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角川文庫キャラ文通信

【キャラホラ通信1月号】『君にささやかな奇蹟を』刊行記念 宇山佳佑インタビュー

角川文庫キャラ文通信

『桜のような僕の恋人』がスマッシュヒット中の宇山佳佑さんが、角川文庫初登場です。ずっと温めていたサンタクロースという題材がラブストーリーになるまでの軌跡を、特別メールインタビューで語っていただきました。
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── : ドラマ・映画の脚本家として活躍されていますが、小説を書かれるきっかけは?

宇山:学生時代は小説を読むのが好きで色々と読み漁っていましたが、僕には小説を書く能力はないと思っていました。でも、脚本家としてのデビュー作『スイッチガール!!』を書いた後、出版社から「映画の企画を一緒に練りませんか?」とお話を頂いたんです。後にその企画が通って「原作小説を書きませんか?」と言ってもらったのがきっかけでした。

── : 本作が生まれたきっかけを教えてください。

宇山:プロの作家になる以前から、「いつかはサンタクロースものを書きたい」と思っていました。海外では『三十四丁目の奇蹟』など、サンタクロースを題材とした映画作品が数多く存在していますが、日本ではあまり聞いたことがなかったので、昔から「どうしてみんな日本のサンタクロースものを作らないんだろう?」と疑問に思っていたんです。『サンタクロース』『クリスマス』というワードだけでワクワクするし、子供に夢を与えるサンタはもうそれだけでヒーローだし、ハートウォーミングで素敵なお話になるのになぁと考えていました。

── : その当時はどのようなサンタクロースをイメージしていましたか?

宇山:ただ当時は、今のようなラブストーリーではなく、仕事としてプレゼントを配っているサラリーマンサンタが子供たちのために奮闘するような物語がいいかもなぁ、と漠然と思っていました。とはいえ、当時はまだ作家ではなかったし、作品を発表する場もなかったので、アイディアは抽斗の中にしまったままにしていました。それから十年近くが経って、この度、KADOKAWAさんよりお声がけを頂いたことで改めて埃を被ったそのアイディアを引っ張り出すことにしたんです。

── : 物語のコンセプトやサンタクロース像はどのように作ったのですか?

宇山:「サンタクロースとはなにか?」と考えたのが出発です。サンタと聞けば誰もが「髭のおじいさん」、「良い人」、「聖人」と思うはず。だからこそ、その真逆のキャラクターにしたい。おじいさんではなく若者で、空を飛ばずに家に引きこもっていて、子供たちにプレゼントを渡さないで人のお金で悠々自適に暮らしている。最低なサンタにしたかったんですよ(笑)。そんな彼が奮闘する姿を通じて僕自身「サンタクロースとはなにか?」という問いの答えを見つけようと思いました。

── : お気に入りのキャラクターは誰ですか。理由も教えてください。

宇山:みんな気に入ってますが、やっぱり主人公の聖也君ですかね。彼はダメな奴でサンタのくせに引きこもりの内弁慶で、威勢は良いけど臆病者で、空気は読めなくて、思ったことはなんでも言っちゃうちょっとヤバい奴なんです。僕自身も基本的にダメ人間なので、ダメな奴を書いているのは楽しいんです。親近感が湧くといいますか……。そんなダメな奴が一生懸命になる姿にグッとくるんですよね。取り柄のない犬が餌だけは必死に食べる。そんな姿に可愛さを感じる――みたいな感じですかね。

── : ドラマの脚本を手がけられているからでしょうか。コミカルな描写がお上手で、いいアクセントになっていました。

宇山:聖也と執事たちとのやりとりは書いていてとても楽しかったです。物語上、無くても成立するやりとりだけど楽しいからという理由で長々と書いてしまって、最終的にかなりの部分をカットしました(笑)。

── : ヒロインについてはどのようなイメージを抱いて、書かれたのですか?

宇山:ヒロインの伊吹は、どこにでもいる女の子にしたかったんです。彼女には過去のトラウマや後悔、夢に挫折したという苦い経験があるのですが、そういったことは誰しも多かれ少なかれあると思うんです。だから読者が彼女に対して親近感を抱いてくれれば嬉しいなと。人から見たらほんの些細なことだとしても、本人にとっては乗り越えられないことってたくさんあるはず。それに立ち向かうことで幸せを見つけてゆく……そんなヒロインにしたくて。

── : 今後書いていきたいものは?

宇山:今はラブストーリーを多く書かせていただいているので、今後もラブストーリーは継続的に書いていきたいと思っています。あと、親子ものも書きたいですね。それから刑事ものも。書きたいものはたくさんあります。常に頭の中で五~六個くらいの物語がフワフワしているので、それをひとつひとつ形にできればと。

── : 最後に、読者に一言メッセージをお願いします。

宇山:いつも応援してくださり本当にありがとうございます。みなさんが本をお手に取ってくれること、応援のメッセージをくれることが僕の大きな励みになっています。
 今回書きました『君にささやかな奇蹟を』は、誰もが知っているサンタクロースが主人公の恋物語です。そして恋する二人が自分自身の弱さや、過去を乗り越えてゆく成長の物語でもあります。クリスマスはもう過ぎてしまいましたが、一人でも多くの方のお手に、そして心に、この物語が届くという、ささやかな奇蹟が起こることを心から願っています。


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