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特集

世界でも類をみない「まちづくり」に挑む。「ところざわサクラタウン」プロジェクト開発秘話。

2020年の竣工へ向け、東所沢の地で着々と工事が進むKADOKAWA「ところざわサクラタウン」。

完成予定図

このプロジェクトは、アドバイザリーボードに隈研吾氏や荒俣宏氏、松岡正剛氏などを迎え、所沢市とKADOKAWAが中心となり、日本最大級のポップカルチャーの発信拠点とするべく企画。東京ドームにほぼ匹敵する約4万㎡の敷地に、ミュージアム、イベントホール、ホテル、さらには書籍製造工場や物流倉庫、オフィスなどが複雑に組み合わされて建ち並ぶ予定だという。

この巨大な複合施設の設計・施工を担うのが、鹿島建設株式会社だ。
鹿島建設といえば、国立新美術館、サントリーホール、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、埼玉スタジアム2002、東京駅丸の内駅舎保存・復元工事等、日本人なら誰もが知る建築物を数々手がける、日本を代表する大手ゼネコン(総合工事業者)の一つ。しかし、その経験と人材豊富な鹿島建設をもってしても、ところざわサクラタウンの建設は、「未来永劫ないほどの挑戦的なプロジェクト」なのだそう。

この建設プロジェクトが、どのような経緯でスタートし、工事が進む現在、どのような苦労があるのか。設計責任者の星野時彦氏と、施工責任者の佐々木直也氏に話をうかがった。


右:星野時彦さん、左:佐々木直也さん

星野時彦(ほしの・ときひこ)〈写真右〉鹿島建設株式会社建築設計本部チーフアーキテクト。1990年入社。建築設計本部、英国Michael Hopkins & Partners を経て、現職。担当プロジェクト:猿倉山ビール醸造所、八海山雪室、オムロンヘルスケア新本社および研究所、田園調布雙葉学園聖堂、青山学院法科大学院、土木図書館、University of Nottingham 他 受賞歴:日本建築学会作品選奨、日本建築士会連合会賞優秀賞、AACA賞、JCD賞銀賞、環境・設備デザイン賞 他多数

佐々木直也(ささき・なおや)〈写真左〉鹿島建設株式会社関東支店ところざわサクラタウン新築工事事務所長。1989年入社。技術研究所、長野オリンピックスピードスケート会場新築工事、西武ライオンズ球場屋根架構工事、プラザノース新築工事、さいたま市新クリーンセンター新築工事等を経て、現職。


キーワードは「融合」

――まず、デザインに携わっていらっしゃる、建築家の隈研吾さんと、鹿島建設の設計・施工、それぞれの役割分担を教えてください。

星野時彦氏(以下、星野):建築家と建設会社というのは、プロジェクトによって様々な関わり方があるのですが、今回、隈さんは角川武蔵野ミュージアムとホテルの外観デザインとそのデザインの監修までで、設計は鹿島建設がやっています。しかし、その辺の分担の境界は実ははっきりしないところもあって、隈さんがかなり細かいところまで関わってこられる部分と、イメージだけをいただいてそれを僕たちがつくる部分の両方があるんです。
 次に設計と施工の区分ですが、一般的には設計図をつくるのが設計、それを受け取りどうやってつくるかを具体的に現場で決めていくところからが施工の役割です。通常は設計という期間があって、その後に施工という期間があるのですが、今回は特に東京オリンピックまでにつくりたいという至上命令がありまして(笑)。なおかつ複雑な設計なので、順番にバトンを受け渡すようなやり方では納期的にかなり厳しい。設計段階から施工を考えながらやっていくために、今回は、佐々木所長も着工の3年近く前から参加して、この場合はこうやってつくろうとか、色々なことをあらかじめ考えながら進めていきました。ですから、設計と施工の期間が重なりながら全体をつくっています。

佐々木直也氏(以下、佐々木):それができるのが「設計施工」の良さですね。大手の建設会社は設計部門を内部に抱えているので、短期間で大きなものをつくっていく時には力を発揮します。おそらく同じ隈さんデザインの新国立競技場もそうやって進んでいるのではないでしょうか。設計のやり直しが決まった後、普通にやったら絶対間に合わないだろうというところを間に合わせてつくっていけるのは、担当したゼネコンの人たちが、隈さんのデザインを基にどうやってつくっていくかというのを同時に考えながら実施設計を進めていったからだと思います。ところざわサクラタウンもまさにそういうところがありますね。

――設計するにあたってのコンセプトは何でしょうか?

