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特集

デビュー10周年&「ホーンテッド・キャンパス」20巻記念 櫛木理宇さんロングインタビュー

取材・文=朝宮運河

デビュー10周年&「ホーンテッド・キャンパス」20巻記念
櫛木理宇さんロングインタビュー

この秋、デビュー10周年を迎える櫛木理宇さん。最近も『死刑にいたる病』が映画化されてヒットするなど、ミステリにホラーに大活躍を続けています。8月25日に発売された『ホーンテッド・キャンパス オシラサマの里』(角川ホラー文庫)は、人気シリーズ久々の長編にして記念の第20巻。奇妙な風習の残る集落で、おなじみオカルト研究会の面々が恐ろしい事件に巻き込まれていきます。オカルトと猟奇犯罪、そしてもちろんラブコメ要素も満載した待望の新作について、櫛木さんにうかがいました!

▼「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ
https://kadobun.jp/character-novels/character-novels-series/hawnted/

「ホーンテッド・キャンパス」誕生の経緯


――「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、ついに20巻到達です。今年櫛木さんはデビュー10周年ですし、ダブルで記念の一冊となりましたね。

櫛木:ありがとうございます。まさかこんなに長く続くとは思っていませんでした。そもそもシリーズ化を想定して書きはじめたわけではなかったので、10年も続いたのがなんだか不思議な気がします。


――櫛木さんは2012年、『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞の〈読者賞〉を受賞してデビューされました。大学のオカルト研究会の面々が、不思議な事件を解決していく、という同作はどのような経緯で生まれたのですか。

櫛木:正直に言いますと、深い狙いや意図はなかったんです。日本ホラー小説大賞にも最初は応募する気がなくて、出そうかなと思ったときには締め切りまで3カ月しかなく(笑)。長編にできるアイデアが浮かばなかったので、連作短編を5つ書けば想定枚数になるのではと考えたんです。学園もので変わったサークルが出てきて、というのはまあお約束ですよね。中高生ではなく大学生を主人公にしたのは、その方が行動範囲が広がって、エピソードに幅が出せそうだと思ったからです。


――受賞後、シリーズ化はすぐに決まったんですか。

櫛木:担当さんに初めてお会いしたとき「売れても売れなくても3巻までは出します」と言われました。ただ「3カ月に1冊のペースで書いてください」と。当時はプロってそんなものかと思ったんですが、今思うとすごいハイペース刊行(笑)。われながらよく書けたなと思います。1巻の直しをしながら2巻を書いたので、振りかえっても頃の記憶がほとんどありません(笑)。

森司はクラスで5、6番目にかっこいい男の子


――主人公の大学生・八神森司は、同じサークルの美少女・灘こよみに片思い中。なかなか距離が縮まらない二人の甘酸っぱいラブストーリーが、物語の縦軸になっています。

櫛木:イメージしたのは「『少年マガジン』で連載しているようなラブコメ」です。『ジャンプ』じゃなくて『マガジン』というのがポイントで(笑)。どこにでもいそうな等身大の男の子が、高嶺の花のヒロインに思いを寄せるという王道の展開を意識しました。


――森司もこよみも今どき珍しいくらい清い心の大学生ですが、二人のキャラクターはどのように決まったのでしょうか。

櫛木:森司は霊視ができる以外は、あくまで等身大の青年です。高校生の女子が集まって「クラスで誰がかっこいいか」と噂をしたら、必ず5番目か6番目に名前があがる男の子、というイメージで書いてます。そこそこ人気はあるけど、何度クラス替えをしてもトップ3には入らない (笑)。こよみは無口で一見大人しいですが、意外にはっきりしていて、うじうじ悩んだりしないキャラですね。恋愛に関しても、じつはこよみの方が最初から積極的です。物語が森司視点なので、森司が気づいていないだけです。


――二人が所属しているサークル・オカルト研究会には、博学な黒沼部長、身長190センチの偉丈夫で部長の従弟・泉水、姉御肌の美女・藍と、個性的な先輩が揃っています。オカ研に持ち込まれるさまざまな相談事を、メンバーが解決していく、というのがシリーズの基本パターンですね。

櫛木:毎回オカ研に紹介制で悩み事が持ち込まれる、という枠組みは深く考えずに決めたんですが、オーソドックスな設定で自由度を高くしたぶん、心霊ものをはじめ、超能力ものや分身など、いろんなパターンのホラーを書くことができたと思います。ちょっと特異かなと思うのは、主人公の森司が探偵役でもワトソン役でもないことです。オカ研の探偵役は黒沼部長、ワトソン役は泉水なので、森司はほんとうにただの一部員 (笑)。これがワトソンの泉水視点だったら、だいぶ違う話になっていたでしょうね。


