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ゲストが求めるものを提供し、心も体も癒すオーダーメイドのレストラン。主人公で元役者のギャルソン・隆一の成長も描かれる、お仕事グルメミステリー!
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 律子と柏木の来店から五日後。
 意外なことに、柏木が遅い時間に一人でやって来た。先日は「また二人で来ます」と、律子と一緒に満足そうに帰っていったのに。
 テーブル席は予約ですぐ埋まってしまう三軒亭だが、カウンター席だけはフリー客でも対応できるようにしてある。フリー客の給仕を担当するのは主に室田だ。カウンターの右端に座った柏木は、「軽くつまめるものをお任せで」と注文し、室田のセレクトしたワインを急ピッチで飲んでいるようだった。
 その横を通りかかった隆一は、「隆一くん、あとで少し話してもいいかな?」と訊かれたので、「もちろんです」と返答。担当客を送り出し、テーブルを片付けたあと、柏木の元へ急いだ。
「お待たせしました。もう柏木さんの貸し切り状態なので、ゆっくりお相手させてもらいますね」
「おー、待ってたよ。もう、待ちくたびれちゃったよー」
 まるで駄々っ子のような言い方をする。前回、律子と一緒だったときとは感じが違う。今夜は一人だからなのか? それとも、ワインの酔いのせいなのか?
 カウンターの奥から、室田が柏木のグラスにワインを注ぎ足している。
「柏木さんって、実は酒豪だったのね。これで二本目よ」
 ガッチリとした体形の室田だが、ボトルやグラスを扱う手つきがしなやかで美しいなと、隆一はいつも思う。ちなみに、正輝と陽介は、担当していたテーブルをせっせと片付けている。
「隆一くん、ちょっと離れるからよろしくね」
 空いた皿を手に室田が厨房へ行き、隆一が代わりにカウンター内に立った途端、眉をひそめた柏木が手にしたスマホを向けてきた。
「実はさあ、こんなこと話したくて来たわけじゃなかったのに、こんな動画が届いちゃってさ。もう、どうしたらいいのか分かんなくて」
 液晶画面に、料理が載ったテーブルが映っている。
 これのどこが問題なのか、意味がさっぱり分からない。
「あ、いきなりごめん。ずっと室田さんに話してたんだけど、隆一くんにも聞いてほしいんだ。こんなこと言える相手、なかなかいなくてさ……」
 どうやら悩みを抱えているようだ。バーカウンターの止まり木は、客が溜め込んだものを吐き出せる場所であると、隆一も十分理解している。
「僕でよかったら、なんでも聞きます。なんでも話してください」
 すると柏木は、衝撃的な言葉を吐き出した。

「実はね、律子さんに騙されてるみたいなんだ。彼女には何か秘密がある」

 ──我が耳を疑った。
 騙されている? 秘密? あの上品で面倒見のよい律子さんに?
 えんじ色のメガネをかけた、律子の笑顔が浮かんできた。
 二人は仲のいい恋人同士だと思っていたのに……。
 茫然とする隆一の前で、柏木は自身の疑惑を吐露し始めた。

