『舞台男子 the real』発売記念写真展が開催されたHMV&BOOKS SHIBUYA にて、5月7日、書籍に登場した富田翔を招き、トークイベントが行われた。
聞き手を務めたのは『舞台男子』シリーズを手がけるライターのおーちようこ。「公開インタビュー」として行われた、本イベントをまるごとお届けする。
>>杉江大志さん公開インタビューの模様はこちら
今、在る場所を自覚してより高く、より遠くへ
──富田翔さんにご登場いただきます。
富田:こんばんは、富田翔です。雨の中、お越しいただきありがとうございます。短い時間ですが、どうぞよろしくお願いします。ところで、この(衣裳の)シャツの中、裸だと思うでしょ……でも、ちがうんです。インナーを着てるんです! まずはそこをお詫びして、最初にお伝えする次第です(笑)。
──他にご報告することはございますか?(笑)
富田:ありません!
──『舞台男子』には俳優デビュー15周年目、という節目の年にご登場いただきました。こうして書籍の形になっていかがでしょうか。
富田:インタビューのときも感じていましたが、2時間、3時間かけて取材を受ける、話をするという機会はなかなかないので、話しながらいろいろなことを再確認できた時間でした。
──驚いたのは、ご自身がこの仕事を辞めようとまで覚悟していた時期のお話をしていただけたことです。こんなことを聞いてしまっていいのか……と。
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富田:僕もまさか、そこまで自分が話してしまって、まるごと掲載されるとは思っていませんでした(笑)。だって、とてもデリケートな内容だから。でも、だからこそ、そこを変にオブラートに包んだりせずに、ありのまま記事にしていただけたことはうれしかったですね。
──それを良しとしていただいた事務所のご判断にも感謝しています。そのなかでも、ご自身にとって大きな節目となったシリーズの最終作、舞台『炎の蜃気楼昭和編 散華行ブルース』が発表になりました。これは2014年から続いた作品で、シリーズ通して、ひとりの俳優に主演をまっとうしていただけることはすごいことで、観客にとっても幸せなことです。
富田:4年間続く、ということは奇跡のようなことだと思うんです。立ち上げの時点で続編があるかどうかもわからないですし、僕自身もなにがあるかわからないから。でも、こうして最終作を迎えられることはやっぱり観ていてくださる方々をはじめ、続けようと努力してくれたプロデューサーやたくさんの方々のおかげです。だからこそ全力で挑みますが……でも、実はこの作品には、役としてぎりぎりまで入らないようにしています。入っちゃうと引っ張られてしまう役で、それだけ深く入り込んでしまうので。ただ、今回、シリーズ最後の作品で初めて参加してくださる方々もいて、それってやっぱり大変だと思うんです。すでに在るカンパニーに入るって。だから、新たな方々とともに大切に創り上げたいです。
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──4年間のなかで、著者の桑原水菜さんによるオリジナルの書き下ろし脚本も上演され、ある意味、昭和編の作品世界の一端を創り上げた存在でもあります。
富田:初演はどう受け入れていただけるのかわからないところで、でも作品の重みを感じながら手探りで演じていました。そこで、ひとつ、創り上げることができたという実感を得てからは、次はより高みを、と志していきました。そのなかで、だんだんと昭和編に関しては、背負っている、という覚悟が生まれ、自覚に変わりました。今にして思えば大変なこともあったなと思うし、苦労もしてきました。……ただ、これはいつも言っていることでもありますが、カーテンコールで客席の皆さんの顔を見ると、一瞬、全部、吹っ飛ぶんですよね。これは、どの作品も同じで、その繰り返しです。同時に観てくださった方々、観ることはできなかったけど思いを寄せてくださっている方々の声もたくさんいただくので、それらを受け取ることで、ああ、また演ろうと思えるんです。
──年齢的にも立場的にも座組をけん引する立場にあることが多いのではないかと思いますが、後進を育てるといったことにも心を砕いている印象があります。
富田:出し惜しみをしたくないんですよね。僕が20代で映像の仕事をしていたときにやっぱり先輩たちが全部を見せて教えてくれたから、僕も同じように全部、見せたい。そのうえで、そっくり真似をしたとしてもその人なりの個性が出ると思うし、別に取り入れなくてもいい。押し付けたくはないし、受け止め方は自由だと思うので。だから伝えられるものがある限りは全部、見せます。
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──そこで印象的だったのは、舞台「ラズベリーボーイ」というシリーズです。この作品は演劇的要素が大きくて、いろいろな試みがおもしろかったのですが、その真ん中に居たのが富田さん演じる役でした。