――これまでオカ研が遭遇した超常現象は、幽霊、ポルターガイスト、吸血鬼、人体発火現象、呪われた人形と多岐にわたりますね。オカルト的な素材はどうやってリサーチされているのですか。

櫛木:「このネタを書く」と決めてから資料を読むと間に合わないので、既読の本から拾ってきていますね。使えそうなネタはメモ帳アプリに書き留めてます。そのメモから2つか3つ素材を組み合わせて、ストーリーを作るという感じです。これだけ長く書いているとメジャーなオカルトネタは大体使い切ってしまって、最近はもともと興味があった民俗学系の話題も多くなってきています。


――部長を「本家」と呼んでいる泉水をはじめとして、このシリーズには昔ながらの家意識を持った人たちがしばしば登場しますね。

櫛木:わたし自身が田舎の人間ですから。わたしが住んでいるのは田舎ながらも一応新興住  宅街なんですが、近所には大昔から土地に根付いている人たちの暮らす一画もあるんです。敷地内に鳥居があったり、蔵があったり。そういう家はやっぱり独特のしきたりやしがらみがあって、黒沼家のように今でも本家・分家の区別がはっきりしています。決して「昭和は遠くなりにけり」ではなく、今も厳然とある現実ですし、わたし自身「今もあるもの」という意識で書いています。

オカ研が関わったら人が死なない、というルール


――中には相当怖いエピソードもありますが、オカ研のメンバーがなんとかしてくれるだろうな、という安心感もあります。

櫛木:読んだら夜眠れなくなる、という感じではないと思います。超常現象を扱ってはいても、最後は必ず解明されますから。説明が付くと怖くなくなるんですよ。やっぱりわけのわからないものが一番怖い。そこを承知の上で書いています。
それとシリーズの決まりとして、オカ研メンバーが事件に関わって以後は、人を死なせないようにしています。心霊話なので過去に死人がいるのは当然としても、リアルタイムでは死に直面させたくない。やはり一介の大学生ですから、自分たちの活動の延長で人が死んだらメンタル的に耐えられないでしょう。とくに森司は「普通の学生」という設定なので。


――巻が進むにつれて、森司とこよみの距離はだいぶ縮まってきました。でもお互いの気持ちに気づいていながら、あと一歩が踏み出せない。もどかしい展開に、翻弄されっぱなしです。

櫛木:読者の皆さんもでしょうけど、わたしもここまで引っ張ることになるとは思ってもみなかったです。二人はもういつ付き合ってもおかしくない状態ですが、付き合ってしまうとシリーズが終わるので(笑)。やっぱり付き合うまでのモダモダが楽しいわけじゃないですか。実はシリーズの途中で編集さんから、「イケメンを登場させて、こよみの心が揺れる展開にしましょう」と提案されたことがあったんです。でも森司もこよみも他の異性に目移りするキャラクターじゃないんですね。ヒロインが主人公以外に心を惹かれたら、とくに男性読者はいい気分がしないでしょうし。だからそこはゆるーく回避して(笑)、両片思いのまま、くっつかない状況を続けています。


――途中から鈴木という新入生がオカ研に加わりました。森司、泉水に続いて、霊感のある3人目のメンバーです。

櫛木:鈴木は1回きりのゲストキャラのはずだったんですが、担当さんが彼を気に入って、レギュラー化することになりました。藍の卒業後、誰もオカ研に入部しないのも淋しいですしね。美形という設定は、レギュラー化が決まってから急遽付け加えたものです。鈴木がバイトで忙しいのは苦学生だからですが、泉水がしょっちゅうバイトに出ているのも理由があるんですよ。一番霊感が強い泉水がいるとすぐに事件が解決してしまうので(笑)、あえて出番を減らしています。鈴木の登場後は「霊への相性の良し悪しで、視えたり視えなかったりする」展開が増えましたね。

事件も甘酸っぱさもスケールアップした最新刊


――新作『ホーンテッド・キャンパス オシラサマの里』は8巻以来久しぶりの長編です。深いオカルト知識と甘酸っぱいラブコメ、そして櫛木さんのもうひとつの代名詞であるサイコサスペンスの要素が盛り込まれた、シリーズ10周年にふさわしい力作です。