星野:単なる建築物ではなく、「まちをつくる」ことです。そのためには、いかにまち全体を融合させるかということが重要でした。例えば、最近、複合ビルというスタイルは増えていて、オフィスビルの上にホテルが入っているビルとか結構ありますよね。でも、あれはオフィスとホテルって直接関係があるかといえばほとんどなくて、土地が狭いからとか、景色がいいからとか、そういう理由が多いんです。
 一方、この、ところざわサクラタウンというのは、工場から美術館まで、それぞれに何かしらの関連性があって、より全体として魅力あるものになるべきと思っています。ですから、合理的に考えると四角い建物を何階建てかすぽんとつくって、1階は工場です、2階はオフィスです、3階はホテルですみたいにする方がよっぽど簡単なのですが、それでは良くないなと。上に積むだけじゃなくて横に置いてみたりとか、建物全体に外デッキをつけてみたりとか、それぞれの施設が連携して、よりお客さまにとって魅力的なものになればと考えた結果、こんな複雑なものになってしまいました。

――なかでもミュージアムは、図書館、美術館、博物館という3つの異なった機能を一つの建物に融合させているそうですね。

星野:それについては、もう3年近くアドバイザリーボードメンバーの方々も含めて議論してきました。「融合とは何なのか」というのは確かにみんな手探りのところがあって、建築的な空間設計や、図書館、美術館、博物館それぞれの環境条件(明るさや温度、湿度等)をどうするのか、ソフトの面でも、ハードの面でも、お互いをゆるやかに近づけようと議論を進めてきました。角川武蔵野ミュージアムの4階と5階は、まさにギャラリーと図書館的な空間と博物館的な要素が混然一体となって存在するはずです。

角川武蔵野ミュージアム内観予定図

――では、実際に設計・施工を始めてみて、何が一番難しかったですか?

佐々木:やはり用途が全部違うということでしょうか。工場、物流倉庫、オフィスとホテル、イベントホール、店舗、さらには美術館、博物館、図書館が複合した建築は、世界でも他に例がありません。
 われわれ施工の立場から言うとですね、まず、床に段差がたくさんあるんです。通常、事務所ビルといえば床全部がほとんど同じ高さなのですが、用途が違うと微妙に床の高さが変わるんです。仕上がってみて床の高さが同じに見えても内側、つまり構造体のコンクリートの床の高さが違う。例えば、物流倉庫では重いものを乗せるからコンクリートの床が厚いとか、イベントホールは二重床にする必要があるとか。構造体の床の上にもう1枚ゴムを介して浮いた床をつくることで、音や振動を遮断できるようにしているんです。そうすると構造体の床は他の部分より、ぐーっと何十センチも下がります。外から見たら平らでも、見えないところがあっちこっちでとても複雑になっています。これが施工者泣かせ。設計の人とやりとりしながら、苦労しながらつくっていますね。

――建物をつくっていく順番も、パズルみたいで難しいという話も聞きました。

星野:敷地は十分広いんですけど、横長で、めいっぱい敷地を使った構成になっているんです。建物をつくる時は材料や機材も置かなきゃいけませんが、その置き場が十分にとれない。だから、つくりながらものや置き場を動かしていかなきゃいけないというのが、難しいところですね。スペースがないというのは施工者にはきついと思います。

佐々木:土地が広くても、建物の周囲をぐるぐるまわれないんですね。南側は狭くて、地面が傾斜しているので重機が入れません。仮に重機を入れられたとしても、低層の住宅街の目の前に、朝から晩まで巨大な重機がエンジンをうならせていたのでは近隣の住民の方にご迷惑をお掛けしてしまいます。そこで、基本的に南側(住宅側)から北側(川側)方向へ一方通行でつくっています。鉄骨を奥から組み立てながら手前へ逃がしていくので「立て逃げ方式」と言います。この方法だと、何か忘れ物をしてももう戻れないんですね。ですから、どのくらいの大きさのクレーンをどこに配置して、どうやってつくればいいかを、事前にできるだけ綿密に計画をたてて、作業しています。それから、クレーンが建物の中に入って作業するので、床は設計の段階でクレーンが乗っても大丈夫な強度を持って設計してもらいました。設計図が出来上がってから、さて、どうやって乗せましょうって言っても、もう手遅れですので。

岩を2万枚!

――ところざわサクラタウンの様々な施設のなかでも、ランドマークとなるのが角川武蔵野ミュージアムですが、上に向かって広がる逆ピラミッド型で、その周囲に50㎏~70㎏の岩を2万枚も貼り付けるという、素人目にもさぞかし難しい施工だろうと想像できるデザインです。隈さんは、デザイン段階でどのあたりまで細かい指示をされたのでしょうか?デザインは、建物として構造的に物理的に成り立つことを想定してなされているのでしょうか?

