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特集

奈良で大ヒット&重版決定!『今昔奈良物語集』著者・あをにまるインタビュー

抱腹絶倒の文学パロディ集『今昔奈良物語集』著者・あをにまるインタビュー

「こころ」「山月記」などの名作文学を翻案した短編小説をWeb小説サイト「カクヨム」に発表している「あをにまる」さん。
なかでも「竹取物語」をネットスラングと古典文法を織り交ぜて生まれ変わらせた「ファンキー竹取物語」は大きな反響を呼び「はてなインターネット文学賞」で大賞を受賞しました。
そんな「ファンキー竹取物語」のほか、「鹿」になってしまった親友との友情譚「若草山月記」や、「どん」とあだ名される冴えない銀行員の悲哀を描いた「どん銀行員」などWEBで人気を博した作品に、書き下ろしを加えた小説集『今昔奈良物語集』が12/21に発売! 直後から奈良で爆発的な人気となり、この度重版が決定しました。
卑屈な奈良県民bot」の中の人としても活動しているあをにまるさんにカクヨム編集部員がインタビューを敢行! 『今昔奈良物語集』への想いや創作の裏側、ご当地ネタを扱う極意を伺いました。

(本記事は「カクヨム」に2022年12月19日に掲載された内容を加筆・転載したものです)



▼『今昔奈良物語集』作品紹介はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/322207000257/

執筆のきっかけは「李徴、奈良やったら鹿ちゃう?」


――『今昔奈良物語集』を執筆されたきっかけを教えてください。

あをにまる:高校時代に演劇をはじめて、脚本を担当するようになってからいわゆる創作にかかわるようになり、社会人になって小説にも挑戦しようと思って考えたのが本作でした。
 発想の原点に、高校時代に国語の授業で『山月記』を聞いていた時に「これ奈良やったら鹿の話やなあ」と漠然と思ったことがあります。
 もちろん奈良を代表する作家で敬愛している森見登美彦さんの『新釈 走れメロス 他四篇』にも影響を受けています。最初この本を知った時に「自分と似たようなことを考える人もういはった」と少し悔しい気持ちにもなったんですが、本のあとがきのなかで「自分で書き直すように名作を読んだらいい」というようなことを書いてくださっていて、ではそのまま書き直すのもやってみようか。たとえば『山月記』なども、中島敦が中国の古典を翻案したものですし、勇気をもらって自分なりの名作パロディをやってみたかたちです。

〝自分で書き直すつもりで名作を読むようにすると面白い。自分ならばこの名作をどのように書き直すのだろうか。その小説のどんなところが捨てがたいか、この登場人物はどんな人間に書き換えられるか、その小説のどんなところが現代にも通じるのか、百人の人間が書き直せば、太宰治の「走れメロス」を中心にして、百人のメロスが百通りの方角へ駆け出すだろう。〟(森見登美彦『新釈 走れメロス 他四篇』「文庫のためのあとがき」より引用)

――元々文豪の作品が好きなんでしょうか。

あをにまる:好きは好きなんですが、お恥ずかしながら、実は読んでいる作品はかなり多いというわけではありません。高校の時に英語と数学の授業が嫌で、国語の教科書を読むか電子辞書を読むかして時間が過ぎるのを待っていました。僕が持っていた電子辞書にはパブリックドメイン=著作権が切れている名作がたくさん入っていまして、そこから文豪作品に触れる機会が多くなりました。
 こうした読書の仕方なので、例えば志賀直哉も教科書に載っている『城の崎にて』は学生の頃から元々読んでいても、『暗夜行路』は割と最近まで読んでいませんでした。新しい本も社会人になってからは年に十数冊読む程度でしょうか。もちろん本自体は好きなのですが、どちらかというと好きだと思った作品を何度も繰り返し読むということが多いですね。


――はてなインターネット文学賞で大賞となった『ファンキー竹取物語』を書こうと思ったきっかけを教えてください。

あをにまる:この作品については、ほとんど賞の応募要項のおかげです。「インターネットでこの先長く語り継がれていく小説を募集します。 この先20年後も100年後にも読まれ続ける、あなたの渾身の一作のご応募をお待ちしています。」とのお題に対して、「ならば既に現在まで千年語り継がれている作品をパロディにしたら100年ぐらい余裕で大丈夫やろ!」と思って竹取物語を選んだら当たりました。


――書籍版の『今昔奈良物語集』では若い男性が主人公の作品が多い印象です。

あをにまる:男性主人公の原作がそもそも多いということもありますが、僕が現在20代の男性ですので、目線が合わせやすく気持ちがわかって筆がのった部分はあると思います。逆に言うと恥ずかしながら、女心のわからない人間です(苦笑)


――収録されている作品で、特にお気に入りの作品を教えてください。

あをにまる:『二十歳』(原作:菊池寛『形』)は原作コンセプトを踏まえつつ、「形」をめぐる若者2人の対比、というテーマで更に別のオリジナリティを描けた作品ではないかと気に入っています。また『耳成浩一の話』(原作:小泉八雲『耳無芳一の話』)は「耳成(奈良の地名でみみなしと読む)」を舞台に、平家の亡霊が奈良ならではの怨霊へと置き換えられ、さらに「今」の奈良と「昔」の奈良が時を越えて交差するという点で、この作品集の集大成にできたと自負しています。こちらの『耳成浩一の話』は書籍書き下ろしですので、ぜひとも本で読んでいただければと思います!


