく、本に載っているお店のみ選別した使いやすいマップを公開するのでご安心を)。

 NO ライター。
 NO タイアップ。
 NO 紙の地図。
 YES 絶対役にたつガイドブック。

 コーディネーターさんがいないのも規格外かもしれない。飛行機のチケット、新幹線のチケット、お宿、取材先を回るルート、全部自分がいつもやっているように取りました(台南のホテルだけ編集さんにお願いした)。とはいえ、中国語ができない私の代わりに、ありがたい助っ人はお願いした。私の【台湾いつか役立つかもしれないリスト】の中から満を持して取り出したカード、台湾の日本語を学ぶ学生さんによる、ボランティアガイド!! これはね、いつか私が一人台湾で胃袋が足りなくなったときに召喚しようと思っていた、究極のカードなのです。鶏丸ごと食べたいけれど多勢に無勢、ってな時に「出でよ、即席お友達!!」と場にびたーんと叩きつける用。
 事前事後に交渉ごとをしていただくメール秘書のような方も確保。
 よし、後はお店選びだ。ここは絶対、こっちも美味しい、これは外せない、ってやってたらね……100店越えました。あれ、何ページの本だっけ……
 ここからどう絞り込むか。もう1度味の確認をしたいお店もある。気になってる新規開拓したいお店もある。

 やはり。
 行くしかない!!
 取材2週間前にプレ取材に行ってきます、と告げたときの編集さんの絶句っぷり。でも、ほら、こんな風に思い立ったらさっと行ける近さも台湾の魅力だから。
 4泊5日、みっちりしっかり取材してきましたよ。機械翻訳につっこんだ掲載許可証に行く先々でサインして貰って。いや、正直に言うと、ほぼ自分で書いた。どうやらこの翻訳、全く中国語として意味をなしていなかったらしく……仕方ないので自分で書き込んで「OK? じゃ、ここサインお願い」って。名前さえ書いてもらったらこっちのもんだ、って。シャイロックばりにサインをもぎ取ってきました。どうか、訴えられませんように。
 意気揚々と帰国して、改めてお店リストを作成。その数70。あれ、おっかし~な、たいして減ってない……
 取材日程は8日間。台北だけではなく、地方にも行かないといけない。となると、ここをこうして、こっちを回って、あぁだめだこれだとこのお店が定休日だ、だったらこの日にずらして、そうするとルートが大回りになるなぁ……なんだ、この全ピースが自由すぎるジグソーパズルみたいなスケジューリング!? 頭から白煙上げつつ、何度も何度もやり直して、気がつけば、1日に21軒とか回る超過密日程に。
 ……軽く死人が出るやつでは?
 これ、たぶんちゃんとしたコーディネーターさんが提出したら、事務所から「うちのタレント殺す気か」と首になるね……でも本人発信なので恐ろしいことに誰も文句を言わないまま、採用されちゃったのです。最初に見たとき、カメラマンさん、眼が泳いだと思う……
 この時点でもう不安しかない。
 ぜったい何か忘れてる。
 見落としてること、ある。
 なんだったら一人くらい、台湾の地に消ゆ、みたいな惨劇が起こるかもしれない。
 夜中にがばっと起きては「定休日!!」やら「移転?!」やら何回か叫んだ。
 それでもね、出発の日は来ちゃうわけです。その頃にはもう目も座って「そういう運命だったんだ」と呟くくらいには落ち着きましたけどね。

 さぁ、いよいよ台湾に出発!!
 大変だ、2回連載なのに、1回目でまだ旅立ててもいない!!

 撮影:伊東 武志


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