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熱狂的支持を集める若きカリスマ小説家、松村涼哉インタビュー――新作『犯人は僕だけが知っている』とデビュー6年の軌跡

『犯人は僕だけが知っている』発売記念!松村涼哉インタビュー

少年犯罪の被害者遺族となった孤独な少年の闘いを描いた衝撃ミステリー『15歳のテロリスト』が、発売から2年たち15万部突破。以降、『僕が僕をやめる日』『監獄に生きる君たちへ』など次々と重版出来の話題作を世に送り出している作家の松村涼哉さんに熱い注目が集まるなか、このたび待望の最新作『犯人は僕だけが知っている』が発売となりました。デビューから6年目となる28歳の若き人気作家、松村涼哉さんのこれまでの軌跡と新作の見どころをインタビューでお届けします。



――『15歳のテロリスト』の15万部突破と「第16回うさぎや大賞」大賞受賞、そして『僕が僕をやめる日』も同賞3位の同時受賞という快挙、おめでとうございます。

松村:ありがとうございます。両作品とも多く重版をしていただいていて、たくさんの人に読んでいただいている実感はあったのですが、賞をいただき大変励みになりました。『15歳のテロリスト』は、少年犯罪の被害者家族と加害者家族をとりまく状況と、少年法をとりまくいくつもの意見をどうまとめようか悩み苦しんだ作品で、書くのが一番難しかったです。一方の『僕が僕をやめる日』は渾身の力で書きあげたシーンのある一番好きな作品で、今回、強い思い入れのある二作品が同時に選ばれたこともとても嬉しかったです。


――少年犯罪の被害者遺族となった少年を描いた『15歳のテロリスト』、貧困と無戸籍児をテーマにした『僕が僕をやめる日』、児童福祉士に救われた子供たちの『監獄に生きる君たちへ』、そして最新作にも、松村さんの作品には共通して、社会問題が描かれ、そこでもがくように生きる子供たちが出てきますね。物語執筆の原動力はなんですか?

松村:原動力というのは、実は自分でもよく分かっていません(笑)。おそらく多くの方がそうであるように、ニュース等で見聞きする子供たちにまつわる事件や事故報道に胸が詰まるような感覚を覚え、痛ましい状況にある子供たちの存在を知るところから始まって、いつの間にか問題意識が自分の中で大きくなっていく感じです。現実の社会問題を物語にする際には、誰かの心からの訴えに寄り添える描写を心掛けたくて、憶測を排するため新聞記事や書籍、映像などより多くの資料にあたるようにしています。


――デビュー作『ただ、それだけでよかったんです』も教室で起きる「いじめ」を巡るミステリーですね。第22回電撃小説大賞で大賞となり、大学在学中にデビューされた松村さんですが、それまでもずっとこういった作風でお書きになられていたのでしょうか。

松村:10歳頃から小説を書き始めて、将来は作家になる夢をもっていたのですが、その頃から苦悩を抱えた子供たちを主人公にしていましたね。といっても、当時の自分が抱えていた等身大の悩みをエンターテインメントに昇華させたような感じで、明るかったりシリアスだったり様々な青春ミステリーが多かった気がしています。ライトノベルも文芸も好きだったのですが、自分の書く小説はその中間くらいに位置していると思っていて、ライトノベルや文芸の垣根のない電撃小説大賞がぴったりだったんです。はっきりとは覚えていませんが、うーん、どうだろう。作風という意味では、そう変わっていないように思えますね(笑)。


――デビューから今年で6年目だそうですが、10歳から小説をお書きになってたのですね。ずっと大切にされてきたことや譲れないことはありますか?

