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特集

ラランド・ニシダ初小説! 『不器用で』発売記念インタビュー

2019年と2020年に2年連続でM-1グランプリの準決勝に進出し、大きな話題となったラランドのニシダさん。
今年7月に初めての小説を上梓したニシダさんにお話を伺いました。

『ダ・ヴィンチ』2023年9月号「芸人×エッセイの美学」特集からの転載記事です

取材・文:立花もも

ラランド・ニシダ初小説!
『不器用で』発売記念インタビュー

不器用にバランスを保って生きる人に
スポットライトを

人生に劇的な瞬間などほとんどない、とニシダさんは言う。

「自分のことがどれほど嫌いで人生をやりなおしたいと思っても、現実にはそのままの自分で生きていくしかないし、根っこから自分を変えることもそうそうできない。それでも、今より1・5度くらいズレてくれたら日常は案外開けたものに変わるんじゃないか。他人との関わりによってそのズレを手にする人たちの姿を描きたいなと思ったんです」

初の短編小説集となる『不器用で』に登場するのは、タイトルどおり、生きづらさを消化できないまま不器用にもがいている人々ばかり。なかでもニシダさんにとって思い入れ深いのが、「焼け石」という唯一女性視点で書かれた小説だ。

「サウナに行くと、裸で汗だくになっている男たちのなかに女性が掃除しにくることがけっこうあるんですよね。なんとなく“大丈夫”な雰囲気が醸し出されているけど、実はけっこうギリギリのバランスで成立しているのでは?と思って生まれたのが、バイト先で男サウナの清掃を担当することになった美沙です。そもそも、あんまり相手の表情を読んだり、言葉遣いに気を配ったりしない男と違って、女性は同性とのコミュニケーションにおいても嫌われないよう、攻撃されないよう、常に意識している気配がある。サウナ掃除や恋人との関係にうっすら違和感を覚えながら、バランスを崩さないよう、自分も他の誰かも傷つくことがないよう、必死で張り詰めている美沙が、ほんの少しつつかれた瞬間、どうなるのかを見てみたかったのだと思います」

その外的な力となるのが、バイト先の後輩・滝くんだ。美沙が男サウナを担当するのはおかしいと、おおっぴらに声をあげる彼は、周囲からやや浮いている。

「世間的に成功するのは、配慮の足りない美沙の恋人の方だと思うんですよ。誰かを繊細に気遣ったりしない人ほど出世していくし、滝くんのように軋轢を生む指摘しかできない人は、共同作業をするうえで疎まれやすいから評価もされない。でも、根はまじめでものすごくいい奴なんだってことを、わかってくれる人は一人か二人、必ずいる。そういう人に、せめて小説ではスポットライトをあてたいなと思いました。どれだけシンプルに人を記号化しておもしろがらせるか、というお笑いと違って、小説には遠回りの表現だからこそ伝えられるものがあるはずだから」

ニシダさんの書き下ろしエッセイも掲載!
いつわりのない言葉でさらけだす 芸人×エッセイの美学
『ダ・ヴィンチ』2023年9月号



2023年9月号の『ダ・ヴィンチ』では、お笑い芸人たちによるエッセイを大特集。
日常のささいな出来事や小さいころの思い出をあらゆる角度から見つめ、バラエティ番組で笑えるエピソードトークにまで昇華するなど、芸人と日常を綴るエッセイは隣りあわせの存在だ。

特集内では、ハライチ・岩井勇気さんの執筆への一貫した姿勢と漫才師としての矜持が感じられるインタビューのほか、アンガールズ・田中卓志さん、ぼる塾・酒寄希望さん、アルコ&ピース・平子祐希さんのエッセイに関するインタビュー、「THE SECOND~漫才トーナメント」で準決勝に輝いたマシンガンズ・滝沢秀一さんのゴミ清掃員としてのエッセイ、南海キャンディーズ・しずちゃんの自らの生い立ちを振り返るインタビューなど、話題の芸人たちの人生に触れられるインタビューが盛りだくさんだ。

また、2023年4月より放送され話題になった『だが、情熱はある』(主演:髙橋海人さん(King & Prince)、森本慎太郎さん(SixTONES))より、オードリー・春日俊彰さん役を演じた戸塚純貴さん、ドラマプロデューサーの河野英裕さんにもインタビュー。
『だが、情熱はある』は、オードリー・若林正恭さんと南海キャンディーズ・山里亮太さんのエッセイ3作(『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』『ナナメの夕暮れ』『天才はあきらめた』)を原案としたドラマ。河野さんが本屋さんで出合ったエッセイがドラマになるまで、そして戸塚さんが演じた春日さんについて、それぞれの貴重なインタビューにも注目。

また今回の特集に合わせて、ラランド・ニシダさんの「芸人」をテーマとした書き下ろしエッセイも掲載! 〈ネタを書かずに小説を書く〉、ご本人曰く非常にレアケースな、ニシダさんの「芸人と作家としての自分」についてのエッセイは必見。

そのほか、作家・テレビプロデューサーたちによる「My Best Of 芸人エッセイ」企画(回答:大前粟生、岡崎琢磨、伊与原新、加藤千恵、武田綾乃、大森時生、佐久間宣行、橋本和明、小山テリハ、藤井健太郎)や和牛・川西賢志郎×作家・石田夏穂の対談など、さまざまな面から芸人とエッセイの関係に迫っている。

Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CB1ZHVDF/

書籍紹介



『不器用で』
著者 ニシダ
発売日:2023年07月24日

アミがいじめられるのは貧乏だから。でも、いじめる僕も同じくらい貧乏で、いつ標的が自分に変わってもおかしくない―(「遺影」)。シラスから異物をひたすらよりわける退屈な日々に舞い込んだ衝撃的な事件(「アクアリウム」)。地味に不器用にしか生きられない人たちの日常を、ほんの一瞬ゆるがす姿を描いた小説集。
ニシダ『不器用で』特設サイト:https://kadobun.jp/special/nishida/bukiyoude/



『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』
詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/321510000058/


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