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特集

カドブン編集部おすすめの入賞作品をご紹介! 小中学生による作文コンクール「地球さんご賞(令和5年)」

「地球さんご賞」は、水や環境をテーマにした小中学生の優れた作文を表彰するコンテストです。実行委員長は、作家・安部龍太郎さん。2023年に募集が行われた第2回地球さんご賞は、全国4か所(福岡県八女市、岡山県倉敷市、静岡県静岡市、東京都大田区)で実施され、全4624作の応募作のなかから、30作の全国入賞作品が選出されました。作家・アーティスト賞をはじめとする入賞作品は、地球さんご賞の公式サイトで発表されています。


「地球さんご賞」最終選考会の様子

本コンテストを応援するカドブン編集部では、入賞作品のなかから編集部員が「これが好き!」「読んでほしい」と感じたおすすめ作品を選びました。

この記事では、カドブン編集部おすすめの4作品を全文掲載。小中学生の皆さんの個性と発想力が光る作品にご注目ください!

▼「地球さんご賞」公式サイト
https://www.earth35.org/

「地球さんご賞(令和5年)」
カドブン編集部おすすめの4作品

タイトル:「ひとりぼっち」
著者:A.Fさん(中学3年生)

あるところに
年老いた ひとりぼっちの
ライオンがいました
そのライオンは 大きく 強いので
仲間たちから尊敬されていました
そのライオンは かしこいので
動物の心を 悟ることができました
人間の心も 同じでした
そのライオンは
たくさんの家族と暮らしていました
でも 今は ひとりぼっち
森は 枯れ 焼かれ
太陽が 大地を裂き
川は消え 海は汚れ 山は崩れ
代わりに目につくものは
人間の都市からやってくる
ごみの山
獲物は死に絶え 仲間も死に
家族も子どもたちも死に
よく体を休めていた大木も
死んでいました
ひとりぼっちのライオンは 飢え
飲む水もなく あてもなく
焼けた森を 裂けた大地を
さまよっていました
あるところに
若い ひとりぼっちの
少年がいました
その少年は 心が豊かなので
自然の心を 悟ることができました
動物の心も 同じでした
その少年は 母と 兄弟と
少しの友達と 暮らしていました
よく 兄弟や友達と
森や 川で 遊んでいました
でも 今は ひとりぼっち
森は 枯れ 焼かれ
太陽が 大地を裂き
川は消え 海は汚れ 山は崩れ
代わりに目につくものは
都会からやってくる
ごみの山
家畜は死に絶え 友達も死に
母も兄弟も 死にました
ひとりぼっちの少年は 飢え
飲む水もなく あてもなく
焼けた森を 裂けた大地を
さまよっていました
あるとき
少年は 人に 声をかけられました
都会の 密猟者のようでした。
少年は 何か仕留めたら金をやる
と言われ ライフルを渡されました
その日の夕方
ひとりぼっちの少年は
ひとりぼっちのライオンに
出会いました
飢えた少年は お金がほしいのです
ライオンにライフルを向けました
ライオンは 少年の心を悟りました
少年も ライオンの心を悟りました
ライオンも 少年も
お互いを傷つけたくないのです
少年は 目に涙を ためていました

あなたがライオンだったら
身を守るため 少年を殺しますか
あなたが少年だったら
ライフルの引き金を 引きますか
あなたが何かを買うことで
少年やライオンが傷つくとしても
あなたはそれを 買い続けますか
あなたがさっき捨てたごみが
森を焼き 裂けた大地に積まれても
あなたは 捨て続けますか


タイトル:「発展の保証」
著者:植田 彩花さん(中学3年生)

 二人分のコップをテーブルに出す。並々の熱いお茶を、眼前の私はすぐに飲み干してしまった。私の前に座るこの人は、信じたくないけれど、紛れもなく未来の私だった。何でも、最新テクノロジーとやらで過去に飛んできたらしい。そんな目の前の私が言う。
「にしても、お茶が美味しい。懐かしい味だわあ。」
 私は思わず、懐かしい味ってと聞き返してしまった。未来の私が笑って答える。
「だって、もう未来こっちじゃあこんなの作れないからさあ。こっちは飲み物とか全部総合栄養液だよ。あれまずいのにさあ。」
 何でも、その総合なんとやらという液には人間が生きていくのに必要な栄養を全て詰め込んだ飲料物なんだと言う。未来ではそれまでの食料が全て栽培などできなくなってしまったので、そうしているのだとか。現代でも未来でも自然関連はロクなことになってないが、未来では雑草の一本すら生えないほど土壌管理されているらしいので、未来よりはまだマシなのかもしれない。かく言うこの土地も、今ではゴミだらけで町中腐臭まみれだ。
「なのに、カラスは少ないね。」
 未来の私が尋ねてくる。
「ほとんど死んじゃったからなあ。」
 というか、未来から来ているのにそんなことも知らないのかと苦笑した。でも確かに、生まれて初めてそんな事を意識したかもしれない。未来の私に、他にどんな動物がいなくなったかきかれたので調べてみると、ゴリラ、コアラ、ラッコ、ウサギ、カブトガニ、マグロなんかも絶滅していた。詳しい種類は知らないが。結構減ったねえと画面を見つめる。温いお茶を一口すすると、まだこの星でやっていけるような心地がした。無論このお茶も、農薬まみれで本当は飲めたものではないが。
 ふと、未来の私が空を見上げた。つられて見ると、空は黒色に染まっていた。時計は十八時を指している。予報だと、この後はたしか雨が降る。
「流石にこの服には耐性ないし、体が溶けたらまずいから」
 そうして、未来の私はまた遊びに来るとつけ加えてから帰っていった。私は私が残して帰ったコップを、手袋をつけた手で洗いながら、来年最初の日が訪れるのを待っていた。カウントダウンは始まっていて、すぐに次の年の日が来た。これで今日から晴れて二〇三九年だ。生憎お天気は酸性雨だが。来年になってもオリンピックもないし、きっと今年も特にすることはない。そこで私は思いついた。
「移星保険、入っておこうかな。」