「律子さんと知り合ってもうすぐ二年になるんだけど、僕は彼女の部屋に招かれたことがない。実家も知らないままだし、そもそも、ちゃんと付き合っているのかどうかすら、確認したことがないんだ。
 律子さんは独身のCAさんで、都内のマンションで一人暮らしをしているらしい。両親は長野でペンションを経営しているらしい。兄弟はいないらしい。
 話だけは聞いているけど、それが本当かどうか、確かめたことはない。
 僕には結婚願望がなくて、自分の家族を作るなんて想像もしたことがなかった。友だちも独身者ばかりだから、考える機会がなかったのかもしれない。それは律子さんも同じだったようで、お互いに将来を考えずに済む相手だから、気軽に付き合っていけるんじゃないかって、初めは勝手に思ってた」
 柏木はワインをひと口飲み、フウと息を漏らした。
「だけど、いつの間にか本気で彼女を大事にしたくなってきて……。もし律子さんが望むなら、結婚も考えなきゃな、なんて思うようになってたんだ。口に出したことはなかったけど。
 でもね。最近、律子さんが変わってきたんだよ。……悪い変化だ。
 週に一度は僕のマンションに泊まりに来てたのに、その回数がめっきり減った。このあいだ三軒亭に来たのは、ひと月ぶりのデートだった。
 実は、ひと月前に車をレンタルしてドライブに行ったんだ。葉山まで行って、海沿のカフェで軽くランチをして。それは楽しかったんだけど、車の中で知っちゃったんだよ。……律子さんの苗字が変わったこと」
「えっ?」と、つい聞き直してしまった。「苗字が変わった?」
 柏木は悩ましい表情で、「そう、苗字が違っていたんだ。免許証の名前が、『長澤律子』じゃなくて『谷口たにぐち律子』だった」と、隆一に再度告げた。
「彼女がパーキングエリアでトイレに行ったとき、助手席の下に免許証が落ちてたんだ。それを何気なく見ちゃってね。初めは、偽名を名乗られていたのかと思った。でも、そうじゃなくて、律子さんの旧姓が『谷口』だったんだ。
 恥ずかしい話だけど、僕は免許証の裏面まで見てしまった。備考欄に、〝本籍変更・新氏名 長澤律子〟って印刷されていた。更新前だから、免許証の表側は旧姓のままだったんだよ。新しい氏名になったのは、三年も前。つまり彼女は、二十九歳のときに『谷口』から『長澤』に苗字が変わった。その理由はひとつしか考えられない。……結婚だ」
「結婚……」
 バカのひとつ覚えのように、聞いた言葉を繰り返してしまう。
「ショックだった。月並みな言い方だけど、頭を殴られたような衝撃を受けた。
 律子さん、もしかして結婚してるの?
 何度もそう尋ねたかったけど、結局、何も言えずにいた。何かを聞いてしまうことで、二人の関係性が変わるのが怖かったからだ」

「臆病な卑怯者だと笑ってくれていいよ」
 柏木は自虐的に言い、薄っすらと口の端を上げた。
 もちろん、笑えるわけがない。何か言葉をかけたかったけど、気の利いたことは何も浮かばなかった。
 それにしても、柏木がスマホで見せようとした料理の動画と、今の話がまったく繫がらない。さり気なく首を捻った隆一に、「それから、もっと悪いことが起きたんだ。最悪だよ」と眉をひそめてから、柏木は話を再開させた。