佐々木:角川武蔵野ミュージアムについては、隈事務所さんがスケッチをCADで起こして形をつくり、それを実際に模型にして、各階の平面の構成、だいたいここに階段があって、ここに床があってというところまではつくられていました。ただ、その通りに作れば出来上がるわけではなくて、そこからのやり取りが長いわけです。詳細を検討すると、「隈さん、この壁面の頂点はあと50㎝こっちに出来ませんか」とか、「ここはもうちょっと引っ込めないと柱がうまく入りません。」とか、「いや、ここが引っ込むとちょっとカッコ悪くなるから、じゃあ、こっちを変えて」等々、そういうやり取りをかなりしました。

施設模型

星野:角川武蔵野ミュージアムは、美術館や図書館が入っているわけですが、デザインを検討している時点では、まだ細かい与件がはっきりしていませんでした。通常建物というのはこういう部屋が何㎡あって、だからこれで設計してくださいみたいなところがあるのですが、このミュージアムは手がかりがないなかでデザインを提案せねばならず、建築家的にはなかなかやりにくかったと思います。
 建築家の関わり方にも色々あることを最初に申し上げましたが、この角川武蔵野ミュージアムに関しては、隈さんには最終的に内部のプランニングまで携わっていただきました。

――そういうことは、隈さんにはよくあることですか?

星野:それは、ケースバイケースだと思います。もっと上流のコンセプトデザインだけという場合もあるでしょうし、もっと細かいところまで関わることもあるでしょうし。ただ、今回はかなり細部まで関わられていると思います。隈さんもこのプロジェクトとは3年ぐらいの付き合いになると思いますので。
 四角いオフィスビルで外壁のデザインだけをするというパターンですと、中と外の関係がほとんどなくて、中は中で四角く割って、外は外でペタペタ貼っていくみたいなところがあるのですが、今回はこの形ですから、外は外、中は中というわけにはいきません。やっぱり、この形を成り立たせるには、中はこうでなければいけないというのがあるわけで。中のプランというか、各部屋の作り方も難しくて、上下階の関係を見ながらどこにどういう要素を落とし込んでいくかということにも影響してしまうので、まあ、深く関わらないとできないですよね。

――最終的にこういうデザインでいこうと決まるまでにどれぐらいの期間がかかりましたか?

佐々木星野:角川武蔵野ミュージアムのデザインを「岩のモチーフで行こう」と決まったのが2015年12月で、その後色々な検討を重ねた後、最終的にほぼ今の形になったのが2017年1月ぐらいですね。(色々な段階での岩のデザイン画を見せながら)岩も色々と変遷があるんですよね。

角川武蔵野ミュージアムデザイン画 上から順に、2015年12月、2016年4月、2016年12月製作  ©KENGO KUMA & ASSOCIATES ©KAJIMA CORPORATION

――外壁に貼り付ける岩は花崗岩だそうですね。どのように選んだのですか?

星野:何種類もの石のサンプルを準備し、隈さんにイメージに合う物を選定していただき、鹿島建設の技術研究所でその石の物性を調べて強度や耐久性等に問題がないことを確認し、最終的に今の石種に決定しました。

佐々木:既に、中国奥地の山から大きなかたまりで切りだしてきた石を、中国沿岸部(厦門)の石材工場に運んでおり、2018年12月から加工を始めます。工事現場には2019年6月頃に届く予定です。

――色々な形の岩を2万枚も貼るという作業は、1枚でも間違えば大変なことになる気がするんですが。

佐々木:大変なことになります。これも岩2万枚について、1枚1枚全て絵を描きます。半分以上は同じ形の長方形ですが、ほとんどは1枚1枚形が違うので、すべてに番号をふって、図面を描いてその番号通りに貼っていきます。

どうやってつくるか何年もかかって考えた

――岩に決まって、それを逆ピラミッド型に2万枚貼る。それをやりましょうと聞かされた時に、まず何を思われましたか?

