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特集

子どものクリエイティビティが発揮できるシール絵本『うちゅうずし』発売記念! 鈴木のりたけさんインタビュー

『ぼくのおふろ』『す~べりだい』「しごとば」シリーズなど、人気作多数の絵本作家、鈴木のりたけさんの初のシール絵本ができました。その名も『うちゅうずし』。貼ってはがせる6シート193枚のシールでオリジナルのお寿司をつくり、まるごと自分だけの絵本がつくれてしまうという驚きのアイデア。制作の背景や、本書の楽しみ方を、鈴木のりたけさんにお話を伺いました。

※本インタビューは、ヨメルバ(https://yomeruba.com/)より転載したものになります。



こんな塗り方を想像したこともなかった


――「こんばんは」とのれんをくぐると、板前さんが「へい いらっしゃい。うちゅうずしへ ようこそ」。見たこともないあんな寿司、こんな寿司……。おいしそうできらびやかで、ぞくっとしちゃうような寿司がずらっと並んでいます。ちょっと変わったお寿司絵本『うちゅうずし』が生まれたきっかけを教えてください。


鈴木:うちには3人の子どもたちがいて、僕の仕事のワークショップ用に色紙制作を手伝ってもらうことがあるんですが、ときどき子どもたちが塗った絵を見て「うわ、ここの部分、すごいおいしそうじゃん!」とびっくりすることがあるんですよ。

同じアクリル絵の具を使っていても僕自身は見たことがない、いい感じのテクスチャーなので、いったいどうやって描いているのかと思ったら、絵の具をぶちゅーーっと思いっきり出してボタボタ紙に落としたり、ぐっちゅぐちゅの筆で描いたのをガーッとヘラで塗り伸ばしたり……。適量なんか気にしない子どもならではの厚塗りの重ね塗り! こんなたっぷりの塗り方を想像したこともなかったので、「えーっ、たくさん絵の具つかうとこんなふうになるんだ、知らなかった」と僕には大発見でした。



たとえば「マグロっぽい」と感じたのは、白と赤の絵の具を多めに出してローラーで伸ばしたところで、筋やてかり具合がめちゃくちゃおいしそうなんです。まさにサシがよく入ったマグロのトロ!



他にも青魚の皮目の光ってるところだったり、寿司ネタに見えるテクスチャーがたくさんありました。このべたっとした黒い部分も、子どもが描いていたのを真似したんですが何だと思いますか? 白や銀色で塗った上に黒い絵の具をたっぷり重ねてローラーでつぶして引くと……海苔! 海苔にしか見えないテクスチャーですよ。「これは、切って貼って組み合わせたらいろんなお寿司ができるぞ」と思いました。

一方で、「寿司ネタにありえない色だけど、何かおいしそうに見えるんだよなあ」と不思議な質感のところもあって、“誰も知らないお寿司”をつくってみたくなりました。「じゃあ、架空のお寿司ってことで、宇宙のお寿司にしよう! 名前も付けよう!」と子どもたちと遊びはじめたのが『うちゅうずし』をつくるきっかけになったのです。色紙からお宝を探すように、切り出して貼り合わせ、“こんなお寿司があったらおもしろいな”という寿司を片っ端からつくっていきました。



ストーリーを楽しみながらお寿司を作る


――お子さんと遊びながら生まれた絵本なのですね。なぜストーリーがあるシール絵本にしたのですか?


鈴木:シールブックは、台紙の決まった場所にシールを貼るのものが多いですよね。その点、この絵本はちゃんとストーリーに沿って遊べることで、想像力がかき立てられやすい。子どもたちが自由にクリエイティビティを発揮して楽しめるんじゃないかなと。

それにシールなら、気軽にページに貼ったりはがしたり、何枚も上から重ねたりして遊べる。何度でも貼ってはがせるので、みなさんにたくさん遊んでもらえるんじゃないかなと思ったんですよね。


――実際にはどのように遊べばいい?



まずは、ふつうの絵本と同じように読んでみてください。毛むくじゃらの親子が「まずろ ひとつ ください」と注文するページ、右ページの黒いお皿には何も載っていませんよね。この空のお皿の上に「まずろ」の寿司ネタとシャリをシールシートから組み合わせて貼ります。

次の「さい」「にゃあご」「てんかまき」も、おしながきの中にあるお寿司。鯛じゃなくて角がはえた「さい」、煮アナゴじゃなくて「にゃあご」。鉄火巻きじゃなく天下を取れそうな金色の「てんかまき」(笑)。味を想像しながら名前をつけるのもおもしろいですよ。



想像力を駆使して、オリジナルのお寿司をつくって


――ストーリーに沿ってお寿司をつくって遊ぶんですね。


鈴木:みなさんは、お店にやってくるお客さんたちの注文に応じたつもりになって、お寿司をつくります。登場人物と器は描いてあるので、193枚のシールの中から想像力を駆使して、オリジナルのお寿司をつくってください。

後半は、新メニュー開発や寿司対決がありますから、腕の見せどころです! 金具、ロウソク、王冠や果物、クリーム、色とりどりの玉など、とにかくいろいろな素材シールがあるので、「うちゅうずし」らしい誰も見たことのないお寿司をつくってほしいなと思います。


▲「しごとば」シリーズの寿司職人を取材した経験が、本づくりには存分に生かされているそうです!


