【連載第8回】河﨑秋子の羊飼い日記「羊と山羊のあいだと君の名は」
河﨑秋子の羊飼い日記
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北海道の東、海辺の町で羊を飼いながら小説を書く河﨑秋子さん。そのワイルドでラブリーな日々をご自身で撮られた写真と共にお届けします!
>>【連載第7回】「かわいいはこわい」
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緑の牧草地で子羊が群れ遊ぶ初夏。観光シーズンでもある現在、観光客の方が車を停めて羊を見ていくことがある。畑に侵入しさえしなければまったく問題はない。どうぞご覧下さい。
ただし。
「きゃー、ハイジの世界みたい。ユキちゃーん!」
このような歓声を聞くたびに、(いえハイジ山羊飼いですから! ユキちゃん山羊ですから!)というツッコミを心の中で入れている。
羊と山羊は似ているようで結構違う。食性や肉付きなど、身体的に細かな違いもあるが、一番差が大きいのは性格のような気がする。羊は基本、一般のイメージ通りに大人しい。対して山羊は、フレンドリーというか積極的というか率直に言ってあつかましい。(※個人の感想です。なお筆者は山羊も好きです)
特に発情時、メス羊は発情しても行動にほぼ変化はないが、メス山羊はソワソワウロウロとやかましくなる。この差が、キリスト教文化圏では“羊=貞淑、望ましい信徒の象徴”“山羊=好色、悪魔的なるもの”のイメージとなったらしい。ワールドワイド、しかも千年単位でネガキャンか…と思うと、ちょっと山羊に同情する。(ちなみに飼育上、発情がわかりやすいのはメリットでしかない)
ところで先月、当コラム用に編集部へ子羊の写真を送った。それがTwitterで公開された時の紹介文は、『河﨑さん牧場のあかちゃんヤギ』…。
子どもの頃から“河”と“川”、“崎”と“﨑”を間違われまくり、もはや公的文書以外ではどう書かれても構わない、ぐらいの気持ちでいる私だが、“羊”と“山羊”だけは間違えてもらっちゃ困る。大人げないが羊飼いとしてささやかにツッコミを入れさせて頂こう。
河﨑秋子(かわさき・あきこ)
羊飼い。1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。大学卒業後、ニュージーランドにて緬羊飼育技術を1年間学んだ後、自宅で酪農従業員をしつつ緬羊を飼育・出荷。
2012年『北夷風人』北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。2014年『颶風の王』三浦綾子文学賞受賞。翌年7月『颶風の王』株式会社KADOKAWAより単行本刊行(2015年度JRA賞馬事文化賞受賞)。
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