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寺田心が「ギリギリ変声期前の声」で挑んだ主人公! 「屋根裏のラジャー」制作報告会見レポート

左から百瀬義行監督、イッセー尾形、寺田心、安藤サクラ、西村義明プロデューサー。全員の作品愛がひしひしと伝わった。


手書きアニメーションで描き出す、ファンタジー大作!

 長編第一作「メアリと魔女の花」が150の国と地域で公開され、その存在感を知らしめたスタジオ・ポノック。その最新長編アニメーション「屋根裏のラジャー」がいよいよ公開となる。
 原作はイギリスの詩人で作家のA・F・ハロルドによる「The Imaginary」。本国のみならず、日本でも愛されている一冊だ。物語の主人公・ラジャーは、少女アマンダの想像が生み出した彼女以外には見えない存在=「イマジナリ」。彼はアマンダとともに想像の世界に飛び込んで、楽しい毎日を過ごしていたが、「イマジナリ」には人間に忘れられると消えてしまうという逃れられない運命が待ち受けていた…。やがて、ラジャーと「イマジナリ」の仲間たちは彼らの大切な人と、「家族」の未来を懸けた大冒険の旅に出る――。
 本作で監督を務めるのは百瀬義行。スタジオジブリで、高畑勲監督「火垂るの墓」から「かぐや姫の物語」までの全作品で重要な役割を担い、高畑監督が「片腕から抜け出して両腕」と全幅の信頼を寄せたエキスパートだ。また「メアリと魔女の花」、「かぐや姫の物語」、「思い出のマーニー」を手掛けてきた西村義明プロデューサーが、手書きのアニメーションにこだわり、フランスの熟練アニメーターの協力も得て、本作を完成に導いた。その制作報告会見には、百瀬監督と西村プロデューサーのほか、声優陣が登壇。その魅力をアピールした。


ラジャー役の寺田心は本作が声優初挑戦。オーディションでこの役を獲得。会見では自身にも、イマジナリー・フレンドがいたと告白!

寺田がラジャーと同じ服装でオーディションに挑戦!

 制作報告会見の場で発表されたのはラジャー役の寺田心ほか、鈴木梨央、安藤サクラ、仲里依紗、山田孝之、高畑淳子、イッセー尾形といった本作の豪華声優陣。彼らを代表して、笑顔で挨拶をしたのは寺田。「本日はよろしくお願いします! 本当に公開を楽しみにしていた作品です」と話す彼は、このラジャー役が意外にも声優初挑戦。脚本を初めて読んだ際には、ラジャーに自分自身を重ねて「僕がいる!」と直感。その後のオーディションでは、資料として提供されたラジャーのイラストをもとに、ボーダーのTシャツに青のパンツというラジャーの服装を再現して、選考に向かったとのことで、並々ならぬ思い入れにはスタッフ陣も驚いたそう。「他の誰かではなく僕自身が演じたいと思い、役が決まったときは涙しそうになりました!」とオファー時を振り返る寺田。百瀬監督は「最初から、その声がラジャーにしか聴こえませんでした」と応じ、西村プロデューサーも「圧倒的な上手さでしたね」と、抜擢の理由をコメントした。
 また、アフレコ収録中に寺田が変声期を迎えたとのことで、西村プロデューサーは、一部のシーンではプレスコ(声に合わせて、アニメーションの映像を作る手法)で、声換わり前ギリギリの寺田の声で、ラジャーの収録を行なったと異例の現場だったことを明かした。


少女アマンダの母、リジーを演じるのは安藤サクラ。声優として、アニメーション映画に参加するのは初。

 寺田の語り口を優しく見守るのは、リジー役の安藤サクラ。是枝裕和監督「怪物」の名演で知られる彼女も寺田同様に、「絶対にこの役を演じたいと思いました」と力強く続ける。「私たちの仕事はどうしても現実と虚構の間を行き来する仕事です。そうしたことを続ける中で、自分が周りの大人と比べると、ちょっと変わっているのかもしれない…そんなふうに思うこともありました。でも、このキャラクターたちのように、想像の中でしか生きられない彼らの物語にすごく背中を押されたんです」と自分自身が作品から力をもらった旨をコメント。この役を得て、原作の「The Imaginary」の日本語版を娘に読み聞かせしているエピソードも語り、作品との出会いを喜んでいた。


「顔を観たときに親近感が湧きました」とMr.バンティング役との出会いを興奮ぎみに振り返るのはイッセー尾形。

本当にいた!?「イマジナリ」=「イマジナリーフレンド」

 会場でお披露目された特報映像で声の存在感を際立たせていたのは、「イマジナリ」の世界でラジャーたちを狙うMr.バンティング。その声を演じたのは一人芝居の第一人者、イッセー尾形だ。イッセーは、Mr.バンティングのキャラクターを見て、即出演を決定した様子。その顔に親近感が湧き、彼もまた「私そのもの」と思ったようだ。「声優挑戦は今回が3、4回目です。だんだんコツがわかってきました(笑)」と役柄同様、不敵な笑みでニヤリ。緊張のアフレコの模様などを解説する姿は、イッセーのライフワークの一人芝居のようで、会場の笑いを誘っていた。


