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連載

河﨑秋子の羊飼い日記 vol.12

【連載第12回】河﨑秋子の羊飼い日記「今こそ楽しんだらいいっしょや北海道!」

河﨑秋子の羊飼い日記

北海道の東、海辺の町で羊を飼いながら小説を書く河﨑秋子さん。そのワイルドでラブリーな日々をご自身で撮られた写真と共にお届けします!
>>【連載第11回】河﨑秋子の羊飼い日記「警察から振り込め詐欺みたいな電話がきた話」

 9月6日、私は東京で胆振東部地震の発生を知った。実家は震源地から東京~名古屋間ぐらい離れているのでほとんど揺れなかったが、停電で牛の搾乳ができないことが一番の問題だった。パンパンに張った乳を搾ってもらえずモーモーと鳴く牛たち。牛飼いとして非常に居たたまれない事態だ。ちなみに羊たちはいつも通り放牧地でメーメーと草を食い放題していたようだ。きっと地震が起きたことすら気づいていないに違いない。なんか若干イラッときた。(羊は悪くないが)
 地震後42時間で電気は復旧し、いっとき落ち込んだ牛乳の質と牛の体力も戻ってきた。道内全体も、今も時折余震が起きるなか、少しずつ落ち着きを取り戻しつつある。しかし現在、各地域は地震の爪痕とともに大きな問題を抱えている。観光客の足が遠のいていることだ。予約のキャンセルに加えて、再度の地震を心配してか新規予約も少なくなっているそうだ。このままでは地震被害以上に長期的な影響が残ってしまう。

 そんなわけで、本欄をご覧になっている皆様にダイレクトマーケティングのお時間です。ズバリ。北海道に遊びに来てください。

 季節は秋。脂がのった旬のあきあじ(鮭)、イクラのしょうゆ漬け、刺身にできるほど新鮮なサンマ、ほっくほくのじゃがいもとかぼちゃ、蔵出しワイン等々で盛りだくさん。各自治体の週末情報を調べれば、かならずどこかで『〇〇(食材名)祭り』というイベントが開かれている。札幌大通公園では、オータムフェストという全道じゅうからうまいものが集結する祭りが開催されていたし、祭りでなくとも、9月標津町ハーフマラソン、10月別海町パイロットマラソン(フルの部)などは、完走すると各漁協自慢の塩鮭が一本まるまる貰えるという太っ腹ぶりだった。完走してヘロヘロのランナーが塩鮭をドーンと渡されてふらつくのが恒例となっております(残念ながら今年は終了しているので、来年以降ぜひ狙って頂きたい。タイムの出やすいコースなのでランナーさんには本当にオススメ)。
 あと忘れちゃいけない、秋は春生まれの子羊たちがラム肉としてぷりっぷりのお肉とジューシーな脂を蓄える素晴らしいシーズン。うちの子羊も札幌のお店を中心に出荷しておいしく料理して頂いているので、出会えたならばぜひチャレンジを。
 北海道は正直、この時期どこへ行ってもうまいものしかない。ぜひ旺盛に食って飲んで、その元気を周りの方にも分けてください。お仕事や日々の生活などで足をお運び頂くのが難しい場合も無問題。スーパーなどで“北海道産”の農作物などをお手に取って北の味をご堪能頂ければ、いつか必ずその恩恵がこちらへも伝わります。
 各地域おもてなしさせて頂く気まんまんなので! こんな時だからこそ、ぜひとも! 北海道をお楽しみください!

(注:なお、被災の爪痕が深い地域については、どうぞゆっくりと復興を見守って頂きたく思います)

河﨑秋子(かわさき・あきこ)
羊飼い。1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。大学卒業後、ニュージーランドにて緬羊飼育技術を1年間学んだ後、自宅で酪農従業員をしつつ緬羊(めんよう)を飼育・出荷。
2012年『北夷風人』北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。『颶風(ぐふう)の王』では三浦綾子文学賞、2015年度JRA賞馬事文化賞を受賞。


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