――今後パロディの挑戦をしてみたいと考えている作品はありますか。

あをにまる:来年の大河ドラマでもありますし、『竹取物語』と同じく千年の厚みがある『源氏物語』はぜひ挑戦してみたいですね。『源氏物語』では六条御息所が一番大好きな登場人物で、生霊が人を呪い殺すスタンドバトルが始まる感じは、ウェブ小説向きだとも思っています。

同じ作品を百遍読んで血肉にする


――あをにまるさんはゲーム製作にネタツイに演劇の脚本づくりに、非常に多彩な創作を行われていますが、最も力を入れている創作は何なのでしょうか。

あをにまる:演劇の脚本づくりが自分の根底にあるのは確かですが、特に今どれを軸にしたいということもなく、とにかくその場その場でいろんなことをやりたいというのが本音です。小説の次回作のほか、ゲーム(『ファイ奈良ファンタジー』や開発中の『確定申告を頑張るRPG』『ならこい』)についてはウェブメディアで取材していただくことが増えて早く開発を進めねばとも思うのですが、正直趣味が増えすぎて時間が足りない状態です。なのに最近はVTuberにも手を出してみたり、映画の脚本にも興味が出てきてしまいました。近頃は本当に、やりたいことが広がり続ける毎日です。


――いろんな創作をしていて疲れるということはないのですか。

あをにまる:平日お昼にわりと硬めな仕事で適度に負荷をかけていただいているおかげか、終業後は創作熱で満ち溢れていますね(笑)。


――今回オンライン取材をさせていただいていて、話もすこぶる巧みで「名調子」だと感じられるのですが、小説以外のコンテンツでも影響を受けているのはありますか

あをにまる:奈良以外に住んだことがない人間ではあるのですが、大学は大阪まで通っていて、通学途中でよくNGK(なんばグランド花月)に寄っていたので、そこでお笑いの影響は受けていると思います。
 漫才ももちろん大好きですが、お目当ては新喜劇で、基本的な筋が同じな中でどうやって演出で笑わせるか、をずっと楽しんでいます。ちなみに推しは茂造さん(辻本茂雄)です。
 お笑いつながりでいうと、米朝さん(上方落語中興の祖といわれる桂米朝)の落語が大好きです。ここも落語が好きとか上方落語全般というわけではなく、米朝さんだけ大好きでCDを集めて、動画も繰り返し見てます。
 江戸時代の演目では意味がすぐわからない古い言葉が出てくることもあるのですが、そのことが全く気にならないくらいに圧倒的に面白いですね。


――同じ話を何度も楽しむというのは、先ほどの読書とも共通していますね。

あをにまる:あまり意識していなかったのですが、たしかにそうかもしれません。同じ話を百遍読んでいるタイプの人間ですし、半分暗記しているものもあります。

〝隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔よしとしなかった。〟(中島敦『山月記』)
〝摂津半国の主であった松山新介の侍大将中村新兵衛は、五畿内中国に聞こえた大豪の士であった。〟(菊池寛『形』)

 こうしたリズムがあって無駄のない言い回しは大好きで、自分でもついつい諳んじています。『ファンキー竹取物語』にも何遍読んでも面白い、というありがたいコメントをいただいていますが、そういうリズム感は知らないうちに名作から学べているかもしれません。


――ウェブ小説は読まれますか。

あをにまる:『イリヤの空、UFOの夏』など少し昔に出たライトノベルが好きで、あまり今の流行りのウェブ小説は追っていません。今回積極的に読ませていただく機会なので、そうした作品にもふれてみたいと思います。
 自分が趣味として読む上では、現代ドラマや歴史ものをちらちら探す事が多いです。「現代ドラマ」や「歴史」「ホラー」ジャンルは、星があまり多くなくても「これ、完全にプロの犯行やろ……」と思えるような作品がたくさん発見できるので、宝探しみたいな楽しさもありますね。


――小説での今後の目標を教えてください。

あをにまる:カクヨムで投稿し始めたのは「ウェブ小説サイトで一番書きやすそう」というのが理由で、自分にとってはいろんなやってみたいことの一つにすぎなかったのですが、書籍化という貴重な経験をさせていただいたので、ぜひ次回作も頑張って書いて参りたいと思います。
 元々コメディ脚本で笑わせる快感を知ったことから人を笑わせる話を中心にやってきたのですが、今後は違う経路の作品にも挑戦しようと考えています。
 今回『今昔奈良物語集』を担当いただいた編集者さんは、普段はちゃんとした文芸作品を手掛けられている方です。その担当さんの恩に報いたいし、何よりまた担当してもらいたいので、カクヨム内での文芸編集部がかかわるホラーなどの賞で、編集部選考に残るのが目標です。たとえば奈良県南部の民間伝承には『果ての二十日』と呼ばれる「12月20日に山に入ったら、一本だたらという妖怪に喰われる」といったものもありますし、ホラーのネタには困りません。
 あるいはインターネットやSNSをテーマにしたホラーにも関心が尽きないですね。都市伝説のパロディなどもいいかもしれません。まあ、そういうテーマだとカクヨムには『尺八様』という、強烈な作品が既にあるので簡単ではないんですが(笑)

