視聴者から募集した初出しの怪談を、怪談師たちが一発撮りで披露する全く新しいコンセプトの番組『初耳怪談』が待望の書籍化!
刊行を記念して、番組レギュラーのたっくーさんが推薦した単行本未収録の短編怪談「遺品整理」(投稿者:天泣白雨さん 語り:島田秀平さん)を特別公開します。
大人気怪談師が恐怖した特選怪談を、どうぞお楽しみください。
(構成:田辺青蛙)
『初耳怪談』未収録の短編怪談 特別公開!
第1弾「遺品整理」
遺品整理
投稿者:天泣白雨
これは、私が遺品整理士として初めて携わったお宅の話です。
そこは、土地開発によりニュータウン計画が持ち上がった場所の一角にあった新築の一戸建てでした。
このお宅には二十代の若夫婦と一歳の子ども、そして夫方のご両親が住んでいました。
ところがある日、この一歳の子どもが不慮の事故で亡くなってしまいました。
残された家族は、子どもが寂しくないようにとあることを思いつきました。
いつでも家族のことが見られるように、リビングに面した庭にひまわりと白い勿忘草の種をまいてそこに子どもの小さな骨壺と一緒に埋葬したのです。
それから一年後の夏、庭には大輪のひまわりと沢山の白い勿忘草が咲き誇っていました。
ただその頃は家族仲が悪く、家庭内で喧嘩が絶えない状況になっていました。
そしてついには旦那さんの母親がひまわりを見て、こう言ったそうです。
「何かに見られているようで気持ちが悪い……」
その後、ご両親は家から出ていき、若夫婦と別居をすることになりました。
それから間もなくして二十代の若夫婦にまた新しい命が宿りました。
妻のクミさんは、これでまた楽しい日常が戻ってくると心を躍らせたのですが、旦那さんはというとご両親が出ていったことを理由に、クミさんに辛く当たるようになってしまったそうです。
とうとう旦那さんからの暴力に耐えかねて、クミさんは新しい命を身に宿したまま自殺をしてしまいました。
こんなことがあり旦那さんは、家を売り払い引っ越すことに決めました。
そこでこの家の遺品整理を依頼したというわけです。
旦那さんからは「死後離婚したので、妻のものは全部処分してください」とのご要望でしたので、私は提携先の廃棄物処理業者さんと古物買取業者さんと一緒に三日間かけて家中のものを全て片付けました。
数ヶ月後、旦那さんから電話があり「伝え忘れたのですが庭に骨壺が埋まったままなので、もしアレでしたら掘り返してクミの実家に送ってもらえますか? 住所を教えますので……」と伝えられました。
その時は既に家は不動産会社の管理下でしたので、事情を話し担当者さんとご住職立会いの下、庭を掘り返すことになりました。
季節外れのひまわりと白い勿忘草が咲いている庭を掘り返し、立ち会ってくださったご住職と共に、クミさんのご実家に連絡し、骨壺を納めに行きました。
その後、物件は直ぐに買い手がついたそうですが、担当者さんの話では「赤ちゃんの泣き声がする」「リビングを覗く妊婦さんがいる」「帰宅したらどこかの若い妊婦さんが二階にいた」と苦情が度々あり、結局この方は転居されたそうです。
今は新たな買い手がつき、住人がいますがどうした偶然なのか、リビングに面した庭には、この新しい住人がひまわりと勿忘草を植えていて、庭一面に咲き誇るのを楽しみにしているそうです。
今でもまだあの家の庭に二人は眠っているのでしょうか?
遺品の中にはクミさんの日記がありました。
始めの方は引っ越したばかりの楽しい日常が綴られていましたが、やがて旦那さんから受けた暴力が事細かく綴られるようになり、生前最後の日には涙の跡と思わしき染みのついたページに「わたしたちのことを忘れないで下さい」と書かれていました。
遺品であるこの日記をお焚き上げしようとしたところ、急に火が消えてしまったり雨が降ったりとトラブルが続いたので、ご住職は時間をかけて供養をしていくことに決めました。
人の骨というのは土に還すことでその土地に根付くという考えがあるそうです。
もしかすると、クミさんとお子さんは未だにこの土地に根付いていて、毎年咲くひまわりと勿忘草の白い花を楽しみにしているのかも知れません。
作品紹介
書 名:初耳怪談
著 者:テレビ大阪
発売日:2025年03月01日
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