タイトル:「高梁川のカッパ」
著者:中上 陽汰さん(小学6年生)

「行ってきまーす!」たかしはそう言い、学校へと走っていった。通学路の途中、たかしは高梁川を反射的に見る。「あ…。また、高梁川にごみが流されている。流していいのかな…。おっと!学校に行かなきゃ!」たかしはそう言い、また走り出す。
 ここは六―一のクラス。今日もにぎやかな声がする。たかしは「ふぅ~。間に合った。」と一言。「今日も遅刻寸前だったな。」そう言うのは友達で幼なじみの健太だ。「確かにそうだけど…。」たかしが言うと同時にチャイムが鳴り、全員が一斉に席に座る。そして、先生が来て授業が始まる。たかしにとって授業は退屈なもので、手遊びをしてやり過ごした。
 帰りの会で先生が宿題を言うのはいつものことだが、今日は変わった宿題だった。「今日の宿題はSDGsについて調べてもらいます。それをノートにまとめ、明日発表してもらいます。」その宿題に全員が驚いた。
 帰り道、健太が「宿題どうする?」と聞いてきた。たかしが「高梁川について調べてみる?あそこ、カッパがいるうわさがあって、それをみんなに見せたら人気者になって一石二鳥だし。」と言うと、健太が「それすごく名案!よし、放課後に高梁川集合な!」「分かった!」二人はそう言い、家へ帰っていった。
 放課後、二人はカメラとノートを持って高梁川に集合した。二人が今か今かと待っているとそいつは現れた。頭の皿に緑色の肌。カッパだ‼するとカッパが「お前ら、なーにやってんだ?」と言ってきた。二人は「宿題で高梁川について調べに来ました。」と一言。それを聞き、カッパは高梁川について話し出した。「高梁川は岡山三大河川に入るでっけぇ川だ。その中でも一番でけぇ。だが、その高梁川が今ピンチになっている。何でだと思う?」カッパの質問に二人が首をかしげていると、カッパが「お前ら、なーにも知らねぇんだな。」と馬鹿にした。「高梁川にごみが流されているの、お前も見たろ。あれが問題だ。」たかしは朝の出来事を思い出した。カッパは「高梁川にプラスチックごみが捨てられて、それが瀬戸内海に流れてんだ。それを海ごみっていうんだ。」と説明した。そして説明を続けた。「その海ごみによって海が汚されたり、生き物が命を落としたりなどの被害を受けるんだ。また、漁に使う網も破れちまうんだ。」
「なぁ…。プラスチックなら回収できんじゃねぇのか?」と健太は質問した。「いや、プラスチックは更に細かいマイクロプラスチックになっちまう。そうなれば回収は困難だ。だが、ごみを減らすことはできる。考えてみな。」二人は頭をひねり、「いらないものは買わない。」とたかしが、「ごみは分別する。」と健太が意見を出した。カッパは「そうそう、そのようなことをやれば安心だ。頑張るんだぞー。」と言い残し、消えていった。
 カッパのいた所にはキュウリがあり、二人はキュウリを食べてみた。キュウリはみずみずしくて、ほんのり甘かった。


タイトル:「ホタルの光」
著者:大久保 紗菜さん(中学3年生)

「ほう、ほう、ほーたる来い。」
 私の祖父母の家は、私の家から車で十分ほどのところにある。そばには小さな川が流れていて、そのすぐ裏手には山がある。夜になると辺りは静かで、真っ暗だ。毎年六月初め頃、数日間だけその川にホタルが現れる。
 空が薄暗くなり始めると、バタバタと夕食とお風呂を済ませ、縁側に座布団を持って、部屋中の電気を消してスタンバイ。ゲームもユーチューブもこの日はいらない。いつもは野球中継を見ている祖父もテレビを消してくれる。ホタルはとても繊細で、明るい場所が苦手なため、静かに明かりを消して待つ必要があるのだ。準備万端。
「まだかな。まだかな。」
 このわくわくもたまらない。静けさの中に光の点滅が現れる。
「いた。」
 思わず叫んでしまいそうな衝動を押し殺す。また別の一つが光る。次々に光が現れる。言葉を発する人は誰もいない。じっと、静かにホタルたちの会話を見守る。とても贅沢で至福の時間だ。
 今では、その光は数えることができるほどに減ってしまったけれど、私の母が子供のころは、もっと多くの光に溢れていたそうだ。川の側でしか見られない光も、以前は庭にも迷い込むほどだったらしい。想像するだけでワクワクが止まらない。
 ホタルが住むこの川も、最近は夏になると記録的な大雨で、毎年、山の土砂や木々が流れ込んでくる。私が見てきたこの十数年だけでも、ホタルの数は年々減ってきているように感じる。
 水中や土中で約十か月間過ごし、成虫になったホタルが野外で光輝きながら飛び回れるのはたった一週間限り。
 すべての生き物や環境は、生態系の中で、密接につながり、強く影響し合っている。
 私はもう十五歳。この光を守るために、自分本位の生活を改め、責任をもって行動しなければならない。
 「あっちのみーずは、にーがいぞ。
  こっちのみーずは、あーまいぞ。
  ほう、ほう、ほーたるこい。」




(※掲載は順不同。「地球さんご賞」本部実行委員会のご許可をいただき、全文掲載しています)


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