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特集

土屋太鳳、佐久間大介出演映画「マッチング」 「“出会いに潜む恐怖”を描いてみたかった」 原作・監督 内田英治 独占インタビュー

マッチングアプリを題材に、“出会い”に潜む恐怖を描く映画「マッチング」がいよいよ公開。土屋太鳳演じる恋愛音痴なOL・輪花がアプリでマッチングしたのは“狂気のストーカー”吐夢。やがて輪花と吐夢は、巷で発生している凄惨な殺人事件「アプリ婚連続殺人事件」に徐々に巻き込まれていく──。連続して起こる恐怖を描きながら、“人間の本当の顔”を炙り出していくドラマティックな展開が観どころの本作。完全オリジナルストーリーの「マッチング」だが、小説と映画では違うストーリー展開もあり、小説を読んでから映画を観るとまた違った楽しみ方ができる。原作小説を執筆し、映画の脚本・監督を手がけた内田英治監督に、小説と映画の制作秘話を聞いた。

文/横谷和明

土屋太鳳・佐久間大介出演「マッチング」 原作小説が好評発売中!
「“出会いに潜む恐怖”を描いてみたかった」内田英治監督


ミステリーは一番好きなジャンル


――原作小説『マッチング』は、映画に合わせて内田英治監督が書き下ろした作品です。映画では省かざるを得なかった登場人物のバックボーンや心理描写などがたっぷり盛り込まれていて、映画を何度も観返したくなるような一冊でした! そもそも、内田監督が小説を初めて書いたのはいつ頃ですか。

内田英治監督(以下、内田):昔から小説が好きで、特に20代の頃はめちゃくちゃ読んでいました。面白い小説を読むたびに“絶対に自分にはこんな小説を書けないな……”と、作家の方々のすごさに打ちのめされる日々でした。それは今も同じ気持ちです。2020年に公開した『ミッドナイトスワン』のときに初めて原作小説を書いたのですが、当時は拙い小説だったら自分でもなんとか頑張れるかな……と思ったんです(笑)。


――ちなみに、どんな作家が好きだったんですか。

内田:たくさんいますよ。僕は数あるジャンルの中でミステリーが一番好きなんです。実はヒューマンドラマよりも(笑)。なので、高村薫さんやロス・マクドナルドの作品は大好きで、よく読んでいました。


――ということは、いつか自分でもミステリー作品を作りたいと思っていたのでしょうか。

内田:そうですね。そういった想いは、当然ありました。


――今回の題材に、マッチングアプリを選んだのはなぜですか。

内田:ミステリーホラーって、まず何より題材が重要じゃないですか。ほとんどがもうやり尽くされているなかで、毎日ニュースを見たり自分が経験したものからネタ探しをするわけです。マッチングアプリという題材を最初に思いついたときには、もう絶対にこのテーマで作られた作品があるだろうなと思ったんです。今では日常化しているとはいえ、出会う人の素性や登録されている顔が本人のものかも分からず、謎に包まれていて、こんなミステリーに向いている題材はないですから(笑)。でも調べてみると、まだそういった作品はなかったんですが、あまりにストレートすぎる題材だなと思って封印していたんです。


――その封印を解いた理由とは?

内田:プロデューサーの方々と話しているときに、僕がマッチングアプリの話をしたら、みんなの反応がすごく良かったんです。そのときに“もうこれだな、今しかないな”と思いました。それで映画の脚本を書き始めたんです。


犯人を決めずに物語を書き始めた


――マッチングアプリの取材も、実際にされたそうですね。

内田:本当はマッチングアプリを自分でやってみたかったんですけど、そうはいかないじゃないですか(笑)。取材で実際に話を聞いてみたら、今の若い世代にとっては決して特別なことではなく、ごく当たり前のツールになっているんです。かなり細分化されていて、真面目に結婚相手を探したい人用、少しライトな恋愛を求めている人用など、分かれていることも知りました。