ご当地ネタの究極体が『翔んで埼玉』


――大人気アカウント「卑屈な奈良県民bot」で普段から奈良にまつわる様々なネタツイートをされています。

あをにまる:気が付いたら5万6千人のフォロワーがいるアカウントになりました。僕はそのアカウントの中の人2号をやっているんですが、2号という名の通り、最初にアカウント作ったのは幼馴染である中の人1号(ばっきーぬ)です。中の人1号が作ったアカウントを見て、「俺やったらもっと上手くできる」と謎に対抗心を燃やして掛け合って、その日のうちには一緒にやるようになりました。中の人1号は絵ならなんでも、マンガもイラストも日本画も描ける人で、僕は絵はてんでダメなんですが文章は少しは自信があるので、ちょうどいいバランスでできていると思います。


――あをにまるさんとしてはいわゆる「文字モノ」の世界で生きているんですね。

あをにまる:そうですね、今のインターネットは画像や動画が前提のものが本当に多くなりました。もちろんツイッターも年々その傾向は強くなってはいるんですけど、まだまだ文字だけでも面白がってもらえる場所だと思っています。その点はカクヨムも同じだと思います。


――ご当地ネタ探しはどのようにされていますか。

あをにまる:いろいろメディアの方が面白がってくれることもあって、最近は週末に奈良のあちこちに出かけることが増えました。ありがたいことに発信力が高まるにつれ、「こんなネタありまっせ」とDMなどで情報提供してくれる方も増えました。  ご当地ネタツイートをしていると、どんな小さなことでも面白いと思ってくれる人がいることに気付きます。その地域に住んでいるわずかな人しか知らないようなあるあるでも、誰かが見つけてきて「いいね」してくれるんですね。  特にツイッターではそうした細かなネタが欲しがる人に届く設計になっている印象です。僕も期間中積極的に作品読ませてもらうつもりですが、ご当地ネタをフックにツイッターでシェアしたら、その地元の人が見つけてくれて反応してくれるかもしれません。


――好きなご当地ネタを扱った作品はありますか。

あをにまる:『翔んで埼玉』が大好きです。僕が究極的に目指す作品ですし、ご当地ネタの暫定1位はあの作品だと思います。とにかく面白くて振り切っていますね。魔夜峰央先生の漫画がぶっ飛んでいるのに、映画がそこにブレーキかけるどころか全力でアクセル踏みに行っています。埼玉と奈良は大都市のベッドタウンとして共感する部分がすごく多いこともあります。そういうと埼玉の人には怒られるかもしれませんが(笑)。


――ご当地ネタを書かれるうえで心がけていることはありますか。

あをにまる:ギャグはギャグ、とわかりやすく振り切って言うようにしています。そのためには地元への知識は必要だと思います。小心者なので、100人中99人が冗談だとわかってくれるネタを心がけてます。


――あをにまるさんにはカクヨムで開催されているご当地短編小説キャンペーンのアンバサダーを務めていただいています。

最後にご当地ネタに挑戦される方々へメッセージをお願いいたします。

あをにまる:自分が一番好きなものを絶対入れてほしいですね。狭い地元の人しか知らない名物や名所であっても、思う存分語れば必ず興味持ってくれる方はいらっしゃいます。あるいは誰もが知っているものや場所であっても、そこに作者の「本当に好き」という思いが乗っかれば、唯一無二の、百人が書けば百通りの書き方になるはずですから。

作品紹介



今昔奈良物語集
著者 あをにまる
定価:  1,595円(本体1,450円+税)
発売日:2022年12月21日

黒須は激怒した。必ず、かの邪知暴虐のぼったくりバーを除かねばならぬと決意した――。大和八木の実家に暮らす独身無職の黒須は、大阪に住む悪友・瀬川を訪ねる。久しぶりの再会を喜ぶ二人は、一晩飲み明かそうと宗右衛門町のキャバクラへ。しかしそこは法外な値段設定のぼったくりバーだった! 手持ちが足らない黒須は、瀬川を人質として店に残し、奈良の実家へ現金を取りに戻るため走り出す。(「走れ黒須」)ほか全11篇。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322207000257/
amazonページはこちら

プロフィール

あをにまる
1994年生まれ。奈良県出身在住。2021年に小説投稿WEBサイト「カクヨム」に投稿した「ファンキー竹取物語」が、はてなインターネット文学賞大賞を受賞。同作を収録した『今昔奈良物語集』にて作家デビュー。

カクヨムWeb小説短編賞2022にて「ご当地短編小説キャンペーン」を1月31日まで開催中!

詳細はこちら
https://kakuyomu.jp/info/entry/webcon8_short_5107cp


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