星野:ものすごいチャレンジングな課題だと思いました。まず建物自体がゴロンとした、まっすぐな(垂直な)面のない複雑な形をしています。そして逆ピラミッド型ということは、岩が垂れ下がっている部分があるわけですね。重いものは下に落ちようとしますから、これを何としても落ちないようにしなくてはいけない。日本は有数の地震国ですから、揺すられて動いても互いがぶつからない構造にしなくてはいけません。でも、こういう建物の形だと、動いてもぶつからない設計というのがなかなかできないんです。その辺が非常に難しくて、これはもう設計だけではなく、施工も交えたトータルな課題として何年も考えました。

佐々木:最初はオーソドックスに鉄骨造で考えました。とにかく2020年までに完成させないといけないという時間的制約がありますから。建築工事の中で一番工期を短くできるのが鉄骨造なんですよ。骨組み本体は工場でつくらせて、現場ではそれを組み立てるだけなので、その分早いのです。鉄筋コンクリート造だと圧倒的に時間がかかります。現場で鉄筋を組んで木の型枠でコンクリートの形をつくって、そこにコンクリートを流し込んで、固まるまで待って、その型枠をばらしてということになりますから。
 しかし一方で、鉄骨造というのは早くて丈夫なんですけれども、柔らかいので変形量が大きくて、地震があった際には揺れるんです。また、鉄骨造の場合、外壁はカーテンウォールと呼ばれるパネル状にしたものにあらかじめ石を貼っておき、そのパネルを外壁部分に取り付けます。パネル同士の隙間を調整して、建物が揺れても大丈夫なように設計するんですが、角川武蔵野ミュージアムの場合、形が複雑過ぎてパネル同士がぶつかってしまう。ぶつからないくらいの隙間をあけると、今度は雨が漏ってしまうんです。美術館、博物館で雨漏りしてしまっては、どうしようもないですよね。
 設計の人たちと色々考える中で、外壁部分の複雑な形をそのままコンクリート構造にすれば固くなるので、地震の際の変形が小さくなる、そこに、岩を貼ればいいのではないかと検討しました。しかし、構造体っていうのはちゃんと計算をして、地震の時にも壊れませんよ、というものを設計していかなきゃいけないのですが、形が複雑過ぎて強度の計算にも、設計にも膨大な時間がかかるし、認可をとるのにも時間がかかる。そうすると着工ができなくなってしまいますので、それも厳しそうだと。
 現行の設計方法を生かしながら、構造計算上も成り立たせるにはどうしたらいいのか、かなり知恵をしぼりました。最終的には、内側のコア部分を鉄骨造、外周部分を整形した鉄骨鉄筋コンクリート造として地震時の変形を抑え、その外側に外壁用の下地鉄骨を取り付けて複雑な形を形成し、乾式(水を必要とする材料を使わずにつくる工法)で岩を貼るという、いくつかの工法を複合化することで、この問題を解決しました。
 とはいえ、われわれ施工チームは、意見は言いましたけども、設計チームが主体となってここまでの設計図を描いてくれました。そして、施工段階になると、次の課題が出てきます。こういう複雑な建物は設計図だけではつくれません。実際どうやって鉄筋を持っていくのか、上部の方が張りだしている下でどうやって下地鉄骨を組み立てるのか、どういう順番で組めばいいのかなど、そういうことを具体的に検討し、三次元のCAD(BIMといいます)を使ってミリ単位の寸法入りのモデルをつくって完成図を描いていきました。

――アート作品みたいですね!

佐々木:この鉄筋1本1本のサイズを出して、鉄骨のどこに穴をあけるかをまた描いて…。こうやってモデルをつくると、鉄骨のここに穴をあける必要があるだとか、これとこれが当たるからここに切欠きが必要だとかがわかるんです。1㎝でもずれるとはまりませんからね。

――受け取った設計図で、これだとここがうまくいきませんとか、ここはもう一回設計で直してくださいとか、やり取りは何度もするのですか?

佐々木:この1年、毎週集まってやってます。

星野:設計から施工へバトンタッチという言い方はあまり正しくなくて、一回渡すんですけど、その後、現場に入ってからもずっと打ち合わせしているんです。今日も僕は、このインタビューのためだけにここ(工事現場事務所)に来たわけではなくて、もともとそういう色々な打ち合わせをするために来る日になっていました。

30年近くやっていて、初めて。

――最終的にこういうデザインでいこうと決まったのが2017年の1月で、既に基礎工事が終わり上物の工事に入っている段階なのに、いまだに(2018年11月)毎週設計と施工の人たちが打ち合わせしているというのは驚きました。これは普通のことなのでしょうか?