松村:僕が書く小説には、必ず苦悩の真っただ中にいる子どもたちが登場しますが、彼らと同じように「僕たちはどう生きればいいのか」という問いを、常に考え続けています。どれだけの人が努力したとしても、ある日、急に日本の景気が良くなって、箒で払われたように社会問題が一気に消え去って皆が同時に幸せになることはきっとない。バブル経済崩壊直後に生まれた僕にとって、そんな日本でどう生きていくのかは大事なテーマです。正解は一つではありませんが、自分の書く物語にも「これも一つの生き方かもしれない」という登場人物なりの導き出した回答をきちんと書くようにしています。


――さて、前作から1年ぶりとなる待望の最新作『犯人は僕だけが知っている』ですが、どんな物語なのか、ご紹介いただけますか。

松村:生徒が一人ずつ消えてゆく教室の物語です。一人、二人、三人と消え、騒然とする町立高校二年A組の教室。その裏で起きている出来事を、堀口博樹という男子生徒だけが知っていた。けれど、堀口にも分からない四人目の失踪者が現れたことで、事態は思わぬ展開を見せていく――そんな物語です。


――この作品の着想を得たきっかけは?

松村:そもそもの着想は、学生時代の些細な体験です。僕の通っていた学校でも、時折ふいに退学者が出たり、不登校になったりする生徒がいました。ある日、ふと生徒が消える。その子がなぜ突如学校に来なくなったのか、まったく理由は知らされない。噂がぼんやりと回ってくることはあっても、その真偽が確かめられることもなく、そのまま卒業していく。彼や彼女と、ずっと教室という狭い空間で一緒にいたはずなのに。どんな事情を抱えていなくなってしまったのか知らないまま、各々の人生に向かっていく。そんな教室で感じた、ぼんやりとした寂しさや悲しさ、不思議さや違和感みたいな感情が物語を書く出発点になっています。


――連続失踪した三人はみな高校二年生で、今作もそれぞれに苦悩を抱えた子供たちですね。見どころ、気合いを入れたシーンをおしえてください。

松村:主人公の堀口博樹にまつわる全て、です。彼を描くのに力が入りました。堀口という人物は、教室では誰とも会話することなく過ごし、一人暮らしをして、ゲーム制作をすることで自己を吐き出し、心の平穏を保っている孤独な少年です。誰にも心を開かなかった堀口が、一人目の失踪者となるクラスメイトを匿ったことで、日常が変わっていく。堀口の変化はもちろん、数々の問題に直面した彼が模索して見つけだしていく答えをきちんと提示できるように全力を傾けました。あと、三人目の失踪者・田貫の抱える問題が詳らかになる後半10ページです。何冊も関係する本を読み込んで、彼女の抱える問題を克明に示せるように尽力しました。


――最後に、読者のみなさまへ一言お願いします。

松村:いつも作品を読んでいただき、ありがとうございます。こまめにエゴサーチをするタイプではないのですが、みなさんが呟いてくれる感想はたくさん拝見しています。どんなコメントでも嬉しいので、ぜひ本作も感想を聞かせてください。

作品紹介



犯人は僕だけが知っている
著者:松村涼哉
メディアワークス文庫
発売日:2021年12月22日 
定価:715円(本体650円+税)

クラスメイトが消えた。壊れかけた世界でおきる、謎の連続失踪事件――
過疎化する町にある高校の教室で、一人の生徒が消えた。最初は家出と思われたが、失踪者は次々に増え、学校は騒然とする。だけど――僕だけは知っている。姿を消した三人が生きていることを。
それぞれの事情から逃げてきた三人は、僕の部屋でつかの間の休息を得て、日常に戻るはずだった。だが、「四人目」の失踪者が死体で発見されたことで、事態は急変する――僕らは誰かに狙われているのか?
壊れかけた世界で始まる犯人探し。大きなうねりが、後戻りできない僕らをのみこんでゆく。
公式作品ページ:https://mwbunko.com/product/322109000404.html
amazonページはこちら


松村涼哉(まつむら・りょうや)

大学在学中、第22回電撃小説大賞≪大賞≫受賞『ただ、それだけでよかったんです』(電撃文庫)でデビュー。メディアワークス文庫初作品『15歳のテロリスト』は発売直後から緊急重版が続く話題作に。「第16回うさぎや大賞」では『15歳のテロリスト』大賞、『僕が僕をやめる日』3位の同時受賞を果たしたほか、『監獄に生きる君たちへ』も発売即重版となる。閉塞した現代社会の闇と、そこに生きる少年少女たちの孤独な闘いと慟哭を描く作家性に、読者の熱狂的な支持が集まっている。

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