――映画は、最後の最後までどんでん返しの連続で、予想を裏切られる衝撃の展開でしたが、脚本作りで一番苦労したのはどこでしょうか。

内田:伏線の張り方とその回収ですね。すごく難しかったし、小説家の人たちは本当にどうやって考えているんだろう?って思います。登場人物の過去が現在に起こっている事件に関わってくるように整合性をとることが難しく、方程式のように考えていかないといけないので、そこが大変でした。以前、Netflix「全裸監督」(2019年、2021年)の脚本を書いていた頃、「クリフハンガー」を意識する癖がついていたんです。話を二転三転させて、主人公が常に崖っぷちにぶらさがっている状態を作ることを意識していたら、どんでん返しを入れれば入れるほど整合性がとれなくなり、それをまた縫い合わせないといけなくて。ここが崩れてしまうと、この先がおかしくなるよね……というようなことが連続して出てきてしまう。方程式がきっちり整っているなかに人間関係や気持ちの部分が上乗せして入ってくる構図になるので、そのミックスはめちゃくちゃ難しいなと感じました。


――そうだったのですね。『マッチング』に関しては、最初は犯人を決めずに物語を書き進めていったそうですね。

内田:「愛憎」という反転した愛情を描きつつも、エンターテインメント性を大事にしようと思って犯人を決めずに書き始めたんです。なので、執筆中にいろいろな登場人物が犯人になっていったという歴史がありまして(笑)。アプリに絡んでくる事件の内容やその結末をどうしたらいいのか頭を悩ませながら書いていくうちに、犯人が変わっていきました。


――物語の中心人物となる唯島輪花(土屋太鳳)と永山吐夢(佐久間大介)に関しては、どんな想いを込めてキャラクターを作り上げていったのですか。

内田:輪花は、企画を考えた当初から一貫しているんですけど、人の幸せを演出する場にいながら、自分を置き去りにした女性です。決して派手ではなく、ひっそり生きていた女性が普通の状態から事件に巻き込まれてどんどん暴走し、最後は再生していく姿を描きたかったんです。
 吐夢に関しては、ちょっとした陰があるけど一貫した強い想いを持っている人物。ただ悪いだけではなく、アンチヒーロー的な要素を与えたいと考えていました。


――過酷な運命と対峙していく輪花ですが、最終的に、ある一歩を踏み出します。それがまた心がざわつく選択なんですよね……。

内田:今の時代は、キャラクター性で人間性を決めてしまっている部分があるなと感じていて。この人はSNSで正しいことを言っているから良い人だよね、と判断されがちなのですが、人間なんて本当の顔は分からないし、実際は全然違うかもしれない。その環境を作ったのは誰なのか、家族なのか、それとも出会い系産業なのかという、社会の構図みたいなものを小説なら詳しく書けると思ったんです。


自己犠牲と救済


――映画作りと小説作りのそれぞれの醍醐味をどこに感じられていますか。

内田:映画の場合は、脚本はあくまで叩き台で、実際に撮影現場で俳優と真正面から向き合ってシーンを作り上げていけるのが醍醐味。小説の場合は、映画よりもさらに情報量を詰め込むことができるところですね。たとえば、映画の「マッチング」では刑事役の二人は脇役なんです。登場シーンはあまり多くないけど、僕的にはとても愛着があって。ただ、彼らのバックボーンは尺の問題で映画では描けないわけです。でもこれが小説になると、警察側の背景や彼らの心境も詳しく描ける。たとえば、真飛聖さん演じる女性刑事の西山茜を主人公にして映画が1本できるくらいの情報量を入れることができるんです。今回、たまたま取材のなかで警察官の方々と交流する機会があったので、そこで自分が見たり、実際に話を聞いたりした生の警察官の姿を、小説では西山刑事のキャラクターに反映させています。


――そうやってキャラクターをより深く描けるのが、小説の面白さなのですね。西山刑事の日常や葛藤などが描かれていて、彼女の視点から殺人事件が描かれているのも小説の見どころだなと思いました。

内田:そう。それからもう一つ、僕が小説で描きたかったのは、殺人犯の感情的な動機です。犯人は被害者たちに愛の選択を迫るのですが、そもそも僕はこの作品で自己犠牲について描きたかったんですね。僕がこれまでに撮った映画にもそういった部分が出ていると思いますが、普段から自己犠牲について考えることが多いこともあって、小説の方ではそれが色濃く出ています。


