ブックコンシェルジュ

推理も世界もひっくり返る。「多重解決ミステリ5選」
多重解決ミステリをご存知ですか。
知っている方はご容赦を。一つの出来事に対して提示される推理が複数あって、それらが並行して語られたり、互いに対抗しあったり、後の推理が前の推理を上回り、塗り替えたりしていくものです。言うなれば推理合戦。
一つの推理が展開されるとき、それが納得のできるものであれば、読者には物語がその推理通りに進行したように見えます。誰が、なぜ、いつ、何を、どのようにしたのか。推理が物語の「現実」を作ります。そして多重解決ミステリにおいては、その「現実」が何度でも姿を変えて、読者を惑わせる。
けれどそんな「現実」でも愛してしまうのは、展開される推理が、生み出される「現実」が、どれも鮮烈で魅力に溢れているから。
今日ご紹介するのは、新しい推理に幾度も打ちのめされて、だのに読むのをやめられない、やみつきの多重解決ミステリ5選。
――信じてたのに。どうして。
小説の外の世界でも、突然の出来事に、信じていた現実を見失って呆然とすることがあります。昨日までの世界が、今日は別物。けれどもしかしたら、裏切ったように見える日常や、信頼していた誰かは、あなたの「推理」でもう一度、読み替えられるのを待っているのかもしれない。「推理」が現実をつくる。人生も、そんなふうに多重解決できたらと、思いはじめる秋の夜長です。
現実をもう一度読み替える。おすすめの「多重解決ミステリ5選」
白井智之『エレファントヘッド』(KADOKAWA刊)
本格ミステリ大賞受賞の鬼才が仕掛ける、空前絶後の推理迷宮。
精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
謎もトリックも展開もすべてネタバレ禁止!
前代未聞のストーリー、尋常ならざる伏線の数々。
多重解決ミステリの極限!
(あらすじ:KADOKAWAオフィシャルHPより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322306000038/
著:アントニイ・バークリー、訳:高橋泰邦『毒入りチョコレート事件【新版】』(創元推理文庫刊)
謎解き小説の離れわざ。
●有栖川有栖氏推薦――「推理合戦のルーツ。ミステリの〈根拠〉をほどきながら結ぶという魔術。」(創元推理文庫40周年記念小冊子より)
●奥泉光氏推薦――「ここで解き明かされるのは、ミステリーなるジャンルそのものの秘密である。」
ロジャー・シェリンガムが創設した「犯罪研究会」の面々は、迷宮入り寸前の難事件に挑むことになった。被害者は、毒がしこまれた、新製品という触れ込みのチョコレートを試食した夫妻。夫は一命を取り留めたが、夫人は死亡する。だが、チョコレートは夫妻ではなく他人へ送られたものだった。事件の真相や如何に? 会員たちは独自に調査を重ね、各自の推理を披露していく──。解説=杉江松恋
深木章子『欺瞞の殺意』(角川文庫刊)
このミス、本ミスW受賞の注目作。往復書簡で真相に迫る、本格ミステリー
昭和41年。地方の資産家楡家の当主がゴルフ中に心筋梗塞64才で逝去。親族しかいない法要が屋敷で執り行われるがそこで殺人事件が起こる。長女と孫(早死にした長男の子)がヒ素で死んだのだ。調査を進めると、殺された長女の婿養子の弁護士のポケットから、ヒ素をいれたチョコレートの紙片が発見された。
「わたしは犯人ではありません。あなたはそれを知っているはずです――。」
無実にもかかわらず「自白」して無期懲役となったその弁護士は、事件関係者と「往復書簡」を交わすことに。「毒入りチョコレート」の真犯人をめぐる推理合戦は往復書簡の中で繰り広げられ――、やがて思わぬ方向へ「真相」が導いていく――。「このミステリーがすごい!」2021年版 国内編(宝島社)と「2021年本格ミステリベスト10」国内ランキング(原書房)で堂々7位のW受賞作品。A.バークリーの『毒入りチョコレート事件』をオマージュとした本格ミステリ長編。
(あらすじ:KADOKAWAオフィシャルHPより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322209001180/
深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』(講談社文庫刊)
多重解決の究極にしてミステリー・ランキングを席巻した怒濤の傑作!!
連続殺人に挑むのはミステリー読みのプロたち――。
15ある解決案のどれが真相か?
嵐で孤立した館で起きた殺人事件!
国民的娯楽番組「推理闘技場(ミステリー・アリーナ)」に
出演したミステリー読みのプロたちが、早い者勝ちで謎解きに挑む。
誰もが怪しく思える伏線に満ちた難題の答えはなんと15通り!
そして番組の裏でも不穏な動きが……。
井上真偽『その可能性はすでに考えた』(講談社文庫刊)
奇蹟を追い求める探偵・斬首集団自殺の謎に挑む!
山村で起きたカルト宗教団体の斬首集団自殺。唯一生き残った少女には、首を斬られた少年が自分を抱えて運ぶ不可解な記憶があった。首無し聖人伝説の如き事件の真相とは? 探偵・上苙丞(うえおろじょう)はその謎が奇蹟であることを証明しようとする。論理の面白さと奇蹟の存在を信じる斬新な探偵にミステリ界激賞の話題作。
こちらの記事もおすすめ!
【2023年ミステリ小説決定版】年末までに読んでおきたい、おすすめミステリ小説5選
https://kadobun.jp/feature/book_concierge/entry-79118.html
謎と驚異の詰め合わせ。「ミステリ短編集5選」
https://kadobun.jp/feature/book_concierge/entry-75746.html
情報を奪い合え。「サイバーミステリ小説5選」
https://kadobun.jp/feature/book_concierge/entry-75014.html