『こちらあみ子』で三島由紀夫賞、『星の子』で野間文芸新人賞を受賞するなど注目され、
多くの読者に愛される作家、今村夏子さん。
新作『父と私の桜尾通り商店街』に収録されるのは六つの短篇。その執筆の背景は?
画像

六つの作品で書こうとしたこと

──巻頭の作品、「白いセーター」の最初の発想はどこにありましたか。

今村:十五年ほど前、友人とお好み焼きを食べに行った時、私は買ったばかりのコートを着ていました。店内で、お好み焼きの匂いがコートに付くんじゃないか、と一人ブツブツ言っていたところ、一緒にいた友人が自分の着ていたコートで、私のコートを包んでくれました。その時の思い出を小説にしたくて、構想を練り始めました。

──ああ、似た場面が最後のほうにありますよね。主要人物は婚約中のカップル。彼女が彼の甥っ子姪っ子の面倒を見なければならなくなり、そこで行き違いが生じる。

今村:いい歳をして子供っぽい女と、無口で冷静な男、という設定です。男のほうは、優しいのか冷たいのかよくわからない性格をしています。女に理解を示しているように見えて、本音や決定的なことは何も言わない、という男の性格が表れる場面にしたくて、最後の二人の会話を考えました。主人公が途中、子供たちによって、ついた嘘が暴かれそうになる場面を入れたいと思いました。子供は子供で、実際の出来事を誇張して話す傾向があるので、その二つが衝突して、あのような言い争いの場面が出来ました。

──二話目の「ルルちゃん」は、語り手が、たまたま知り合ったご近所さんの家に遊びに行くと、そこに不似合いな知育人形があった、という思い出を語ります。

今村:これは初対面の人の家へ遊びに行って、戸惑った話を書きたいと思ったのがきっかけです。なぜ思い出を語る形になったのか、よく思い出せないのですが、おそらくリアルタイムで書き進めていたのが、収拾がつかなくなり、何度も書き直すうちにこういう形に落ち着いたのだと思います。

書籍

『父と私の桜尾通り商店街』

今村 夏子

定価 1512円(本体1400円+税)

発売日:2019年02月22日

ネット書店で購入する

    書籍

    「本の旅人2019年3月号」

    角川書店編集部

    定価 100円(本体93円+税)

    発売日:2019年02月27日

    ネット書店で購入する

      書籍

      『あひる』

      今村 夏子

      定価 562円(本体520円+税)

      発売日:2019年01月24日

      ネット書店で購入する