角川ホラー文庫より好評発売中の『中野ブロードウェイ脱出ゲーム』。サブカルチャーの聖地・中野ブロードウェイを舞台に繰り広げられる史上最悪の脱出ゲームに、著者の渡辺浩弐さんが込めた思いとは!? 著者特製【謎の都市伝説カード】と共にお届けする特別メールインタビュー、後編です!
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Q6.「脱出ゲーム」としてこの小説を書いた理由。
僕は専業の作家ではないので、普段から頼まれもせず発表の目途もなく気の向くままに大量の文章を書いています。ここ10年間くらいは、特に中野ブロードウェイをとりまくシークエンスの短文が……都市伝説のような怪談のようなSFショートショートのようなものが……たくさんたまっていました。しかしあまりにもばらばらで、数も多く、それらはやりかけのジグソーパズルのように雑然と投げ散らかされていました。
KADOKAWAの編集者の方と中野ブロードウェイ館内を歩きながら、いろいろなエピソードやアイデアを披露していたことがあります。いつかこの場所をモチーフにした小説を書きたいと話した時「脱出ゲームはどうですか?」という一言を頂きました。
その瞬間、頭の中でパズルのパーツがぱちりとはまりました。



Q7.Kカフェについて。開店時にどういうことをしているか。UFOコーヒーについて。
どれくらいお店を開けているか、ですか?
「そんなに長い時間じゃないよ」
「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」
「日が高くなるまでゆっくり寝て、それからコーヒー淹れたり、UFO探したり、ゲームやったり、夜になったら友達と一杯やったり、ゲームやったりして……ああ、これでもう一日終わりだね」



Q8.大人と子供について。大人の閉塞感と子供の絶望。大人としてor子供として生きる知恵について。
もし今日学校行って。
明日も明後日も学校行って。
そして一生懸命勉強して試験受けて。
合格して。
そこから、どうなる。
資格とって卒業して面接受けて就職して。
そこから、どうなる。
スーツ着てネクタイ締めて早起きして電車で通勤して仕事して頭下げながら名刺出して社員食堂でランチ食って接待でキャバクラ行ってどうもどうも〜なんていいながら生きて……
そこから、どうなる。
どうする。どうしよう。
大人がしょぼくれてる時代が長いこと続いてますね。本当にかわいそうなのはそんな大人を見ながら育った(育っている)若い世代です。
鬱々とした日常から逃れるように中野で途中下車して歩き始める裕くんの気持ちに共感してくれるような多くの若者に、僕はまた、共感します。
けれど……自分で歩いて自分で探せば、世の中結構面白いってことを、なんとか伝えていきたいです。小説家として、ないし、中野ブロードウェイのカフェの偏屈マスターとして。



Q9.現実を突破する物語の力について。渡辺さんが小説に込めた思いについて。
現実が面白すぎる。ネットのおかげで、それをいくらでも享受できる。ぼんやりしてるとフィクションなんて、小説なんて誰も読まなくなる。そんな恐怖がずっとあります。
ならば、創作者はもっと速く走らなくては、と思います。
リアルに近づくことより、リアルを超えることを。バーチャル・リアリティーより、ビヨンド・リアリティーを。現実を先導する物語を。



Q10.読者へのメッセージ、今後書いていきたい小説について。
『中野ブロードウェイ脱出ゲーム』に興味をもっていただき、ありがとうございます。
読了された方は、きっとこれから10年あるいは20年にわたって、たびたび既視感のある事件や風景に遭遇することになると確信しています。小説家から読者へのプレゼントとは、そんな「近未来の体験」です。
裕とマイとアイ、ないしユウと舞とAIの物語はきっとまだまだ続くと思います。一緒に、未来に備えましょう。
