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特集

“キワモノ”候補者たちの、本当の叫びを聞け――『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』

この人たち、勝てる見込みのなさそうな選挙になぜ出るんだろう……。選挙ポスターを前に、そう感じたことはありませんか? マック赤坂ら、いわゆる泡沫候補たちの選挙活動を、ユーモラスな筆致で綴った本年度開高健ノンフィクション賞受賞作。そこには意外すぎる人間ドラマが隠されていました。

── : 二十年の選挙取材が結実した力作ですね。キワモノ的な扱いをされることの多い泡沫候補たちの実像はもちろんですが、私たちは、選挙について知っているようで知らないことが沢山あると気付かされました。

畠山: 日本では立候補へのハードルが非常に高いんです。例えば、衆・参院の選挙区、都道府県知事選挙に出るには三百万円の供託金が必要ですし、家族から理解を得られないケースも多い。  苦労して立候補しても、今度はマスコミで報道される時間や扱いに、主要候補とは大きな開きがあります。  それで、一定数の票を得られなければ、供託金は全額没収ですからね。落選で失うものがあまりにも大きい。  だから、そんな大きなリスクを背負ってでも立候補する彼らのことを、私は「泡沫候補」ではなく、敬意を込めて「無頼系独立候補」と呼ぶことにしています。

── : そんな候補者たちのなかで、今や全国的な知名度を得ているのが、マック赤坂さんです。演説中のダンスに始まり、局部開陳まで、奇想天外な選挙活動を展開されるマックさんですが、意外な経歴をお持ちですよね。

畠山: マックさんは京都大学を卒業後、伊藤忠商事に就職したエリートです。その後、レアアースの会社を立ち上げ、独立。成功を収めたビジネスマンです。  いまでこそ奇抜なスタイルですが、本にも書いた通り、最初は普通の選挙活動を行っていました。しかしそれではマスコミには全く取り上げられない。有権者に自分の政策が伝わらない。どうすればいいのか、と考えた結果、今のスタイルになったんです。  マックさん自身はまだ当選を果たしていませんが、くじけずに何度もチャレンジする姿が若い人に希望や勇気を与えています。今の日本は、無名の新人が立候補して当選するには絶望的な選挙の仕組みにもかかわらず、必ずニューカマーが出てきます。マックさんもそんな時は、「俺のことはいいから、若い人たちのことを記事にしろ」なんて言ったりするんです。案外、人格者だなと思っていたら、唐突に股間をさらして笑わせようとする(笑)。  人間って一筋縄ではいかないことがよく分かりますし、そこに人間の面白さや魅力があるようにも思います。

── : 本書は畠山さんのユーモアにあふれていますが、そこに感じる温かさは、ある種の共感からなのですね。

畠山: 私自身、新聞社などに属していたこともなく、フリーランスをかれこれ二十年以上続けてきました。雑草みたいな経歴の人間なので、〝無頼系独立候補〟たちに自分を重ねているところがあるのかもしれませんね。そうじゃなかったら、ここまで続けてこられなかったと思います。

── : マックさん以外の候補も多数登場しますが、畠山さんは、エアガンで撃たれたり、一方的に訴えると告げられたり、街頭演説を取材しようとしたら、なぜかまかれたり……。傍目には面白い(?)エピソードが次々紹介されるのですが、取材をしていて怖い、と思うことはないのでしょうか?

畠山: 正直、怖いと思うこともあります(笑)。ただ、私は取材記者として話を聞きに行っているわけですから、私の後ろには読者や有権者の人たちがいるんです。そのことが自分自身の鎧のようになっているとは思います。それに、彼らもやたらめったら奇行に及ぶわけではありません。根底には自分の政策を聞いてほしいという気持ちがある。これは私の実感ですが、〝無頼系独立候補〟は心のどこかに「社会のために」という思いを抱えて立候補している人ばかりです。だから、「有権者になにを訴えたいですか?」とこちらがきちんと訊く姿勢をもっていれば大丈夫。そう信じてはいます(笑)。

── : 逆に主要候補や、われわれ有権者に対して、畠山さんが厳しい目をお持ちなのも印象的でした。

畠山: 主要候補のなかには、政党の公認を得るために、それまでの主義主張を簡単に曲げてしまう人たちもいます。政治家になるためには仕方がない、という理解の仕方もあるとは思いますが、私は、だったら政党の推薦は要らない、自分の道は自分で切り拓こうという姿勢の方に魅力を感じますね。  有権者にしても、「政策で投票する」という人がいますが、主要候補以外の政策まで吟味した上でそう言っているのか。彼らの方がより具体的な政策を打ち出していたケースを私は知っています。だからこそ、この報じられない候補者たちのことを少しでも多くの人に知っていただきたいと思っています。


畠山 理仁

1973年愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部在学中より雑誌を中心に取材・執筆活動を開始。

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