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特集

TikTokをレコメンドシステム解析から攻略した男!『#TikTok教室 ティーチャー総選挙』KADOKAWA大学 大賞受賞の窪田望社長インタビュー

構成・文 山崎伸子
撮影 中村好伸

「KADOKAWA大学」大賞受賞者の素顔は解析の天才

 動画プラットフォームTikTokと公式アカウント「KADOKAWA大学_人生は学びで変わる」の初コラボキャンペーン『#TikTok教室 ティーチャー総選挙』が10月に開催され、大賞1名、優秀投稿者10名が選出されました。見事「KADOKAWA大学 大賞」に輝いたのは若きIT社長・窪田望さん(37)。今回の特別インタビューでは、1分の動画では知りえなかった彼の素顔に迫ります。

 2021年の3月からTikTokをスタートし、1日1分で楽しく学べる世界のマーケティング教養を配信中の窪田さん。こちらの動画は配信4日目で早くも大きな反響を獲得し、その勢いは配信半年を経ても衰えることはなく、すでにフォロワー数は10万人を突破しています。

 そんな窪田さんのもう一つの顔は「ウェブ解析士」。この分野では2年連続日本一に輝くなど、その道で知らない人はいない存在です。彼はこのスキルを活かし、TikTokのレコメンドシステムを解析することから動画制作を続けてきたそうです。多くのユーザーリアクションを生み出す動画がいかにして生まれたのか? ユーザーの心を鷲づかみ にするTikTokのスキルや対策、今後の展望とは。

▼窪田望社長のTikTokはこちら
https://www.tiktok.com/@kubotanozomu?lang=ja-JP



企業戦略から日本史あるあるまで! 動画制作のジャンルが幅広い理由は「月に50冊の本を読んで“一行の宝探し”」


――まずは、『#TikTok教室 ティーチャー総選挙』で大賞に選ばれた時の感想から聞かせてください。

窪田:めちゃくちゃ嬉しかったですし、チームでやっているので、こういう賞をいただけるとメンバーも喜びます。僕はウェブ解析士ですが、3年ほどボランティアで高校生にマーケティングの授業を教えていまして。今後のことを考えた時、もっと若い人たちに興味を持ってもらわないと、ウェブ解析の業界自体が縮小してしまうのではないかと思い、TikTokを始めました。今回この賞をいただけたことで、自分たちがやってきたことを認めていただけたような気がして、すごく嬉しかったです。


――どの動画も親しみやすいのに驚きや発見があります。ネタ収集はチームでされているのですか?

窪田:実は僕、月に50冊ぐらい本を読んでいるので、そのなかでなるべく面白かったエッセンスを抽出してネタにしています。


――月に50冊! 日々、社長業務でお忙しいなか、どうやってその時間を捻出されているのでしょうか?

窪田:日常の業務以外に打ち合わせが1日にだいたい10件ぐらいあって、週3ぐらいジムを入れていますが、それ以外の時間で本を読んでいます。ページを素早くめくっていく速読で、だいたい1冊を10分ぐらいで読み終えますが、たまにあまり聞いたことがない単語や概念が光り輝いて見えることがあり、それを見つけるためにページをめくっている感じです。僕は“一行の宝探し”と呼んでいます。



他のプラットフォームとの違いは? 後発でも動画の質で勝負できるTikTokの面白さ


――窪田さんはYouTubeやTwitterなど他のプラットフォームもされていますが、TikTokにはどういう魅力や強みを感じますか?

窪田:TikTokは基盤となっているのが独自のレコメンドシステムです。TikTokのレコメンデーションが分類メカニズムを解いてまして、ユーザーの嗜好性に合わせてその人が好きそうな動画を届けられる仕組みを持っています。例えば、ヒップホップ好きな人には、ヒップホップの動画を多めにレコメンドしてくれますが、その独自のレコメンドシステムがめちゃくちゃユーザー・ファーストなんです。


――ユーザーが観たい動画を的確におすすめしてくれるということですね。

窪田:そうです。実は、初期のYouTubeもそうでしたが、今は仕様が変わり、動画が良いものかどうかよりも、既に影響力があるインフルエンサーたちの動画のほうが届きやすいプラットフォームになっています。だから、後発の参入者は厳しい戦いを強いられます。
Instagramもそうで、いまはローラさんが圧勝していますし、YouTubeもヒカキンさんたちYouTuberの方々が強すぎます。でもTikTokは、Junyaさんなど圧倒的に強い方もいらっしゃる一方で、後発の人もオススメ欄に載るか載らないかで勝負ができます。つまり1本ずつ動画の質での闘いが0からリスタートできるという魅力があります。


――そういう意味ではきちんと戦略を練ってこられたのですね。

窪田:フォロワーが多い人でもよく分析すると、オススメ欄にどのぐらい載っているかによって、再生数や「いいね」の数、コメント数が全部変わってきます。単純にフォロワーが増えたから再生数が伸びるというわけではない点がTikTokの面白いところですね。



37歳で無加工での動画投稿! トレンド無視の“踊らない動画”で勝負した理由


――TikTokを始める前から、ある程度の勝算は見えていた感じですか?

窪田:いや、そこは本当にわかってなくて、もしかしたら大ハズシするかもしれないというドキドキ感はありました。もちろん始めるうえで、こうすればイケるという仮説は立てていましたが、本当に需要があるかどうかはわからなかったです。
僕が始めた頃はダンス動画が多く、特にイケメンや美女かつ若い人たちの投稿ばかりだったから、そんななかで僕は37歳で無加工での投稿で、しかも踊らない動画だったので、すぐにスワイプされてしまうかもしれないとも思っていて(苦笑)。でも、そこを認識したうえで、自分たちのコンテンツがどうあるべきなのかを逆算して考えました。


――そこがプロならではの視点ですが、手応えを感じたのはいつ頃ですか?