「冒険をしているような感覚で、毎日ラジャー役が抜けませんでした」と楽しそうにアフレコの模様を語った寺田。

 記者からの質疑応答では、寺田自身に実際に「イマジナリ」=「イマジナリーフレンド」はいたかを問う、本作らしい質問が投げかけられた。「小さい頃に母からもらったくまのぬいぐるみが、まさにそうでした。本当に僕と一緒に撮影の現場に行ったし、よく話しかけてくれました。でもあるときから彼の声は聴こえなくなってしまって…。もう一緒に寝たりすることはないのですが、心はいまも一緒です」と振り返る。ラジャー役への情熱は、彼の「イマジナリ」との日々にルーツがあるようことがわかった一幕だった。


キャリア50年以上を誇る百瀬監督。「これまでより洗練された表現の絵作りを本作で目指しました」と完成作への自信を覗かせる。

「忘れられてしまうという宿命は悲劇なのだろうか」

 会見では、これまでに高畑勲監督などでタッグを組み、互いの手腕に信頼を寄せる、西村プロデューサー、百瀬監督が作品の魅力をアピールするシークエンスもあった。西村プロデューサーは本作を制作した、きっかけとして、「「メアリと魔女の花」以降、次に何を作るか考えた時に出会ったのがこの作品でした。子どもが創造した少年が主人公の物語で、想像から生まれた少年は、忘れられると消えてしまうんです。忘れられてしまうという宿命は悲劇なのだろうか。それは人間も同じではないのか。ならば、それは悲劇ではないのではないか。というのが僕らの出発点でした。そこから、僕らはこのお話を悲劇ではなく、希望の物語として映像化することに決めました。結果、光の当て方、観る方の視点によってまったく違う輝きを見せる作品になったと思います」と本作を映画にした動機とともに、並々ならぬ思い入れからの映像化であったことを語った。


約1年あまりの公開延期を経た本作。さまざまな苦難を乗り越えた末のこの日だという西村プロデューサー。

 続く、百瀬監督は「最近、関係者でゼロ号試写をしまして。そのときのスタッフの反応が良く、手応えになりました」と万感の表情。本作は西村プロデューサー曰く「手描きアニメ2.0」として、新たな表現に挑戦した作品とのこと。その内容の一部を百瀬監督が教えてくれた。「本作はまず、絵のスタイルを従来のアニメとは変えました。たとえば、キャラクターに関しては、その皮膚感を表現できないかを模索し、皮膚の下に肉、血管、骨があるという部分を追求していったんです」と本作ならではの創作のアプローチに言及。二人からは、作り手としての情熱と矜持が、会見の合間に何度も垣間見え、期待は募るばかり。
 摩訶不思議な世界への大冒険を描く「屋根裏のラジャー」。スタッフ、キャストの、作品への溢れるほどの想いの丈を聞き、この冬の公開が待ち遠しく感じる会見だった。


「屋根裏のラジャー」
原作:A.F.ハロルド「The Imaginary」(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)
監督:百瀬義行
プロデューサー:西村義明
キャスト:寺田 心 鈴木梨央
安藤サクラ/仲 里依紗 山田孝之
高畑淳子/イッセー尾形
制作:スタジオポノック
製作:「屋根裏のラジャー」製作委員会
配給:東宝
12月15日(金)より全国東宝系にて公開
www.ponoc.jp/Rudger

© 2023 Ponoc

STORY
少女アマンダの想像から生まれたラジャーは、彼女以外の人間には見えない「イマジナリ」。屋根裏部屋でアマンダと一緒に想像の世界に飛び込んで、歓びいっぱいの毎日を過ごしていたある日、「人間に忘れられると、消えていく」という「イマジナリ」には避けられない運命があることを知る。自分の運命に戸惑うラジャーが、一縷の望みとともに、たどり着いたのはかつて人間に忘れさられた想像たちが、身を寄せ合っている「イマジナリ」の町。このラジャーと仲間たちの出会いは、彼らの大切な人と家族の未来を懸けた大冒険の始まりだった!

映画公開に先駆け、ノベライズ版も発売決定!

 12月の映画公開を前にして、10月に角川文庫・11月に角川つばさ文庫より、本作のノベライズ版が刊行されます。原作小説にはない映画ならではのオリジナル設定を余すことなく盛り込んでいるほか、キャラクターの心情を深く掘り下げた、読み応えある作品に仕上がっています。本作の素晴らしい世界観を、ノベライズ版でもぜひお楽しみください。


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