『流』での直木賞受賞以降、充実作・力作を刊行し続けている東山彰良さんの待望の新作は、初挑戦となる歴史時代小説です。
愛する女のために罪を犯した蓮八は、伝説の殺し屋・夜汐よしおに追われることになり……。動乱の幕末を舞台に、運命に翻弄される男女の姿をドラマチックに描いた最新長篇について、東山さんにお話を聞きました。
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時代の変わり目に生まれる ドラマを描きたい

──『夜汐』は初の歴史時代小説です。ここ数年、自身のルーツである台湾を舞台にした青春ミステリや近未来のSF小説を発表してきた東山さんが、新しいジャンルに挑戦しようと思ったのはなぜでしょうか?

東山:別に歴史時代小説を書こう、という強い意識があったわけではないんです。これまでも自分が書きたい物語にふさわしい舞台を選んできたわけですけど、今回はたまたまそれが幕末だった。江戸の終わりから明治にかけては、新旧の価値観がぶつかり合った変革の時代。ここを舞台に設定すれば、自分の好きな西部劇映画のように、時代の変わり目に生まれるドラマが描けるんじゃないか、という気がしたんです。

──確かに『夜汐』には西部劇のテイストが盛り込まれていますよね。では、歴史時代小説や時代劇への関心はあったのですか?

東山:専門的に勉強しているということはなくて、一般の方と同程度だと思います。むしろ私の場合は海外の小説や映画にインスパイアされることが多くて、この作品もブラッド・ピットが主演した映画『ジャッキー・コーガン』とその原作に影響を受けています。チンピラたちがマフィアの賭場を襲って、殺し屋に追われることになる、という流れは念頭に置いていました。

──物語の始まりは文久ぶんきゅう三年(一八六三年)。品川の賭場が襲われ、大金が奪われます。品川界隈を縄張りとする曲三きょくぞう親分は、襲撃に関わった男たちを始末するため、凄腕の殺し屋・夜汐を雇います。

東山:この小説では「生と死」、もしくは「死に時」というテーマが、いくつものエピソードで反復されています。この世では誰もが無事に天寿をまっとうできるわけではない。病気になったり、事故にあったり、殺されたりすることだってある。夜汐はそんな「ままならない死」の象徴なんです。誰一人その正体を知らない、まるで伝説のような存在。それは生きている人間が、誰も死を体験したことがないのにどこか似ています。

書籍

『夜汐』

東山 彰良

定価 1728円(本体1600円+税)

発売日:2018年11月28日

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    書籍

    「本の旅人2018年12月号」

    角川書店編集部

    定価 100円(本体93円+税)

    発売日:2018年11月27日

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