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《6・28公開映画「新聞記者」劇中座談会も収録》同調圧力に屈しない人々が、世界を変える『同調圧力』

「同調圧力」をキーワードに、東京新聞記者の望月もちづき衣塑子いそこ氏、元文部科学省事務次官前川まえかわ喜平きへい氏、アメリカ人ジャーナリストのマーティン・ファクラー氏がそれぞれの体験を語っていく。
 最初は望月氏。すが官房長官から「事実に基づかない質問をするな」という圧力がかかったエピソード等が語られる。望月氏が同調圧力を感じているかというと、実はそれほど感じてはいなかったという。それは望月氏が社会部所属であり、政治部所属記者のように政治家と馴れ合う必要が無いのが影響しているそうである。そんな望月氏でも、同調圧力を感じざるを得ない場面があった。共同通信の記事に、ある官邸記者クラブ所属記者の言葉として、「望月さんが知る権利を行使すれば、クラブ側の知る権利が阻害される。官邸側が機嫌を損ね、取材に応じる機会が減っている」と書かれたのだ。さすがにまずいと思ったのか、当該部分は後に削除された。権力と対峙すべきジャーナリズムが、権力に忖度し、同調圧力をかけて反権力的な質問を封殺しようとしたのである。あってはならないことである。
 このような同調圧力に対し、望月氏は屈しないし、一人で闘っているわけでもない。東京新聞の同僚や記者仲間、そして、SNS上で応援してくれる人達に大いに励まされ、勇気をもらっているという。そして最後にこう結ばれている。

誰のために報道するのか。何をするために報道しているのか。原点に立ち返れば、同調圧力が頭をかすめることはない

 次は元文部科学省事務次官の前川喜平氏。年功序列と減点主義による人事が根強く、「何もするな」という同調圧力がかかる官僚の世界において、前川氏は「面従腹背」の姿勢を貫く。周囲との無用な軋轢あつれきは避けつつ、しかし少しずつ変えていく。自分の本当にやりたいことをやるために。
 前川氏が最も明るい思い出として挙げるのは二〇一六年十二月の教育機会確保法の成立である。同法は、学校以外での多様な学びの場の重要性を初めて正面から認め、例えば義務教育を十分受けられなかった人々のため、夜間中学等の学習の場を確保することなどを自治体に求めた。同法の成立に深く関与した前川氏は、退官後、なんと自ら福島駅前の夜間中学でボランティア教師を務めたのだ。教育に対する熱い情熱を感じる。
 現在の日本について、前川氏の次の言葉が印象的であった。「自分自身の座標軸を自分のなかに確立できなければ、どのような生き方をすることになるのか。長いものに巻かれることを善と受け止め、強い権力に同化させることで自らのアイデンティティをもとうとする。無意識のうちに同調圧力に屈し、忖度や委縮を絶えず繰り返す。そうした人間が増えているのが今の日本だと思う。自ら考える力を育てる教育が今こそ必要だと声を大にして、あらためて訴えたい」。
 最後はアメリカ人ジャーナリストのマーティン・ファクラー氏。日本と比較すればアメリカのメディアは同調圧力とはおよそ無縁に思える。しかし、そこにはベトナム戦争の時の痛烈な反省があった。政府から出された都合の良い情報ばかりが報じられていたのだ。
 しかし、若手ジャーナリスト達が勇気をもって現状を伝えた。政府だけでなく、国民からも凄まじい同調圧力がかかったが、彼らは屈しなかった。それはやがて世論を動かし、戦争を終結させたのだった。同調圧力への抵抗が、世界を変えたのである。
 このような苦い経験を経て、アメリカのジャーナリズムは、今の姿勢を形成している。アメリカ政府の同調圧力に全力で抵抗しているのだ。同じ過ちを繰り返さないために。
 人間は集団でなければ生きられない。そのために、同調圧力にある程度屈してしまう特性が備わっているのかもしれない。しかし、全ての人が屈するわけではない。そして、集団が誤った方向に向かっている時、それを正すことができるのは、同調圧力に屈しない人だけである。この本はそのことを教えてくれる。


ご購入&試し読みはこちら▶望月 衣塑子 / 前川 喜平 / マーティン・ファクラー『同調圧力』


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