カドブンノベルをご愛読いただいた皆様へ
2020年12月号をもって、いったん、カドブンノベルを休刊する運びとなりました。
ガラケーからスマホへ、PCからタブレットへ、時代もデバイスも、日々めまぐるしく変化している中、いつでも思いたったときに、自由に、好きなだけ、最旬の物語が楽しめるように。電子媒体だからこその、のびやかで勢いのある、チャレンジングな試行錯誤を、様々重ねてまいりました。そんな挑戦を面白がり、共鳴してご寄稿くださった作家の方々、そしてその物語を楽しみ、支持してくださった読者の皆様の存在に、あらためて深くお礼申し上げます。
脈々と築きあげてまいりましたこの大きな物語の流れと、培ってまいりましたデジタルの知見を活かして、さらに自由で驚きに満ち、パワーアップした媒体を、2021年春にはお届けできるよう、編集部一同、日々学びを深め、鋭意準備を重ねております。これからお届けすることになる物語にも、これまでと変わらぬ、あたたかなお気持ちを寄せていただけますように――再会を期しつつ、改めてお願い申し上げます。
長きにわたってのご愛読、本当にどうもありがとうございました。
カドブンノベル編集長
松崎夕里
一挙掲載
呉勝浩「スワン」
新連載
榎田ユウリ「武士とジェントルマン」
藤野恵美「きみの傷跡」
読み切り
神永学「心霊探偵八雲 占い師」
連載小説
赤川次郎/新井素子/伊東潤/櫛木理宇/真藤順丈/須賀しのぶ/大門剛明/竹本健治/谷村志穂/中山七里/似鳥鶏/藤井太洋/三羽省吾/宮木あや子/夢枕獏
エッセイ
今野敏/酒井順子/でんすけのかいぬし/はらだ有彩
今月のおすすめ
一挙掲載 呉勝浩「スワン」
ショッピングモールで起きた無差別銃撃事件。
あの日、あの場所で本当は何が起きていたのか――。
圧倒的なリーダビリティで贈る2019年最大の問題作、600枚堂々一挙掲載!
著者より
根が臆病者ゆえか、ことさら理不尽を恐れています。自然災害に病気や事故も嫌ですが、人の悪意がいちばん怖い。悪意に牙をむかれたとき現れそうな、自分の本性も恐ろしい。間違いなく、とてもおぞましい姿だろうから。
面倒な題材を選んでしまうのは「逃げられない」と感じるからです。「逃げない主人公」が見つかれば、良い作品になる予感がします。理不尽な悪意と悲劇。生き残った者たちが抱える「真実」を、ぜひお確かめください。
編集部より
思わず言葉を失うような事件が起きた時、人は「現実が小説の想像力を超えた」と言いがちです。果たして本当にそうなのでしょうか。ショッキングなテロのニュースが頻繁に流れる2019年、小説の想像力は、物語の力はどこまで有効なのか――その答えの一つが、この「スワン」だと思っています。決して難しい小説ではなく、一気読み必至のエンタメ作品です。そして読み終えた後に見える風景は、私にはこの上なく美しいものに思えました。
新連載 榎田ユウリ「武士とジェントルマン」
大学講師として来日した英国人・アンソニー。
だが居候先の青年は、武士(本物)だった!
英国紳士と青年武士の不思議な同居生活、スタート!
著者より
こちらでははじめまして、そして新連載よろしくお願いいたします。
武士と英国紳士です。寿司の横にローストビーフを置いた感じでしょうか。あんみつの上にスコーンが乗ってる、もアリかと思います。その場合、かけるべきは黒蜜かメイプルシロップか……両方でもいいかも?
武士が出てきますが、舞台は現代日本となっています。英国紳士については、だいぶ私の趣味です。なんじゃそら、と思いながら読んでいただければ幸いです。
編集部より
「宮廷神官物語」「カブキブ!」シリーズなどが大人気の榎田ユウリさん、本誌初登場です! 榎田尤利名義でのBL作品に馴染みがある読者さんも多くいらっしゃるかもしれません。本作品はBLではないのですが、ふたりの魅力的な男性が異文化交流します。ひとりは英国から来た大学教授(ジェントルマン)、そして彼を迎えるのは、なんと武士の青年! 舞台は現代日本ですが、この日本には「武士」が居るのです。凸凹コンビの日常にご注目ください。
新連載 藤野恵美「きみの傷跡」
大学2年生の星野は、
男子校出身で女子に免疫がない。
所属する写真部の新歓中に、
カメラを首から下げた女子と出会って……。
みずみずしいボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー。
著者より
本作は『わたしの恋人』『ぼくの嘘』『ふたりの文化祭』に連なるシリーズとなっていますが、主人公は異なりますので、もちろん、このお話から読んでいただいても、まったく問題ありません。
ただ、主人公である星野公平の友人として、『ぼくの嘘』の主人公だった笹川勇太が出てきたりしますので、シリーズを通して読んでいただくと、より一層、楽しめるかと思います。
これまでの作品は高校を舞台にしていましたが、今回は主人公が大学生なので、恋愛というテーマのもっと深い部分に踏み込んでいきたいです。
編集部より
「目が合っただけで、好きになってしまう。」この冒頭から惹き込まれます藤野さんの新作「きみの傷跡」。それぞれ異性との付き合いをあまり得意としない男女の、みずみずしい青春ストーリーが開幕しました。大学の写真部の新歓で出会ったふたりが、少しずつ距離を縮めていく様子に担当はキュンキュンしています。実は女子の花宮さんのほうには、ある事情が存在するようなのですが……。相手にきちんと向き合うことの大切さを感じる物語になりそうです!