「五日前、三軒亭で食事をしたあと、律子さんは僕の部屋に来てくれた。僕は焼酎が飲みたくなって、つまみを用意した。
 野菜尽くしのコースは飛び切りウマかったけど、途中で食べた生ハムの味が忘れられなくてね。肉系のものが食べたくなっちゃって。丁度、冷凍のマグロがあったので、マグロとキュウリのユッケを作ったんだ。刻んだキュウリとマグロをごま油とすりおろしニンニクであえて、生卵の黄身を落としただけの簡単料理だ。
 律子さんはユッケをひと口食べて『美味しい』って言ってくれた。でも、そのあと見てしまったんだ。キッチンに行った彼女が、口の中のユッケを捨てるところを。何でも美味しく食べる健啖家なのに……。
 そのユッケは前にも出したことがある。味はそのときと変わらないし、食材は新鮮だったから、お腹が一杯なのに無理をしていたのかもしれない。
 ……いや、本当に最悪なのは、その話じゃない。そのあとに起きた出来事だ」
 三分の一ほどになっていたグラスに、隆一がワインを注ぎ足す。柏木は一気に半分ほど飲み、暗い声を出した。
「律子さんは先月、フライトで台湾に行って、オフの時間に寺巡りをしたらしくてね。その写真をスマホで見せてくれたんだ。
 彼女は中華系の寺に興味があるんだよ。二人で台湾を旅行したときは、いろんな寺に行って、日本とは違う中国式のおみくじを楽しんでいた。あっちでは竹筒に入った棒くじと、三日月型の神具を振って運勢を占うんだ。
 それで、二月に台湾に行ったときも、一人で寺を回っておみくじを引いていたらしい。『大天后宮ダイテンゴウキュウ』と、『臨水夫リンスイフ人媽廟ジンマビョウ』。どちらも台湾では有名な寺だ。
 その『大天后宮』の写真を見てたとき、とんでもないものまで目に入っちゃったんだ。律子さんの指が滑って、見てはいけない写真が出てきたんだよ。
 ──山門の前で、彼女が三歳くらいの子どもを抱いてる写真。
 しかも、同年代の男性と一緒に写ってたんだ。とても幸せそうな笑顔で」
 柏木が悲しそうに目を伏せる。
 隆一は驚きを顔に出さないように努め、沈黙を守り続けた。
「『機内でサービスしたお客さんとお子さん。偶然バッタリ会って』
 律子さんはそう言ったけど、僕は完全に疑ってしまった。
 自分は律子さんに、騙されているんじゃないだろうか? 彼女はずっと、秘密を抱えていたのかもしれない。本当は既婚者で、写真の男性は夫、抱いてたのは実の子どもなんじゃないか? ……そんな風に。
 台湾の写真を見ながら律子さんは、『次のデートは横浜中華街の〝媽祖廟マソビョウ〟に行って、中国式おみくじが引きたい』と言っていた。だけど、こんな疑惑を抱えたままで、中華街になんて行きたくないよ」

 グラスのワインを飲み干す柏木。隆一がまたお代わりを注ぐ。
 閉店時間はもう過ぎていた。正輝と陽介は、テーブル周りを静かに片付けている。室田はレジカウンターで仕事中。その隣で、いつの間にか厨房から出て来ていた伊勢が、帳簿に書き物をしている。
 柏木の話に夢中になっているうちに、全スタッフがフロアに集まっていた。もしや、みんなにも話が聞こえているのではないだろうか。
 柏木の話し声はどんどん大きくなっていく……。

「律子さんは今、仕事でオーストラリアに行ってるらしいんだ。
 今年の正月に二人で初詣に行ったとき、『三月にシドニーに行くことが決まったの。大好きな国のひとつ』ってよろこんでた。
 でも、本当に仕事でシドニーに滞在してるのか、分からないんだ。もしかしたら、写真の男と子どもと一緒にいるのかもしれない。
 疑ってしまった僕は、律子さんに何気なく言ってみた。
『シドニーで食べた料理をスマホで撮って、動画を送ってほしいな』
 彼女はよく、僕に滞在先の動画を送ってくれるので、不自然なリクエストではなかったと思う。そんな動画を送ってもらったところで、何かがはっきり分かるわけないのに、そうせざるを得ない自分が惨めだった」
 苦し気な柏木に、隆一は何を言えばいいのか分からなかった。自分が彼の立場だったら、同じように猜疑心に囚われてしまいそうだったから。
「さっき、律子さんから料理の動画が届いたんだ。昨日の夕食を送るって。そこに、とんでもないものが映ってたんだよ」
 隆一はやっと、柏木にスマホで見せられた動画の意味が分かった。
「これ。ちょっと見てほしいんだけど」と、柏木がまたスマホを見せようとする。
「ちょっと待ってください。そっちに行きます」
 カウンターの中から柏木の隣に移動し、動画を見せてもらった。