――内田監督はなぜ、自己犠牲をテーマのひとつとして取り上げ続けているのでしょうか。

内田:なぜでしょうね。でも、昔から自己犠牲と救済は気になる題材なんです。それは、僕がカトリックの国(ブラジル)で育ったからかもしれません。僕自身は違うのですが、周囲にカトリックの人たちが多かったので、その影響は間違いなく受けていたのではないかなと。自己犠牲は人間の特別な感情で、映像だとなかなか描きにくいんですけど、文章ならより深く表現できるのではないかと感じたんです。



文章を書く=自分を律する


――小説を書くうえで、最も大切にされていることは何ですか。

内田:締切を守ることですね(笑)。まあ、それは冗談として、僕は文章を書くのがすごく苦手なんです。小さい頃にブラジルに住んでいたこともあって、帰国したばかりの頃は日本語がうまく使えず、それゆえに漢字もあまり得意でないというか。だから、その頃を知っている知り合いには、「よく小説を書けたね」って言われます(苦笑)。そういった小さい頃からのコンプレックスがあるので、ちゃんとした日本語を書くというところからスタートしている気がします。映像を撮るときは楽しんでいる感じですけど、文章を書くときは、どちらかというと自分を律するという感覚が強いかもしれません。


――自分で気合いを入れてから、執筆に入るという感じですか。

内田:そうですね。気合いを入れないとダメです(笑)。「何ページ書くぞ!」みたいな。


――毎日、そういった目標のページ数を決めて執筆されているんですか。

内田:そうです。「今日は10ページだ!」とか決めないと書けないんです。


――そうやって、難解な方程式を積み重ねていったんですね。『ミッドナイトスワン』から始まり、今回の『マッチング』が4作目の著書になりますが、小説家としての今後の野望もぜひお聞きしたいです。

内田:小説は年を取ってからでも書けるので、野望はいっぱい持っていますよ(笑)。映画化をしない普通の小説を書いてみたいんです。たとえば、自分が生まれ育ったブラジルの話とか父親の職業の話とか。普段は映画もそうですけど、完全にフィクション作品が多いので、自分がこれまでに経験してきたことや自分がたどってきた道を反映させるような小説を書くのが野望の一つですね。

プロフィール

内田英治
1971年生まれ、ブラジル出身。99年に脚本家デビュー。2004年に「ガチャポン!」で映画監督デビュー。20年公開の「ミッドナイトスワン」では第44回日本アカデミー賞優秀監督賞・優秀脚本賞を受賞し、高い評価を得た。近年の映画監督作に「異動辞令は音楽隊!」(22年)、「サイレントラブ」(24年)などがある。

映画情報



「マッチング」
出演:土屋太鳳
佐久間大介 金子ノブアキ
真飛聖 後藤剛範 片山萌美 片岡礼子
杉本哲太 斉藤由貴

監督・脚本:内田英治
原作:内田英治『マッチング』(角川ホラー文庫刊)
音楽:小林洋平 共同脚本:宍戸英紀
主題歌:Aimer「800」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
制作・配給:KADOKAWA
Ⓒ2024『マッチング』製作委員会

2月23日(金・祝)全国公開
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/matching/
公式X(旧Twitter):@movie_matching
公式Instagram:@movie_matching
公式TikTok:@movie_matching

原作情報



『マッチング』
著者:内田英治
定価: 814円 (本体740円+税)
発売日:2024年01月23日
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322308001314/

「出会い」に隠された「恐怖」の真実──
ウェディングプランナーの仕事が充実している一方、恋愛に奥手な輪花は、同僚に勧められ、渋々マッチングアプリに登録。この日を境に生活が一変する。マッチングした吐夢と待ち合わせると、現れたのはプロフィールとは別人のように暗い男。恐怖を感じた輪花は、取引先でマッチングアプリ運営会社のプログラマー影山に助けを求めることに。 同じ頃、“アプリ婚”した夫婦が惨殺される悲惨な事件が連続して発生。輪花を取り巻く人物たちの“本当の顔“が次々に明かされ、事件の魔の手が輪花に迫るのだった。誰が味方で、誰が敵なのか──。出会いに隠された恐怖を描く新感覚サスペンス・スリラー!

※画像は表紙及び帯等、実際とは異なる場合があります。


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