企業小説の第一人者、高杉良が『最強の経営者』の次に選んだ題材は、わずか八人の社員しかいないベンチャー企業だった。特許侵害でGoogleを訴えた「イーパーセル」の経営者、北野きたの譲治じょうじの軌跡を描いたこの作品は、高杉良が初めてITベンチャー企業の経営者を主人公にした長篇小説だ。
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あなたに会いたい

──『雨にも負けず 小説ITベンチャー』執筆のきっかけから教えてください。

高杉:産経新聞の記事(「リーダーの素顔 イーパーセル社長 北野譲治さん(54)」二〇一七年四月十六日)を読んだことがきっかけです。読了後すぐに当人に会いたいと思いました。その日は日曜だったので、翌日に会社に電話して「あなたに会いたい」と。すると忙しい中、時間をつくってくださって、翌々日の午後三時に来宅してくれたんです。それで「あなたのことを書きたいんです」とあらためてお願いして快諾してもらいました。ざっくばらんに僕の質問に答えてくれて、二回目にイーパーセルに出向き、近くのレストランで夫人にも会いました。

──記事の見出しは「データ〝宅配〟 世界標準技術 大企業にPR」。『雨にも負けず』の主人公、北野譲治さんは、インターネットで電子ファイルを安全・確実に送り届けるサービスを行っている企業の経営者だとあります。失礼ですが、一般的にはあまり知られていない方だと思うのですが、どこに興味を持たれたのでしょうか。

高杉:直感ですね。読んだ瞬間に、この人物は面白い、この人を書こう、という感じですよ。一つだけ挙げるなら、Googleなどの大手IT企業を特許侵害で訴えたところ。日本の小さな企業がアメリカの大企業を相手に闘ったことに興味を惹かれました。

──高名な作家から突然電話をもらって、しかも小説の主人公に、と言われた北野さんも驚いたでしょうね。取材はどのようにされましたか。

高杉:北野さんの周囲にいる人たちにもお話をうかがいました。イーパーセルの社員たちはもちろんですが、北野さんの高校時代からの親友で、いま一緒にバイオベンチャーを立ち上げている京都大学教授の小川おがわ誠司せいしさんや、イーパーセルの創業者を北野さんに紹介した日本輸出入銀行の会田あいだ守志もりゆきさんなどの友人たち、北野さんが学生時代にアルバイトをしていた六本木の「フローリスト・マグ」の池内いけうち潤二じゅんじさん、日興プリンシパルでイーパーセルを担当していた城戸きど一幸かずゆきさんなどですね。僕は取材するのが好きなんですよ。八十歳ですけど、いまだに自分で取材しないと気が済まない。人に取材をしてもらってデータだけもらって書くということができないんです。

書籍

『雨にも負けず 小説ITベンチャー』

高杉 良

定価 1728円(本体1600円+税)

発売日:2019年03月13日

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    書籍

    「本の旅人2019年3月号」

    角川書店編集部

    定価 100円(本体93円+税)

    発売日:2019年02月27日

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      書籍

      『起業闘争』

      高杉 良

      定価 648円(本体600円+税)

      発売日:2018年12月22日

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