2010年に刊行された池井戸潤の傑作小説『民王』(角川文庫)が、ついにミュージカルとして幕を開ける。政治風刺とユーモアを巧みに織り交ぜた人気作が、個性豊かなキャラクターや痛快な物語はそのままに、舞台ならではの表現で新たな世界を広げていく。
写真/小林加菜 文/宇佐美裕世
日頃の鬱憤をすべて吹き飛ばせ! 池井戸潤×有澤樟太郎が仕掛ける2026年最大の爆笑ミュージカル
社会風刺を歌で届ける、痛快ミュージカルが始動
池井戸潤が手掛ける『民王』(文春文庫/角川文庫)は、内閣総理大臣・武藤泰山(別所)と、政治とは無縁に生きる大学生の息子・翔(有澤)の人格が突然入れ替わることから動き出す。父と息子が互いの立場で奮闘する姿を、政治や社会への風刺とユーモアを交えて描く、痛快なエンターテインメント作品だ。それがこのたび、まさかのミュージカル化を果たした。その製作発表会見が7月27日に行われ、主演の有澤樟太郎、別所哲也をはじめとする豪華キャストと、演出の永井誠が登壇した。
まずは、劇中曲「民衆の愚痴」「誠意を見せてみろよ」「今は何者でもないけれど」「民王のテーマ」のメドレー披露からスタートした。キャスト陣は、自信に満ちた溌剌とした表情で力強く歌い上げ、作品の持つ勢いや高揚感を表現した。解禁されたポスタービジュアルも、まるで選挙ポスターを思わせるインパクトのある仕上がりに。政治をテーマにしながらも、思わず笑ってしまうようなユニークな設定と、登場人物たちの個性が魅力のエネルギッシュな世界観が感じられるステージだった。
翔を演じる有澤は、「政治痛快コメディということで、ミュージカル界に新しい風を吹かせたい!」と意気込みを語り、「すでに稽古は始まっていますが、これでおもしろくなかったら相当ヤバい(笑)。それくらい自信があります」と笑顔を見せる。
一方、総理大臣・泰山を演じる別所は、「息子はキラキラ系、私はギラギラ系」と笑いを誘いながら、「笑いの絶えない現場で、楽しく作品作りができています」と充実した稽古場の様子を明かす。互いのコメントにも自然と笑顔がこぼれ、すでに親子としての信頼関係が築かれていることが伝わる場面もあった。入れ替わりという難しい設定だからこそ、稽古で細かな仕草や空気感まで共有している様子が窺えた。
軽快な掛け合いで会場も笑顔に。息ぴったりのキャスト陣
有澤と別所は2度目の親子役。そこで、稽古場での互いの印象が話題に上がった。泰山(中身は翔)が妻を「ママ」と呼ぶシーンについて、有澤が「稽古の一発目から“こんなにしっくりくるんだ”と思いました(笑)」と別所の芝居を振り返る。そして続けて「別所さんは無邪気で少年のような自由さと好奇心がある方」と印象を語った。別所も、「じっくり観察していますが、よく食べます(笑)」と有澤を紹介し、「真っ直ぐで熱いところが翔とも重なって見える」と信頼を寄せた。
翔の母・綾役の一路は、白いスーツ姿で登場すると「東京都知事でございます!」とユーモアたっぷりに挨拶した。「別所さんから『ママ〜』と呼ばれる瞬間が本当におもしろくて。立場的には怒らなければいけない場面なのに、笑いをこらえるのが大変です」と稽古中のエピソードを披露した。
女子大生の南真衣役を務める林は、「別所さんはどっしり構えてくださっているので、本当に総理みたい(笑)」とコメントし、さらに「昨年度まで大学に通っていたので、その頃の気持ちを思い出しながら演じています」と、役柄との共通点も明かした。
初挑戦が集結! 新たな『民王』への期待
大物議員・城山和彦を演じる竹中は、「池井戸さんから『竹中さん、歌ってもらいますからね』とプレッシャーをかけられて。楽しみにしていたら、すっげえ難しいんですよ(笑)。音階もとりづらいし、不協和音が続いているような、とんでもない歌なんです」と苦笑い。「どうやって僕はこの舞台を演じるのか……本当に命がけで歌いますので、池井戸先生、ぜひ見届けてください」と竹中らしいユーモアで笑いを誘った。
有澤は稽古場で印象に残っていることとして、福田転球の動きのおもしろさにも触れ、「ずっと見てしまう」と笑顔で語る場面もあった。キャスト同士が自然に笑い合う様子からも、和やかなカンパニーの雰囲気と、作品への期待感が伝わってきた。
本作は、演出、音楽、そして原作者にとってもミュージカル初挑戦となる作品。池井戸は「私にとって初の舞台、そして初のミュージカルとなりました『民王』。角野隼斗さんら音楽界の俊英によって紡ぎ出された華やかな楽曲に彩られ、素晴らしい舞台になる予感しかありません。千穐楽までの長い日々、一つひとつの舞台がまぶしく輝きますよう、脚本のツバキミチオともども、祈念してやみません」とコメントを寄せ、この日は有澤が代読した。
原作への敬意を持ちながらも、ストーリーにひと味加えたというミュージカル版「民王」だ。歌やダンスだからこそ描ける登場人物の感情表現や、政治風刺とユーモアが融合した「民王」ならではの世界観も見どころの一つだ。原作ファンにとっては新たな発見があり、初めて作品に触れる人もその世界観に引き込まれることだろう。舞台ならではの『民王』を味わった後は、物語の原点である池井戸潤の原作小説にも自然と手を伸ばしたくなるはずだ。
書籍情報
書名:民王
著者:池井戸潤
発売日:2019年10月24日
総理を狙った“笑撃”テロ!
混迷する政局の中、熾烈な総裁選を勝ち抜いて内閣総理大臣に就任した与党民政党の政治家・武藤泰山。低迷にあえぐ支持率を上げようと意気込んだのも束の間、まさかの“事件”に巻き込まれ、国民に醜態をさらすことになる。その頃、泰山のバカ息子・翔にも異変が。夢か現か、新手のテロか。直面する国家の危機に、総理とバカ息子が挑む”笑撃”のサスペンス。彼らは果たして、日本の未来を救えるのか――。
解説・高橋一生(ドラマ「民王」貝原茂平役)
※画像は表紙及び帯等、実際とは異なる場合があります。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/321904000320/
作品情報
シアタークリエ ミュージカル「民王」
原作:池井戸潤「民王」(文春文庫/角川文庫)
脚本:ツバキミチオ
音楽:角野隼斗
演出:永井誠
主催:東宝/テレビ朝日
製作:東宝
出演:有澤樟太郎 別所哲也
2026年9月6日(日)~10月6日(火) 東京・シアタークリエ
2026年10月11日(日)~13日(火) 大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
2026年10月17日(土)~19日(月) 福岡・博多座
http://tohostage.com/tamiou/
STORY
就任したばかりの現職総理大臣の武藤泰山(別所)と、武藤のドラ息子で大学生の翔(有澤)の心と身体が、ある日突然入れ替わってしまう…!? 原因は不明。やむなく泰山の変わり身となって国会に出ることになった翔だが、国会討論や質疑応答が理解できず、文書に書かれた漢字を何度も誤読し、世間に衝撃を与える。一方、翔の変わり身となった泰山は、翔の代わりに受けた就職面接で政治家仕込みの横柄な態度で好き放題言ってしまい……。泰山と翔は混乱をどう切り抜けるのか。





