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ジェットコースターには最上級の怖さを期待する。カレーライスはうんと辛くなければカレーと呼べない。ミステリーにはあっと驚きのラストがほしい。そんな価値観を持つ人にぴったりな本書。ただビックリするだけじゃない。一度読んだらきっと読み返さずにはいられない。
不妊と夫の浮気に悩む紗英を支える奈津子。二人は互いを誰よりも必要としていた。早い段階で紗英の夫・大志が殺されたことが発覚する。いったい誰に、なぜ殺されたのか?
本書のあちこちに巧妙に仕掛けられた伏線があるが、細部にまで目を配った文体に魅せられて、ほとんど気づかなかった。
ところが、ラスト近くのたった一言で「あーあれもこれも、おかしかったのだ」とわかる。そして、ただ騙されただけじゃなく、本書のテーマを思い知る。
それはある愛の形だ。この愛を描くために、この絶妙な設定を選んで本書は著された。
小説ならではの魅力と驚きを読んで確かめてほしい。