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特集

現役大学生とは思えない堂々の書きっぷり――小説すばる新人賞受賞作『闇夜の底で踊れ』著者インタビュー

取材・文:編集部

35歳、無職、パチンコ依存。その日暮らしの無為な生活を送る元極道の男が、ソープ嬢に恋をしたことがきっかけで、ふたたび闇社会の混沌へと飲み込まれてゆく——。
『闇夜の底で踊れ』で小説すばる新人賞を受賞された増島拓哉さんにお話をうかがいました。

── 小説すばる新人賞受賞おめでとうございます。

増島: ありがとうございます。受賞のことは自分からは周りに言っていなかったのですが、同級生や母親のママ友からちらほらとお祝いの連絡をもらいました。祖母が特に喜んでくれて、抄録の載った「小説すばる」を知り合いに配っていたみたいです。

── 19歳の現役大学生とは思えない堂々の書きっぷりに驚かされました。小説はいつ頃からお書きになっていたのですか?

増島: 高校生の頃に文藝部に所属していたので、掌篇はその頃から書いていました。他誌の新人賞にも時代物の短篇を書いて応募したことがありましたが、長篇に挑戦するのは今回が初めてでした。

── 初めての長篇で、ハードボイルドを選んだ理由は?

増島: 様々なジャンルの小説を読む中で、一番面白いと思ったのがハードボイルドだったので。小説家を志したのも、大沢在昌さんの『新宿鮫』を読んだことがきっかけでした。映画では、北野武監督の『アウトレイジ』や『ソナチネ』が好きなので、宮部みゆきさんから選評で「『アウトレイジ』シリーズを彷彿とさせる」と言っていただけたのは嬉しかったです。

── 読む本を決める際の基準などはありますか?

増島: 本も映画も、なるべく広いジャンルに触れるように心がけています。あとは、好きな作家さんが誉めていたものはチェックすることが多いです。

── 大阪弁のテンポの良い会話が魅力的で、読んでいて何度もクスリとさせられました。

増島: 生粋の大阪人なので、以前は『新宿鮫』やチャンドラーの翻訳小説などを読み標準語に憧れた時期もあったんですが、高校生の頃に黒川博行さんと町田康さんの小説に出会い、大阪弁も案外悪くないな、と思うようになりました。それまでは、横浜あたりに生まれたかったと思っていたのですが(笑)。子供の頃からお笑いが好きだったのも、登場人物たちのやりとりには活きているかもしれません。本作の会話シーンは桂枝雀の落語を聴きながら書いていました。

── 増島さん自身は、主人公の伊達と似ているところはありますか?

増島: 伊達と違って自分からよく喋るタイプではありません。それから伊達はパチンコ依存症ですが、パチンコには一度も行ったことがないので、YouTubeでパチスロ動画を観たりして勉強しました。歳も随分離れているのですが、精神年齢が低いキャラクターなので、そこは苦労せずに書けました。

── 選評ではキャラクター造形に関しても高く評価されていました。それぞれ登場人物にモデルはいますか?

増島: 基本的には、登場人物にモデルはいません。唯一、パチンコ店の常連の平田ひらたというキャラクターだけは、母方の祖父をイメージして書きました。パチンコはしませんでしたが、酒と煙草が好きな人だったので。

── 受賞作は、主人公である伊達の一人称と、かつての兄貴分・山本の視点による三人称が交互に登場する構成になっています。

増島: 山本がクラブでホステスを殴るシーンをどうしても書きたくて、あのシーンから書き始めたのです。基本的にはシーン先行で、ストーリーやキャラクター設定は、書きながら作っていきます。賞に応募しようと思ったのも、誰かに読んでもらうつもりじゃないと楽しいところだけ書いて終わっちゃいそうだと思ったので。伊達も、はじめはただのダメ人間というだけだったんですが、書いている途中で元ヤクザという設定にしたら、そこから話が膨らんでいったという感じです。

── 大学での勉強が、小説の執筆に活きているところはありますか?

増島: 大学では法律を学んでいるのですが、作中にときどき出てくる法律関連の話は、授業で聴いたことをそのまま書いています。

── サークルはミステリー研究会に入っているとのことですが、本作も伏線の回収が見事です。

増島: 一番はじめに読んだ小説は、コナン・ドイルの『緋色の研究』でした。でも、本格ミステリーは自分には書けないな、と読むたびにいつも思ってしまいます。

── 今後はどのような作品を書かれるのでしょうか?

増島: しばらくは今回のようなジャンルのものを書くつもりです。瑞々しい青春の一ページよりも、こういった話の方がうまく書ける気がするので(笑)。


増島 拓哉

1999年大阪府生まれ。関西学院大学法学部在学中。2018年、『闇夜の底で踊れ』で第31回小説すばる新人賞を受賞しデビューする。

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