保元の乱から関ヶ原合戦まで、一般に流布する陰謀論的俗説を一蹴する快著執筆の背景には、気鋭の研究者が自らに課した「社会的役割」があった——。

それは「一揆」からはじまった 研究者としての呉座勇一
──大ヒットとなった『応仁の乱』を経て、四冊目の一般書となりますが、企画自体は『応仁の乱』と同時期からあったそうですね。
呉座:ええ、お話をいただいたのは同時期だったのですが、『応仁の乱』の執筆を優先させていただきました。
──それは、どういった理由があったのでしょう?
呉座:あとがきでも触れましたが、『一揆の原理』と『戦争の日本中世史』について、学界では「受け狙いのテーマ・軽薄な文体で学問への真摯さが感じられない」といった批判が出ました。最初からある程度は覚悟していましたが、反発が予想以上に大きかったので、硬めのものも書けることを示しておこうと思いました。ですから、今だから言えるのですが、「中央公論新社には悪いけど、あまり売れなくてもいいから、本格的なものにしよう」と思って書いたんですね。
──それが、ふたを開けてみると……。
呉座:驚きました。もちろん工夫はしましたが、あれだけ複雑な内容ですからね。本当は、この『陰謀の日本中世史』が売れるといいなと思っていたので、完全に誤算でした。あれだけ売れると(二〇一八年二月現在、四十七万部)、メディアからの取材依頼も多くて、対応に忙殺されました。
『陰謀の日本中世史』
定価 950円(本体880円+税)
発売日:2018年03月09日
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「本の旅人」2018年4月号
定価 100円(本体93円+税)
発売日:2018年03月27日
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