インタビュー

誕生会が大ピンチ!? よんで、あそんで、ことばが身につく 風木一人・田中ひろみ『だじゃれものがたり タンチョウヅルのたんじょうび』刊行記念インタビュー
撮影:後藤 利江 取材・文:加治佐 志津
理屈で考えるとつっこみどころだらけ
――田中さんは今回、絵を描く上で、どんなことを心がけましたか。
田中:とにかく明るく楽しく。それから、ありえない世界を描いてはいるんですけど、なるべく不自然に見えないようにと意識して描きました。子どもは隅々まで見てくれるので、咲いているお花のひとつを魚にしてみたりとか、細部にも工夫を凝らしました。
海辺にいるサワガニを描いているときは、川にいるはずのサワガニが海に現れたらおかしいんじゃないかと気になったんですが、風木さんに聞いたらそれでいいんだっておっしゃるから、まぁいいのかなと思って描きました(笑)。
風木:田中さん、結構真面目なんですね。
田中:そうなんですよ。意外と生真面目なんです。
田中:登場する生き物のサイズ感が気になった瞬間もありました。あれ、カメってこの大きさで描いちゃっていいのかな、でもまぁいいか……と(笑)。
風木:そうですよね。この絵本の中では、全然大きさの違う生き物が対等に向かい合っていたりしますからね。
でもむしろ僕は、田中さんの絵柄ならそれが無理なくできると思っていたんです。画風によっては、サワガニとタンチョウヅルを一緒の画面には描きようがないという場合もあるけれど、田中さんの画風ならそれもOK。それだけ自由度の高い絵だと感じていたからこそ、こういうだじゃれのお話の絵をお任せすることができたんです。
だじゃれ絵本で国語力が伸びる!?
――だじゃれの魅力とはずばり、何でしょう?
風木:言葉というのは意味と音とでできていますが、意味というのは、言葉の非常に実用的な面を担っているもので、正しく伝わらないとどうしようもないんですね。誰かに何かを伝えたい、そのための道具としての一面です。
でも音というのは妙に自由で、だからこそ面白い。カメと仮面は意味的には無関係なのに、音が近いから頭の中でくっつきやすいでしょう。「カエルが帰る」も、だから何って言われると答えようがないんですが、単純にそれだけで面白くて、多くの人が笑ってしまうようなところがあります。
音が同じならきっと意味も同じだろうと無意識に思ってしまうけれど、それが裏切られる、それこそがだじゃれの面白さなんだと思います。
―― だじゃれを楽しみながら国語力も育みたい、と期待する親御さんもたくさんいらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。
風木:言葉遊びの絵本を通じて、面白い言葉にたくさん触れることは、言葉を好きになるきっかけになりますよね。好きになったらどんどん知りたくなるし、自分からも求めるようになるはずです。
言葉を単に伝達の手段だと思ってしまうのは、すごくもったいない。言葉って本当に面白いものなんです。実用的なものであると同時に、それ自体が非常に魅力的。特に音を意識すると、ぐっと楽しくなるはずです。言葉の面白さを小さいうちから知っておくと、言葉への興味が広がって、いろんなものを読むようになるし、自ら作るようにもなっていくと思います。
まずは一番近くにいるお父さんお母さんと、たくさんおしゃべりしてほしいです。僕の子どもの頃のように、親子でしりとりをするのもいいですね。言葉遊びができるようになると、何もないところでも楽しく過ごすことができます。この絵本をきっかけに、多くの子どもたちが言葉と友達になってくれたらうれしいですね。
★書籍紹介★
『だじゃれものがたり タンチョウヅルのたんじょうび』
作 風木一人
絵 田中ひろみ
定価:本体1,000円+税
発売日:2019年09月13日
https://www.kadokawa.co.jp/product/321809000139/
風木 一人(かぜき かずひと)・作
東京都生まれ。絵本の文章作家、翻訳家。主な作品に『とりがいるよ』『たまごがあるよ』『いっしょにするよ』(絵・たかしまてつを、いずれもKADOKAWA)、『ニワトリぐんだん』(絵・田川秀樹、絵本塾出版)、『ぬいぐるみおとまりかい』(絵・岡田千晶、岩崎書店)、『うしのもーさん』(絵・西村敏雄、教育画劇)などがある。『ながいながいへびのはなし』(絵・高畠純、小峰書店)はフランス、韓国、台湾、中国で翻訳されている。小説、漫画、エッセイなどのコンテンツを配信するサイト「ホテル暴風雨」のオーナーとしても活動中。http://hotel-bfu.com/
田中 ひろみ(たなか ひろみ)・絵
大阪府出身、埼玉県在住。イラストレーター、文筆家。子ども向けの主な作品に『つよくやさしい心を育てる おしえてえんまさま』(リベラル社)、「だじゃれでおぼえるマナーとルール」シリーズ(汐文社)、『たなかひろみのだじゃれなどうぶつたち』(くもん出版)、『神社・お寺のふしぎ100』(偕成社)など。仏像への造詣が深く、『心やすらぐ仏像なぞり描き』(池田書店)ほか仏像に関する著作も多数ある。http://usagitv.com/