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レビュー

【評者:美村里江】若くはない女性たちの非日常的瞬間に、淡い青春が翻る 『さいはての彼女』

 ふと思い起こすと、20代は「自分ではない何者か」に憧れがあり、等身大の主人公に興味はなかった。むしろ男性主人公の小説を好んでいた気がする。
 ところが30代になると「自分は何者なのか」に興味がいくようで、同年齢、または少し年上の同性の物語に強く共鳴する。本作もまさにそんな一冊だ。
 各短編の主人公は、全員35歳を超えた女性4名。予定外の旅先や、急遽の一人旅、突然の異性の来客により、非日常が彼女たちを覆う。
  “自分”の濃度を高め一生懸命に生きてきたけれど、それだけでは息苦しいと気付いた先の物語。派手な出来事は起きない反面、彼女たちの内面がじんわりと変化していく描写が丁寧だ。
 前後編で主人公と対比する若き女性。ハーレーを乗りこなす「ナギ」の魅力については、彼女の愛車“サイハテ”の疾走描写と共に味わってほしい。
 美術系の執筆も多い著者の特性として、風景描写に瑞々しい色彩が浮かび上がる点も良い。秋雨上がりの潤んだ森や、丹頂鶴の舞う雪原を堪能し、読むだけで爽やかな旅の満足感を得た。

>>原田 マハ『さいはての彼女』


==▽美村里江さんの書評記事はこちら==
綻びだらけの後妻作戦の裏で、予想外の“心”が影を落として『誤算』
https://kadobun.jp/reviews/576/41cd7cde
現実味と創造性を自在に扱う小説家は、読者を満腹にさせる。『敗者の告白』
https://kadobun.jp/reviews/457/004a43ae
自分の書いた小説の登場人物と、ふとした街角ですれ違う気持ちは……。『霧笛荘夜話 新装版』
https://kadobun.jp/reviews/330/02d5f2ae
甘い辛い苦い酸っぱい塩辛い……。“カネ”の五味を味わってきた作者からの激励『この世でいちばん大事な「カネ」の話』
https://kadobun.jp/reviews/252/e07b371f
「家族」という名の植物が、「日常」を支柱に蔓を伸ばし、姿形を変えていく『水やりはいつも深夜だけど』
https://kadobun.jp/reviews/142/0d660eb7


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