櫛木:『ホーンテッド・キャンパス』に限らず、以前は警察をリアルに書ける自信がなかったんです。それで警察の出てこない事件ばかり書いてきましたが、最近は資料も集まってきたし、なんとか書けるかなという感じになってきました。シリアルキラー(連続殺人犯)はもともと趣味でサイトを作るくらい好きなジャンルですが、作品で取り上げるようになったのは『死刑にいたる病』 以降です。 『ホーンテッド・キャンパス』でもあまり取り上げてこなかったですが、 20 巻目にして満を持して……満を持すようなものか分からないですが (笑)、シリアルキラーを登場させています。


――祭りの立会人として、「オシラサマのいる村」に招かれた黒沼部長。オシラサマは東北一帯で信仰されている謎めいた神ですが、「ホーンテッド・キャンパス」で扱われるのは初めてですね。

櫛木:オシラサマはどういう信仰なのか分からない点が多い、謎の多い神さまです。今回はスサノ信仰とオシラサマを絡めて、この村独自の伝承を作りあげました。オシラサマといえば東北が本場で、舞台にしている北陸地方にはあまり伝わっていないと思いますが、だからこそ堂々とフィクションにできたという面はありますね。


――一方の森司たちは、未解決事件の真犯人を追っている退職刑事・落合を捜すことになります。落合のサイコメトリー能力の影響を受け、森司の意識が落合とシンクロしてしまう、という展開が面白いですね。

櫛木:あれは森司を夢うつつにさせたいな、という目論見で(笑)。夢うつつでこよみへの思いをダダ洩れにさせるシーンがメインです。正気でああいうことを口走れるキャラじゃないですから、藍に「もっと誉めろ」「言葉を使え」とハッパかけられるを伏線があって……という。サイコメトリーの余波という設定にしてみました。


――並行して描かれるエピソードが、ひとつに繋がるクライマックスは読み応え十分。シリーズの魅力が発揮された作品だと思いました。特にここに注目してほしい、というポイントはありますか。

櫛木:個人的にはオシラサマとスサノヲという、これまで一緒に語られてこなかった信仰の共通点を見つけだして書く作業が楽しかったです。こじつけとも言いますが(笑)。民俗学や神話が好きな方にも、ラブコメ展開がお好きで読んでくださっている方にも、楽しんでいただけるのでは……と思っています。『ホーンテッド・キャンパス』の長編は久しぶりでしたが、反響があればまたぜひチャレンジしたいです。

気になるシリーズの今後は?


――早いもので森司とこよみも3年生。あと少しで大学生活最後の1年がスタートします。シリーズの今後について、決まっていることはありますか。

櫛木:次巻のプロットはまだ何も考えていません(笑)。でも、そろそろかれらも卒業が視野に入ってきました。就職活動を書かないといけないんですが、わたしの頃の就活事情とはだいぶ変わっているはずなので、取材をした方がいいかなと思っているところです。


――今回、とうとう森司がこよみに告白するのでは、というところまで来ました。大学生活3度目のバレンタインデーは何かがありそうですね。

櫛木:どうなるんでしようか。あの二人がくっつく時はシリーズが完結する時だと決めているので、まだしばらく微妙な距離感が続くと思います。最終回についてはある程度イメージがあるんです。回収されていない伏線がいくつかあるので、それらを回収して、……という形になるんじゃないかと。この先何巻まで続けられるか分かりませんが、結ばれそうでなかなか結ばれない両片思い、の状態をもうすこしお楽しみください。
今後とも応援よろしくお願いいたします。

作品紹介



ホーンテッド・キャンパス オシラサマの里
著者 櫛木 理宇
イラスト ヤマウチ シズ
定価: 748円(本体680円+税)
発売日:2022年08月24日

オシラサマ伝説によって複雑に隠された事件の真相にオカ研メンバーが挑む!
黒沼家の分家筋にあたる白葉家はオシラサマのいる神社だ。33年に一度の特殊な儀式を見守るために、オカ研部長とその従弟である黒沼コンビが山深い白良馬村へ向かう。白葉家の本家は、娘が失踪し、長男は警察沙汰になっていた。一方、オカ研には、ある学生が相談に来ていた。それは、父親が脳卒中になり、その後サイコメトラーになってしまったという。刑事は、書置きを残して失踪してしまったという。向かった先は、白良馬村。オカ研メンバーも村へ向かうことに。元刑事が追う未解決少女連続失踪事件と、オシラサマ伝説が複雑に交差する時――事件が動いた。子を思う親の気持ち、性情、伝説が隠した真の闇――すべてのパズルがラストで見事に解明する、デビュー10周年の櫛木理宇が描く、本格ホラーミステリー。森司とこよみの恋の進展にも大注目!! ※電子書籍特典としてショートストーリーを電子版だけに特別収録!
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▼「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ
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