「じゃあ、これからシドニーのディナーを紹介します。今夜はホテルでルームサービスを取りました。シドニー郊外のホテルです」
 律子の声がし、テーブルを映していたカメラが動き出した。オフホワイトのクロスの上に並んでいるのは、白い皿に盛られた料理の数々。
「これは。〝ブロッコリーとマッシュルームのクリームパスタ〟。手打ちパスタの上に、ブロッコリーとコーンがタップリのってます。生のマッシュルームが散らしてあって、なんか夏っぽい感じでしょ。こっちは日本と季節が逆だからね。あと、これはホテル特製のバーニャカウダ。野菜は、キュウリとかニンジンとかセロリとか……日本とあまり変わらないわね。どのお料理も量が多いのよ。食べ切れないかもしれない。あと、葡萄ジュース。これがすごく美味しくて……」
 料理の説明をする律子。紫の液体が入ったワイングラスがアップになる。
 横には、重ねられた数枚の取り皿と、カトラリーの入った籠がある。そのわきに、薄茶の鶏の卵のようなものと、律子のものらしき赤い布製の小物入れが置いてあるのが、一瞬だけ映り込んだ。
 卵……ゆで卵だろうか?
 動画に律子の腕が入った。ブラウスの袖から腕時計が覗く。時刻は夜十時過ぎ。
「そうそう、今夜は星がすっごくキレイなの。夜景モードで撮っておくわね」
 スマホを持ったまま、律子が部屋の中を移動した。映り込んでいるのは、確かにホテルの内装だ。中流クラスのリゾートホテル、といった雰囲気である。
 バルコニーのガラス扉を開けて、外に出ていく。そこは中層ホテルのようで、遠くにビル群の夜景がちらりと映り、画面は夜空になった。澄んだ空で星々が光っている。星座に詳しい人がよろこびそうだ。まったく詳しくない隆一には、ポピュラーなオリオン座くらいしか分からなかったが。
「こんなキレイな星空、東京ではなかなか見られないでしょ。シドニーは本当にいいところよ。海も山も都会もあって。……あ、電源が切れそう。またね」
 動画が終わる瞬間、バルコニーに置いてある屋外用のテーブルと椅子が映った。
 テーブルの上にグラスがひとつ。紫色の液体が少しだけ入っていた。

「いま、見たでしょ?」
 スマホを手にしたまま、柏木が隆一を見つめる。
「見ました」
「おかしいと思わなかった?」
「えーっと、僕、シドニーって行ったことがなくて……」
「行ったことがなくたって、おかしいと思うはずなんだけど」
 不満そうに柏木が言い、隆一のリアクションを待っている。
 もしや、クイズでも出したつもりなのだろうか?
 だが、動画を脳内で再生してみても、おかしなところが分からない……。
 困った隆一は、柏木に提案をしてみることにした。
「あの、うちのスタッフに、僕なんかとは比べ物にならないくらい洞察力があって、推理力もある人がいるんです。名探偵ポアロが大好きで。今の動画をお見せしてもいいですか?」
 もちろん、シェフの伊勢のことだ。柏木にはすでに紹介してある。
「それは頼もしいかもしれない」
 と柏木がつぶやいたので、即座に伊勢を呼びに行く。ほかのスタッフも遠巻きにこちらを見ている。
「伊勢さんに見てほしい動画があるんです」
 伊勢にそう言うや否や、柏木が「よろしければ、皆さんも見てください」と他のスタッフに声をかけた。全員に打ち明けることで、重い心を軽くしたいのかもしれない。
「では、失礼して」と正輝が姿勢よく歩み寄る。メタルフレームのメガネがキラリと光った。いたずらっ子のような笑顔が特徴の陽介は、「ナニナニ、なんですか?」と、好奇心丸出しで近寄ってきた。
 室田は少し離れた場所に立ち、穏やかにほほ笑んでいる。おそらく、すでに柏木から話を聞き、動画を見たのだろう。
 黒いコックコート姿の伊勢は、「私でお役に立つのなら」と切れ長の瞳を瞬かせ、長めの黒髪を後ろで縛り直した。
「お恥ずかしい話なんですけどね……」と、柏木が再び事情を語り、先ほど隆一に見せた動画を再生した。