星野:どのプロジェクトもそういう側面はあると思うのですが、ここまで密にはしないのではないでしょうか。普通は3Dの絵がなくても設計図があれば施工できるものなんです。

佐々木:私は30年近くやってますけど、鉄筋1本1本まで描かないと加工ができないという建物は、初めてです。
 構造体の設計図というものがあって、1本の梁の中に鉄筋は何本入れてください、という風に描かれているのですが、それを見れば普通はつくれちゃう。例えば、通常は1本の梁の中には鉄筋を10本入れてくださいと描いてあると、その通りに10本入れればいいんですけど、このミュージアムの場合、それでは鉄骨に当たったり鉄筋どうしが干渉したりしちゃうんで、6本はこっちにちょっと寄せて、4本はこっちにしましょう、でもそうすると構造的に弱くなってしまうので、こっちに1本増やしましょう、みたいな検討を、すべて形が違うので、1か所1か所全部やらなければならないんです。かなり特殊ですね。

――改めて、地震にはどのような対策を取られていますか?

星野:結局動いてしまうと、もうどうにもならないので、通常の考え方はやめて、「動かない設計」にしようとしています。「動かない設計」というのは、先ほどの話にも出てきたように、もともとは鉄骨だけでつくる設計だったのを、コンクリートを導入し、鉄とコンクリートを併用した構造体にして、壁面の鉄骨や岩がほとんど動かないようにすることで対応しました。その結果、建物はぴたっと地面に貼りついていますから、地震が起きた場合でも、地球と一緒に動くんです。
 それから、とにかく岩が落ちないように、今回使う岩の材質が大丈夫かどうかをよく検討し、それから、壁面が傾いていても絶対落ちないように、岩をうまく固定する金属を使いました。

佐々木:鉄骨とコンクリートを併用するということが決まれば、実は石の止め方自体はそんなに特殊なことはしていなくて、通常の建物の外壁を作る場合と基本的な考え方は同じです。それを少し丈夫になるように工夫したことと、万が一の場合の安全対策を施しているということです。

角川会長から「ハチャメチャにやってくれ」

――気の遠くなるような緻密な作業です。ちなみに、設計、施工それぞれ何人ぐらいのチームで仕事をしているのですか?

星野:それぞれ約50人以上ですので、全体で100人以上ですね。

佐々木:それに、現場で作業している協力会社の人を含めると、1000人近い人が出入りしているんじゃないでしょうか。
 設計図は全部で20冊ぐらいあります。建築だけでなくて、設備の設計図もあるんです。例えば、電気だと個々にどこにどういう風に配線して、どこにコンセントをつけて、どこに照明をつけるだとか、そのための電気の配電盤はこういう風につくりましょう、などというのも全部設計図に描かれています。

星野:設計図は20冊ですけど、さっき言った施工用(設備)の図面まで入れると、たぶんその50倍ぐらいになります。

――例えば飯田橋にある「サクラテラス」の場合、設計スタッフに50人も必要でしょうか?

星野:50人はいらないですね。ああいう縦長の建物だと、10階から40階までの図面はほとんど同じだったりしますので。
 しかし、こちらは各階全く様子が違います。オフィスビルだけをつくっているわけじゃないですし、しかもこれだけの用途が一つの建物に集まるのは、たぶん例がないと思うんですね。

佐々木:今後も永遠にないかもしれません。

星野:こんな無茶な構成を何とか楽しめるのは、僕たちにとっても二度とないチャンスだということ。そして、それがすごくやりがいのあることだと思うからです。

――最後に、プロジェクトへの想いを教えてください。

佐々木:われわれの使命は、お客さま(施工主)の建物をきちんと工期内につくり上げることです。今はひたすらそこに専念しています。
 建物の設計図は、プラモデルの設計図と違ってつくり方の順序は書かれていません。だから施工チームが集まり、一から考えていきます。当然、担当する人間によってつくり方は違ってきます。それがこの仕事の醍醐味。そしてこの建物を施工主さんのご所望通りにつくれることが施工者冥利です。実現できるよう日々励んでいますので応援していてください。

星野:建築デザインを提案するのが私の仕事ですが、今回、角川会長から「建築ではない。まちをつくりたいんだ」というお言葉をいただき、それまで「建物」をつくることに縛られていた私は、ハッとさせられました。さらに、会長は「ハチャメチャにやってくれ」とも言われました。私は、これはダメ出しではなく、「挑戦しなさい、弾けなさい」という意味だと受け取りました。嬉しかったですし、励みにもなりましたね。
 完成した広場の中心に立っていただくと、きっと色々な「まち」の風景がみえて来ると思います。まちには建物だけでなく、みちがあり広場があり、人が集まるもの。お客さんが集まり、賑やかになって、本物の「まち」になっていくことを夢見ています。



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