富田:説明すると、この作品は僕がちょっと特殊な役で、僕の存在に対して声だけ聞こえる人や、全然、気付かない人がいて、そのリアクションやズレの差をどう見せようか? と考えました。もともと「ラズベリーガール」という作品があって、その男子版ということで、俺らが演るからにはよりおもしろくしてやろう、という思いがあって。そこから、僕の存在の設定を限定することで、どこまではみ出すことができるのか、悪ふざけできるのか、ということをみんなで話し合って創り上げた作品です。
──そのことが「演劇を創る」楽しさだったと思います。記事でも話していましたが、キャストにミュージカル『テニスの王子様』を経て初のストレートプレイに挑戦する若手俳優が多いなか、たぶん初めて経験されたであろう演劇的表現が詰まっていました。同時に、観客にとっても初めて触れる、演劇的おもしろさみたいな要素がちりばめられていて。
富田:確かにある瞬間、僕の存在の意味がわかると見方がガラリと変わる、とか小劇場的要素がたくさん詰まっていたと思います。それは、演出家の方も僕も目指していたところで、もちろんミュージカル『テニスの王子様』を観て足を運んでくれた方にも、演劇好きな方にも楽しんでもらえるような舞台を創ろうよ、とは思っていました。
──その志が届いたから、シリーズが続いたのだと感じます。この作品もですが、他の作品でも富田さんはそういった渦の真ん中にいるというか、働きかけて芽吹くことに尽力している印象があります。
富田:ああー……、それは、舞台はたったひとりの力で変えることができるからです。たとえば、ひとり影響力がある人がサボりがちだと全体がそっちにひっぱられちゃうんですよね。でも、ひとり、実直に稽古するやつがいたら、その空気が伝わる。そういう風に影響し合うのが稽古の場所だと思っていて、それらを積み重ねて全員で本番に向かう、ということがとても好きなんです。全員に役割があると思っていて、引っ張るやつ、支えるやつがいて。そのなかで、大変だけどちょっと無理してがんばってやっていくと、いつしかそれが自分のベースになって、ひとつ高みに行ける。そういうことの繰り返しで、ちょっと辛くても続ける、そうしてみんなで本番を迎える、というのが気持ちいいんです。
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──なかでも、すてきだな、と感じたのが、ご自身が主演として真ん中にいるときも、脇で支えるときも、役に合わせて足すことも引くこともできることです。たとえば記事でも舞台『刀剣乱舞』義伝 暁の独眼竜で、いかに刀剣男士を魅せるかを心がけた、というお話がありました。
富田:それは常に考えます。今、この場面は誰のためにあるのか、作品の航路を決めるのは誰か。そこは大切にしないと作品が成り立たないから。もちろん、そのなかで、どう自分を際立たせることができるかも考えますが、演出家の意向を汲んで、周りの役者とやりとりするのが舞台のおもしろさだと思っているんです。
──ありがとうございます。短い時間でしたが、いろいろなことを伺いました。そして、本日、お越しの皆さまに現在、販売中のブロマイドにサインを入れて、プレゼント大会を開催します。ここからは司会を富田さんに託します。
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──最後に一言、お願いします。
富田:短い時間でしたが、ありがとうございました。こういったスタイルのイベントは珍しくて、『舞台男子』もそうでしたが、こうしてプロのインタビュアーの方に聞いていただき、自分でも気づかなかった心の奥にあるものを引き出していただくという貴重な機会でした。それを書籍にしていただけて、こういった時間を取っていただけるのも、待っていてくださる方々が居るからこそと感謝しているので、変わらず全力を尽くします。これからも、どうぞよろしくお願いします。
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文:おーちようこ スタイリング:ヨシダミホ ヘアメイク:工藤聡美
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【「舞台男子 the real」写真展】渋谷での好評を受け、大阪・心斎橋でも開催中!
会場:HMV&BOOKS SHINSAIBASHI
期間:5月29日(火)〜6月10日(日)
営業時間:11:00〜21:00
入場料:無料
http://www.hmv.co.jp/fl/34/114/1/
渋谷店で完売した「書籍+限定ブロマイドコンプリートセット」も期間中数量限定で再販。
この機会をお見逃しなく!