読み物

これまでにない濃密な読書体験、120%保証!! 人間の本質と恐怖の根源を描く、美しく恐ろしい物語『吸血鬼』。 佐藤亜紀という作家の凄みが詰まった傑作。 書店員さんや読者の方から、驚嘆の声が続々!
暗闇を照らす光は、 革命か、文学の力か。
佐藤亜紀『吸血鬼』
2016年に刊行されるやいなや、Twitter文学賞(国内)を受賞し、話題騒然となった『吸血鬼』が、角川文庫で刊行されました!
一足先に読んでいただいた書店員さんと読者の皆様から、熱い感想が届きましたので、ご紹介します!
あらすじ
暗闇を照らす光は、 革命か、文学の力か。
1845年、オーストリア帝国の支配下にあるポーランド。寒村ジェキに赴任した役人ゲスラーは、若き妻を伴い陰鬱な地にやってきた。かつて文学青年だった彼は、愛国詩人でもある領主との交流を心待ちにしていたのだ。だがその矢先、村で次々に不審な死が発生し、人々は土俗的な迷信に怯え始める――独立蜂起の火種が燻る空気の中、人間の本質と恐怖の根源を炙り出す、恐ろしくも美しい物語。皆川博子氏と作者による解説を収録。
書店員さんからのコメント
さて、吸血鬼とは?
誰であったのでしょう? そもそも、誰と呼べる人なのでしょうか?
病か? 不可解な遺体を生み出す何者か?
頁の向こうに家がある、畑がある、村人が居る。私は一体どこに居るのか? と一瞬自分の位置がわからなくなりました。そんな気がしました。
読者の皆さんどうか、吸血鬼にお気をつけて。
私はもう一度読んでみようと思います。
(卓示書店河口湖BELL店 小滝香さん)
佐藤亜紀という作家の凄みがつまった傑作。19世紀、ポーランドの寒村を舞台に、生活と文化、歴史が交わる綾が鮮やかに描かれる。作家の描写力は、人と言葉を巡る幾層もの表情を、ヨーロッパの情景も含めて、まるで映画のように眼前に浮かばせる。私たちはただ読めばよい。美しくも醜くもある人の生と死がここにある。
(マルジナリア書店 小林えみさん)
迷信と因習と。古き良き時代という言葉では表せない世界。果たしてどこへ向かって行くのだろうか……。
文化と知性を併せ持っていたはずのゲスラーの変化。郷に入っては郷に従えという言葉がある通りの事なのか。
人の、目に見えぬモノを恐れる心から目を逸らしてはいけないのかもしれない。
(文真堂書店ビバモール本庄店 山本智子さん)
19世紀のポーランドの田舎の暗く湿った空気が感じ取れるようで、読んでいるとどんどん不気味さが増してくる。死体が蘇らないように首を刎ねる慣習も怖い。
でも文章がきれいなので芸術的であり、いろんな価値観にも考えさせられました。
吸血鬼と言えばバンパイアのイメージがありましたが、この本は私が思っていたものとは全く別物でした。すごいです。
(コメリ書房鈴鹿店 森田洋子さん)
舞台は十九世紀ヨーロッパでありながら、幻想的でどこか神秘を孕んだ世界でした。
翻訳本かと勘違いしそうになる完成された文体や会話文が独特で、唯一無二の世界観なのだろうと感じます。
村を覆う仄暗い鬱々とした空気も、嗅いだことのない匂いも、聞きなれない言葉も、ページを捲るほど纏わりついてきて、最後には吹雪をしのぐ閉ざされた小部屋のロウソクの灯りの下で本を読み進めているような気がしていました。
誰が主人公ということはなく、登場人物一人一人が各々の役割を果たし、「吸血鬼」を生み出し、滅ぼそうとする。「物質的な世界の問題」と「純粋に精神的なもの」が交錯して歴史を紡いでいく。極限状態の人間の心理や行動の選択は、他の誰にも描けない世界、凄いとしかいいようがありません。
(蔦屋書店熊本三年坂 迫彩子さん)
『吸血鬼』は教えてくれる。歴史とは、夢や理想を追い求めた人間によって築かれたものではなく、現実を前にそれでも「このまま生きていくしかない」と呑み込んできた者たちの人生の膨大な集積であることを。
(ときわ書房本店 宇田川拓也さん)
とにかくかっこいい作品でした!
最初から最後まで、研ぎ澄まされた文体と作品が持つ重厚な力に誘われるように読み耽りました。
切れ者である実務家のゲスラーと、どこか空想家めいたクワルスキの対比もさることながら、使用人であるはずのマチェクにはまた別の顔があり、え、まさか……という怒涛の結末を迎えてしまうまで目が離せませんでした。
ゲスラーを正とするならば、悪側であるはずのクワルスキとその妻、ウツィアの二人のキャラクターが非常に魅力的で、ともするとロマンチストなクワルスキの神秘性に絆されてしまいそうになる。人と人が生きていて、そこに横たわる関係性を前にした時、安易にどちらが正でどちらが悪と断定することはできないと痛感しました。
人々の営みがたやすくへし折られ、分断のさなかにある今、沢山の人に読んでほしい傑作です。
(M・Uさん)
▼佐藤亜紀『吸血鬼』の詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322105000223/