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特集

≪MOE絵本屋さん大賞パパママ賞第3位 受賞記念インタビュー≫海の砂に描く画家たなかしん『ねむねむごろん』

撮影:松本 順子  取材・文:担当編集 

海の砂を敷いたキャンバスに描く画家、たなかしんさん。その独特のタッチで描かれた温かなおやすみ絵本『ねむねむごろん』が、第12回MOE絵本屋さん大賞2019パパママ賞第3位に選ばれました。
画業20周年の節目に、大規模な展覧会を開催した阪急うめだ本店アートステージにて、作品に込めた思いや受賞の喜びをうかがいました。



「海の砂」に描く理由


――受賞記念インタビューですが、まずは、画業20周年おめでとうございます。

たなか:ありがとうございます。


――初期の作品も展示されていますが、今とは随分作風が違うので驚きました。

たなか:そうですね、はじめは油絵で写実を描いていました。その後、市販のマチエール材、ビーズやガラスの入ったようなものも使ってみたのですが、どうも人工的な感じがして。落ち葉を砕いたものも試しましたが作為的になりすぎてしまって、しっくりきませんでした。作品にもっとプラスの力、絵とあわせてかけ算になるような画材はないかと思って行き着いたのが、「海の砂」でした。
 僕は生まれが大阪の泉南市で、その後、引っ越して今も住んでいるのが兵庫県の明石市。どちらも海が近いんです。ある日、ふと潮の香りがするような、子どもの頃海で遊んだ記憶がよみがえってきて。これを使ったらよりあったかいものが描けるんじゃないかと思って、使い始めました。


初期作品の前で。


――昨年開催された個展会場ではじめてお目にかかりましたが、そのとき、「原画の力」に圧倒されたのを覚えています。これは、やっぱり砂の持つエネルギーなのでしょうか。

たなか:僕は、「目に見えない力」を信頼しているところがあって。山から運ばれた岩や石が砕かれて、海まで運ばれて砂になるじゃないですか。そこに、珊瑚や貝殻のかけらも混ざって。山の恵みや海の恵み、波打ち際の砂は本当に色々なものが混ざっていて、しかも細かくてきれいなんです。僕はその砂を採取して、洗って塩抜きをし、天日干しして使うんですが、その時に太陽のエネルギーもそこに入っていくような気がして。たくさんの地球の力を借りながら、絵にエネルギーを込めています。


――『ねむねむごろん』でも砂が使われていますが、また普段とは絵の雰囲気が違いますね。

たなか:そうですね、赤ちゃんに読んでもらうことを強く意識しています。砂の中にも尖っている粒があるので、いつもの何倍も時間をかけて粒子の細かいものを選別しながら、絵に柔らかさや優しさが表れるよう、描きました。



眠れない夜を「楽しく」過ごすために


――『ねむねむごろん』はおやすみ絵本ですが、この内容で描こうと思った経緯を教えてください。

たなか:僕は子どもの頃から、眠るということに不安感があって。本当に目が覚めるんだろうかと怖くなって、一人で布団で泣くこともあったんです。そんなとき、「眠り」の不安を取り除けるような、安心できるようなものがあったらいいなと思いました。眠れないとき、寝なきゃ寝なきゃと思わずに、眠れない時間も楽しく過ごせたら、そのうち疲れて眠れるんじゃないかとか。そう思ったのがきっかけです。
2014年、そんな思いから1枚の「絵」を描いたのですが、その後息子が生まれて、人間の子どもが登場する「絵本」に膨らんでいきました。子どもにも伝えようと思ったら絵ではなくて、物語が必要だったんです。



作品集『REMEMBER』(ライツ社)より。このときはまだ人間の子どもが描かれていない。


左・絵本として起こした最初のラフ。右・出版された『ねむねむごろん』。


この『ねむねむごろん』も、動物たちのポーズを真似して、自然とあくびがうつって、と楽しみながら読んでもらえたらと思います。楽しんで疲れた後は、安心して眠ってもらえたら嬉しいですね。

絵本は子どもの「栄養」


――最後に、受賞について。今回第3位を受賞された「MOE絵本屋さん大賞パパママ賞」は、全国の書店員さんが選んだ候補作の中から、一般のパパママさんたちによる投票で順位が決まります。まず率直に、いかがでしょうか。

たなか:本当に、感謝しかないです。全国の書店員さんたちにハグして回りたいくらい(笑)。素晴らしい絵本がノミネートされている中で、さらに多くの皆さんに選んでいただけたなんて、本当に光栄なことだしありがたいです。



――今まさに子育てをされているパパママさんたちにも選んでいただけたのかなと思いますが、どんなふうに読んで欲しい、というメッセージはありますか。

たなか:まず、『ねむねむごろん』に限らず、子どもに絵本を読むことが当たり前になるといいなあと思っています。絵本って子どもにとって栄養だと思うんです。ご飯を食べさせるのと同じくらい、当たり前のように絵本を読む。そうして毎日一緒に読んでいると、子どもの小さな成長や変化に気づくんですよ。そういう、子育ての喜びが増えるツールのひとつとして、『ねむねむごろん』も楽しんでもらえたら嬉しいです。


会場へ200冊仕入れた『ねむねむごろん』は3日で完売! 取材中も続々サインを求める方が。


たなかしん
1979年大阪生まれ。2005年、台湾にて初の絵本作品を出版。その他の絵本作品に、『うたえなくなったとりと うたをたべたねこ』(求龍堂)、『クークーグーグー』(あかね書房)などがある。2015年からの4年間、「UAE国際絵本展」連続入賞。海外での展覧会、舞台美術、広告、服飾デザインなど、幅広く活動する。
12月24日(火)まで、丸善日本橋店にてたなかしんベスト作品集 REMEMBER 出版記念展開催中。



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