――クライマックスは、いよいよ宇宙一を決める寿司大会。テーマにあわせたお寿司をつくるのはなかなか難しそうですね。



鈴木:宇宙のいろんな星から挑戦者がやってくる大会ですからね、「うわあー、こんなのつくっちゃったよ!」と自分でも笑っちゃうくらい突き抜けた、おもしろいお寿司づくりに挑戦してみましょう!「いいの。どっかの惑星にはこんなお寿司があるの!」と堂々とした気持ちでスペシャルなお寿司をつくりあげてください。めざせ、宇宙一!!

ちなみに「うちゅうずし」の店内をずっと外からのぞいている、あやしいトレンチコートの人物がいるんですよ。実は大会にエントリーしている挑戦者なので、どこにいるか探してみてくださいね。

木工用ボンドを使うアイディアも子どもから


――制作で悩んだところはありましたか?



鈴木:シャリをどうやってつくろうかというのはけっこう悩みましたね。せっかく寿司ネタの部分を、偶然のダイナミズムを生かしているのに、シャリだけ手描きはかっこ悪いぞ、何とかいい方法はないだろうか……と試行錯誤しました。

あるとき子どもが、木工用ボンドに水と青い絵の具をまぜて、白濁したような液体をクリアファイルの上に垂らし、固まったらぺりぺりとはがして、窓にはりつけてステンドグラス風を楽しむ、というのをインターネットで見つけて遊んでいたんですね。

その質感がちょうど「ねちっ」「てかっ」としてて「これでやってみたらいけるかも!?」とひらめきました。そこで「どうやってつくるの?」とこれまた子どもに教えてもらったんですよ(笑)。

具体的には、黄色と白のアクリル絵の具をまぜてシャリの色をつくり、木工用ボンドと水で溶いて、クリアファイルにちょんちょんと筆先でつけていきます。乾くと、木工用ボンドの効果で一粒ずつ盛り上がった、シャリらしい米粒ができるんです。クリアファイルにびっしり4、5枚分くらいつくったかな。それを3日がかりで1粒ずつ、2枚の寿司桶に貼りつけました。





お寿司っておいしいアート


――ちなみに、鈴木のりたけさんはどんなお寿司が好きですか?


鈴木:アジ、イワシ、サンマといった青魚の光り物が大好きです。マグロはもちろん、貝も好きですよ。平貝はちょっとあぶると味がひきしまるんですよね。ホッキ貝もいいですね。僕の“寿司愛”はもちろんこの本のベースになってますよ。


――シール絵本『うちゅうずし』を日常のどんなシーンで、どんなふうに楽しんでほしいですか?


鈴木:シール絵本なので、お出かけ先や、車や電車の移動中も遊べるかなと思います。

でも家の中で、お菓子のパッケージや柄模様のついたビニール袋、包装紙、広告紙など家じゅうの素材を探して、自由に切って貼って遊んでもらえたらそれも嬉しいですよね。僕たちと同じ、素材探しから楽しむ遊び方ですから。

1つ、おすすめするやり方は、お寿司の形に切った枠を用意して、いろんな素材に当ててみることです。そうすると、「わ、ここおいしそう」とか「舌がぴりぴりしそう」「ふわふわしてそう」と想像が広がります。想像遊びのきっかけにしてもらったら嬉しいです。



――最後に、『うちゅうずし』を手にとる読者へメッセージをお願いします。


鈴木:とにかくお寿司ってすごい食べ物ですよ。おいしいし、見た目もおもしろい。白い握りの上に何か乗ってるだけで“お寿司”っぽくなる。完成されたデザイン性といい、目を引くたたずまいといい、あらためてお寿司のすごさを再認識しました。絵描き魂をくすぐられる素材なんですよねえ、お寿司って……。アートで、声に出したら名前も楽しいお寿司づくりを、みなさんもこの本で存分に楽しんでくださいね!



鈴木 のりたけ

1975年、静岡県浜松市生まれ。グラフィックデザイナーを経て、絵本作家となる。『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞、『しごとば 東京スカイツリー』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞、ほか受賞多数。主な絵本作品に、「しごとば」シリーズ(ブロンズ新社)、『ぼくのおふろ』『す~べりだい』(PHP研究所)、『かわ』(幻冬舎)、『おしりをしりたい』『おつかいくん』(小学館)、『とんでもない』(アリス館)、『へんがおたいそう』(NHK出版)など多数。好きなお寿司はアジ。

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