窪田:毎日配信で始めてみて確か4日目です。1~3日目は何も起きなかったのですが、4日目でいきなり再生数が1万超えとなり、コメントがたくさん付いたので、なんだこれは!と驚きました。普通のプラットフォームだとありえないことですし、僕はもともと地道に積み重ねるのが得意なタイプだったから、本当にびっくりしました。


――投稿するうえで、何か心がけていることはありますか?

窪田:一番は、出し惜しみしないことです。TikTokの教育系動画の分析をしていた時、「答えはコメント欄で」というものが多数あり、そこに時差が生じるし、コメント欄を見ていくと「すぐに言ってほしい」とツッコむようなものが多かったです。だから、出し惜しみをせず、全部を端的に言いきったほうが良い動画になるなと思いました。僕の動画は1.5倍速ぐらいの早回しにして、1本を40秒ぐらいの長さに留めるように編集しています。



巧みな戦略で見事にブレイク! TikTokの「コメント欄」は誰のもの??


――TikTokを続けるにあたり、どんな努力をされてきましたか?

窪田:僕は1日撮りでTikTokを15本撮って、そのあとYouTubeを3本ずつぐらい撮っていますが、やはり声がかれちゃうんです。それで、少しでも配信する動画の質を高めるべく、自分の肉体自体を変えようと思いました。最初に投稿した頃の動画と今の僕とではたぶん体重が15kgぐらい違います。笑
その前に2年間、糖質制限をしていましたが、それプラス週8くらいでジムに通って肉体作りをしました。


――それもすごい努力だと思いますが、やっていくうちに気づいたことなどはありますか?

窪田:ユーザーさんが書いてくださるコメント欄の捉え方を変えました。TikTokを始める前は、動画を配信している人がコメ主だと思っていて、その後でユーザーさんがコメントをくれるという感覚がありましたが、それじゃダメなんです。途中から、コメント欄をユーザーさんのために用意する舞台であると捉えるようにしました。


――具体的にどんな対策をされたのですか?

窪田:よくやってしまいがちなのが、5件コメントが来たら5件すべてにコメントを返してしまうこと。ユーザー側に、そのコメント欄を見て“気を遣う”という心理が出てきて、自由な意見を書きづらい空気感が生まれてしまう。インフルエンサー寄りになりすぎちゃうから、もっと自由に書いてもらえるように手放した方がいいです。また、昔の“ハガキ職人”みたいに、めちゃくちゃ面白いコメントをしてくれる“コメント職人”みたいな方がいるので、そういうコメ主にスポットライトが当たる設計にしたほうがいいと、途中から気づきました。

プログラミングで芸術家へ! 世界初の「AI美術館構想」


――そこもウェブ解析士ならではの分析力ですね。今後の展望についても聞かせてください。

窪田:僕はAIも大好きで、自動運転自動車のセキュリティにまつわる仕組みなどについての特許権を2021年で5件獲りました。その分野ではGoogleの論文が世界一でしたが、最近、弊社で精度と頑健性の観点でGoogleの研究成果を抜くことができました。そういう意味ではTikTokも、ウェブ解析とコンテンツ・ビルディングに機械学習と、3つの視点が重なった領域のものかと。TikTokに関しては、情報をより多く、豊かに届けたいと思っています。


――きっと日々アンテナを張っていらっしゃるんでしょうね。

窪田:今の時代はすごく便利で、AIの分野で言うと、世界最高峰といえる‟state-of-the-art”のSOTA論文というものがありますが、それらのPDFが当たり前のように閲覧できます。しかも無料で!昔はきっと一部の特権階級の学者しか見られなかった論文ですが、今は誰でも見られるというすばらしい時代になりました。また、執筆者のメールアドレスが掲載されているから、直接コンタクトを取れば、世界最高峰の研究者ともつながることができるんです。
また、スタンフォード大学などのAIの授業が、無料でYouTubeに上がっていたり、いろいろなソースコードがネットで公開されていたりするので、勉強もできるし、自分のビジネスにつなげることもできます。どんどんアイデアを広げていけば、もの作りをもっと楽しめるようになると思います。


――本当にいろんな可能性を感じますね。では、直近で2022年の目標などを聞かせてください。

窪田:僕は毎年無茶な目標を立てますが、去年(2021年)の目標は「発明家になりたい」で、実際に5つの特許を獲りました。やはり自分が全くやったことがない未知のことに毎年チャレンジしていきたいので、来年は「芸術家になりたい」という目標を掲げようかと。僕は全然絵が描けないんですが、最近、AIで名画を生成する実験を行っています。
また、僕は美術館が大好きだから、できればいつか美術館を作りたいです。でも、それはアーティストが作った物だけを見てもらうような美術館ではなく、すべての人のクリエイティブを解放するような新しいミュージアムがいいなあと。AIの個展みたいな仕組みを作れたら面白いと思いますし、そういうものを全世界の人が共有して見られたら一層楽しいと思います。



プロフィール
窪田望(くぼた・のぞむ)
米国NY州生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中に19歳で起業。3.7万名のウェブ解析士の中で2年連続日本一となる。株式会社クリエイターズネクストの代表取締役。


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