「ね、おかしいと思いませんか? グラスが二つあったんですよ。部屋の中とバルコニーに」
 動画の再生が終わった直後、柏木が自ら正解を述べた。
「ホテルのルームサービスだって言ってましたよね。それなのに、グラスが二つ。料理も量が多くて取り皿が何枚かあったし、フォークなんかもたくさんあったようでした。誰かと二人で食事をしていたんですよ。ホテルの一室で。もしかしたら、台湾で一緒に写ってた男かもしれない……」
 興奮気味でしゃべったあと、しょんぼりと肩を落とす。
「……なんて考えてしまう自分が、たまらなく嫌なんです。だから、皆さんに情けない話を聞いてもらって。……本当に申し訳ないです。でもね、律子さんには秘密があるような気がしてならないんですよ。どうしても」
 気持ちは理解できる。柏木にとって、律子はそれほど大事な女性なのだろう。
 そういえば……、と隆一は思い返していた。
 柏木と同じように、恋人の実家を知らずに付き合っていた結果、連絡が取れなくなってしまった男性がいる。
 目の前で静止したスマホ動画を眺めている伊勢だ。

 伊勢がまだシェフの修業をしていた頃、同棲をしていた恋人・マドカ。
 イラストレーターの卵だった彼女と伊勢には、ある夢があった。
 いつかの未来に伊勢が自分の店をオープンさせ、その店内にマドカが描いた作品を飾る、という夢。
 しかし、叶わないまま二人は別れてしまった。
 実は、マドカは重い心臓病を患っていたのだ。
 彼女は病気を隠したまま、心が離れた振りをして伊勢に別れを切り出し、二人で育てていたパグのエルを連れて家を出た。夢に向かって邁進する伊勢の、足を引っ張ってしまうと思ったから。
 それに気づいた伊勢は、マドカの行方を捜した。
 共通の友人に訊いてみたが、彼女の居場所を知る者はいなかった。実家にも連絡をしたかったのだが、マドカは「家族と仲が良くない」という理由で、実家の住所も電話番号も伊勢に伝えていなかったらしい。
 別れ話を切り出す少し前から、伊勢が作った料理を食べなくなっていたというマドカ。彼女が一番好きだったという、伊勢の特製キッシュまで。
 本当は、食べたくなかったのではなく、食べられなくなっていたのだ。
 なぜ、気づいてやれなかったのか。なぜ、実家のことを聞いておかなかったのか。
 後悔し続けた伊勢。
 やがて彼は、修業していたフレンチ店の支配人で、ソムリエでもあった叔父の室田と共に、ビストロ三軒亭を立ち上げた。
 自分の作りたいものではなく、相手が求めるものを提供するオーダーメイドのレストラン。三軒亭という店名は、マドカが「どうせなら三軒くらいレストランを出したい」との理由で考えたものらしい。
「そんな店で楽しい時間を提供し続けていれば、いつかマドカが来てくれるかもしれない。そのときは、彼女の好きだったキッシュを作ろう」
 遠い目をしながら、隆一や先輩ギャルソンに打ち明けてくれた伊勢。彼は、マドカが来店する日まで、誰かからキッシュをリクエストされても、絶対に作らないと決めていた……。

「……妙だな」
 怪訝そうな伊勢の声で、隆一は夢想から覚めた。
「伊勢さん、彼女の動画で何か気づきましたか? 男性の痕跡?」
「いえ、そうではなくて……」
「気づいたことは言ってください。なんでも」
 柏木が伊勢を凝視している。その強さに根負けしたかのように、伊勢が「大変申し上げにくいのですが……」と口を開いた。
「今の動画には、明らかにおかしな点があった気がするんです」
「おかしな点?」
 怯えたように瞬きをしながら、柏木は「お願いします。はっきり言ってもらわないと、余計不安になりますから」と懇願した。
 さすが、ポアロ好きな伊勢さん。目の付け所が自分とは違うんだろうな。
 改めて畏敬の念を抱きながら、隆一は伊勢の発言に集中する。
 彼は極めて真摯な態度でこう言った。

「律子さんには、確かに秘密があるようですね。あなたに噓をついている」

(このつづきは本編でお楽しみください)
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書籍

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定価 691円(本体640円+税)

発売日:2019年03月23日

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    定価 691円(本体640円+税)

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